富士山噴火 被害予測を改定 溶岩は数十キロ以上離れた地域にも

静岡県と山梨県にまたがり、毎年、多くの登山客などが訪れる富士山の噴火を想定したハザードマップが17年ぶりに改定されました。
大規模な噴火で流れ出る溶岩の量はこれまでのおよそ2倍となり、相模原市や山梨県上野原市など、数十キロ以上離れた地域まで及ぶおそれがあると想定されました。
協議会はマップをもとに広域の避難計画を改定することになります。

静岡・山梨・神奈川の3県と国などでつくる「富士山火山防災対策協議会」は最新の調査結果や地形データに基づいて検討した結果をもとに新たなハザードマップを作成し、26日の会合で報告しました。

それによりますと、想定される火口の範囲が南西方向などに広がり、大規模な噴火が起きた場合に流れ出す溶岩の量は、これまでのおよそ2倍の13億立方メートルに達すると想定しています。

この結果、溶岩が流れ下る範囲は過去の想定より広がり、山梨県富士吉田市や静岡県御殿場市など山頂周辺の自治体だけでなく、北東に40キロ以上離れた相模原市や山梨県上野原市のほか、南東側の神奈川県小田原市、南側の静岡市清水区など、3つの県の7市5町にも到達するとしています。

また、想定ではJR中央本線や中央自動車道にまで溶岩が到達するケースも検討されました。

移動や物流にも大きな影響が及ぶ可能性

人の移動や物流にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

さらに、ふもとの一部の地域では、溶岩流が市街地に到達するまでの時間が短くなると想定しています。

このほか、火砕流の噴出量は最大でこれまでの4倍余りの1000万立方メートルと推計され、北東側と南西側では到達距離がこれまでの想定よりおよそ2キロから4キロ長くなるとしています。

今回の報告では、降り積もった火山灰などが噴火で雪がとけ、泥流となって流れ下る「融雪型火山泥流」や大きな噴石の到達範囲などについての検討結果も示されました。

富士山の噴火想定については、去年、国の検討会が火山灰が首都圏に集中して降った場合のシミュレーションを公表していますが、溶岩流や火砕流などのハザードマップの改定は17年ぶりです。

報告では「過去の噴火の96%が中小規模の噴火だが、次の噴火が頻度の低い大規模な噴火になる可能性もある」と指摘しています。

協議会は、公表されたマップをもとに広域の避難計画を改定するほか、各自治体も防災計画などを見直すことになっています。

静岡県 川勝知事「正しい知識に基づいた避難計画つくる」

協議会の会長を務める静岡県の川勝知事は、溶岩流がより遠くまで広がったり市街地までより短い時間で到達したりする想定が追加されたことについて「過去5600年間で大規模な噴火は4%のみだ。そうした数字も含めて正しく恐れる、正しい知識に基づいた避難計画をつくることにしていきたい。一方で、これは想定なので、臨機応変に対応するための準備もしていきたい」などと述べました。

また、引き続き、首都圏の広い範囲に灰が降り積もる想定になっていることについては「たとえば九州では桜島の噴火活動で降灰の経験があるが、関東では経験が少ない。降灰の被害は甚大と予想されるので、鹿児島などの事例を静岡、山梨、神奈川などと共有して備えることが重要だ」などと述べました。

神奈川県 初めて溶岩流の到達が想定

今回、神奈川県では、初めて富士山の噴火による溶岩流の到達が想定されました。

7つの市と町は、今後、新たに火山災害警戒地域に指定される見通しで、神奈川県は、市や町と連携して防災計画の見直しなどを進めることにしています。

県防災部の竹村洋治郎部長は「影響があるとされた地域は不安もあると思うので、まずは市町村と連携しながら説明会を開くなどして、被害の想定について正確な情報を提供していきたい」と話しています。

「到達のおそれ」山梨 上野原市は

新たに溶岩流が到達するおそれがあるとされた山梨県上野原市では、今回の改定の結果に戸惑いの声が上がっています。

上野原市は山梨県のもっとも東側に位置し、これまでは富士山が噴火しても溶岩流は到達しないとされていました。

しかし、噴火の規模によっては、川沿いに流れてきた溶岩流が市内に到達し、JR中央本線や中央自動車道にも到達する可能性が出てきました。

上野原市には土砂災害に備えたハザードマップはありますが、富士山の噴火に備えたものは用意されていません。

また、上野原市は、富士山が噴火した際、山梨県忍野村の住民の避難先の1つになっていました。

ところが、今度は自分たちの避難先も考える必要が出てきたのです。

市は今後、噴火に備えた備蓄品なども用意していきたいとしています。

上野原市危機管理室の渡邊恭一郎副主幹は「本当にここまで来るのかと率直に驚いた。これまでは、噴火の際に人を受け入れる側だったが、今度は逆に避難しなければいけない側になるかもしれず、さまざまな見直しが必要になると思う。住民の生命や財産を守ることがいちばんの使命で、住民への周知を含めて今後、どういった形で対応していくのか、これまでも火山を警戒してきた自治体の計画や意見も伺いながら、しっかりした対策を練っていければと思う」と話していました。

新たに「溶岩流」到達が予測された自治体

▽神奈川県
 相模原市 小田原市 南足柄市 大井町 松田町 山北町 開成町
▽山梨県
 大月市 上野原市
▽静岡県
 静岡市清水区 沼津市 清水町