「歌会始」皇居で行われる 新型コロナの影響で1月から延期

新型コロナウイルスの影響で延期されていた新春恒例の「歌会始」が26日、皇居で行われました。

ことしのお題は「実」で、全国と海外から合わせて1万3000首余りの短歌が寄せられました。

「歌会始」は、毎年1月に皇居・宮殿で開かれていますが、ことしは感染拡大の影響で延期され、26日は陪聴する人の数を大幅に減らしたり、歌を詠み上げる人にフェイスシールドをつけてもらったりするなど、感染防止対策を徹底して行われました。

はじめに入選した10人の歌が天皇皇后両陛下や皇族方の前で古式にのっとって披露されました。

このうち、広島県三次市の会社員、山本美和さん(53)は、感染防止対策が取られる中、窓口で接客業務にあたる日常を「シールドの向かうの客に釣り渡す架空のやうな現実にゐる」と詠みました。

福井県小浜市の観光ボランティアガイド、杉崎康代さん(77)は、初めてオンラインを活用して参加しました。

夫の実家をお見合いで訪ねた日のことを、夫の母への感謝の気持ちを込めて「見合ひ終へあなたの母から門前でゆすらの紅実(あかみ)てのひらにうく」と詠みました。
続いて皇族方の歌が披露され、秋篠宮妃の紀子さまは、お住まいのある赤坂御用地でとれた花梨の実の香りに安らぎや自然の恵みのありがたさを感じ「竹籠に熟るる黄色の花梨(くわりん)の実あまき香りは身に沁みとほる」と詠まれました。
秋篠宮さまは、夏の暑い日に控えめに咲く稲の花を見つけ、秋には黄金色の稲穂が豊かに実ってほしいと願った時の気持ちを「夏の日に咲き広ごれる稲の花実りの秋へと明るみてくる」と詠まれました。
皇后さまは、感染の拡大で人々の日常が変わる中、お住まいのそばの梅の木に青々とした実が育っていることに変わらぬ自然の営みの力を感じ「感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし」と詠まれました。
最後に天皇陛下の「人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る」という歌が詠み上げられました。
この歌は、感染拡大により多くの人たちが困難に直面する中、人々の願いと、試練を乗り越えようとする努力が実を結び、感染が収束していくことを願う気持ちを詠まれたものです。

来年の歌会始のお題は「窓」で、「窓」の文字が詠み込まれていればよく、「窓辺」や「車窓」のような熟語にしてもかまいません。

作品は、26日から9月30日まで受け付けられます。

入選した人たちの声

新潟市の高校生、藤井大豊さん(17)は、歌会始のあとの記者会見で「いつになるのかなと待ち望んでいた中で、きょうこうやって皇居で歌を詠まれたのは本当にうれしいです。来年も頑張って作りたいなと思いました。また、ことしのお題の『実』ではないですけど、進路の実現に向けて頑張っていきたい」と話していました。

東京 練馬区の大学生、吉田直子さん(24)は「緊急事態宣言が解除されたあと、歌会始が行われることを待ち望んでいました。伝統ある儀式が時代に合わせて続いているんだと身をもって実感しました。本当に一生にあるかないかというぐらいの光栄な体験をさせていただけました。伝統的な詠み上げ方を実際に自分の耳で聞くことができて、感謝でいっぱいです」と話していました。

横浜市神奈川区の主婦、松山紀子さん(58)は「テレビで見ているのと違い、自分がその場にいるのは大変緊張しました。皇后さまが正面に見える席で、一人一人の歌をうなずいて聞かれていて感動しました。皇后さまから歌を何年しているのかと、ことばをかけてもらい、うれしかったです。歌会始が延期となり、これまで絶対にコロナにかかってはいけないと思うプレッシャーがきつかったので、終わってほっとしています」と話していました。

広島県三次市の会社員、山本美和さん(53)は「歌会始が本当にあるのかなとドキドキしました。マスクをしての開催が今までで初めてなので、どんなふうになるか心配でしたけれど、無事に終わってよかったなと思います。自分がつくった歌を詠んでいただけて、すごく感動しました」と話していました。

三重県伊勢市の加藤京子さん(71)は「歴史のある歌会始で、自分の歌が詠まれ、本当に光栄で、一生の宝です。天皇陛下から『ウォーキングはお好きですか』と聞かれ、皇后さまからは『ブナの木はとても太くて、このくらいの木ですね』ととてもフレンドリーなことばをかけていただきました。リモートでもしかたがないと思っていましたが、思い切って出てきてよかったと思っています」と話していました。

長野県飯田市の会社員、木下玲奈さん(24)は「地元の歌会の方から『どんな歌なの?楽しみ』と言っていただいて、早く発表したいなと思いつつ、この日を楽しみにしていました。コロナ禍で発表も延びていたので、ずっと自分の心の中に秘めていた歌がやっと発表できるなといううれしさもあり、感慨深かったです。マスクをしながらでも開催できたことに喜びを感じています」と話していました。

埼玉県鴻巣市の渡邉照夫さん(68)は「歌会始で歌が詠まれるというのは、本当に自分の歌ではない気がするくらいうれしいことでした。天皇陛下からは、歌に関連して『梨をお作りですか』ということばをかけていただきました。新型コロナウイルスの感染状況などから開催は難しいかなと思った時期もありましたが、開催されるということでぜひ来たいと思っていました」と話していました。

秋田市の柴田勇さん(80)は「非常に厳かな雰囲気の中、私の歌が詠まれ、歌が数段よくなった気がしました。夢のような心地でいました。歌は学生時代の実験実習に携わったときの状況を詠んだもので、天皇陛下からは『いいお歌ですね』と褒めていただきました。皇后さまからは『2、3年前に秋田へ行ったことがあって、楽しかった』という感想をいただきました」と話していました。