“宣言”解除後 人出増加で第3波超えも 都モニタリング会議

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、新規陽性者数の増加が続いているほか、緊急事態宣言の解除後に人の流れが増えていると分析しました。花見や歓送迎会などで人出が例年どおりの場合は「第3波を超える急激な拡大が危惧される」として、感染の再拡大の危険性が高いと指摘しました。

25日の会議で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち、最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者数の7日間平均は、今月17日時点のおよそ293人から、24日時点はおよそ300人となり、前の週からの増加比は102%で高い値のまま継続して、100%を超えて推移していると報告しました。

そのうえで「緊急事態宣言が解除され、主要な駅や繁華街での人の流れがさらに増えている」と指摘し、今後、変異ウイルスなどによって急激な感染拡大が起こる可能性があると警戒を呼びかけました。

そして、第3波ではクリスマスや忘年会などの行事から感染が拡大する例が見られたとして「花見や歓送迎会、卒業旅行などの行事により、例年どおりに人の流れが増加すれば、第3波を超える急激な拡大が危惧される」として、感染の再拡大の危険性が高いと指摘しました。

一方、医療提供体制は入院患者が24日時点で1371人となり、先週の1270人から増加傾向だと分析したうえで「通常医療への影響が長期間続いている。いま一度、実効性のある感染防止対策を徹底し、重症化リスクの高い高齢者の新規陽性者を減らすことが重要だ」と強調しました。

小池知事 “桜満開だが 花見の宴会避けリバウンド防止に協力を”

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は「リバウンド防止期間で感染を抑え込まないといけない。都としては検査・調査の拡充、病床の確保を進めている。最大限の警戒を続けるようお願いする」と述べました。

また「きょうも桜が満開だ。週末が迫ってきているが、お花見の宴会は避けてリバウンドの防止に協力してほしい」と呼びかけました。

専門家 “変異ウイルスで急激に感染再拡大の可能性”

モニタリング会議に出席した国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「新規陽性者数の増加比が100%を超える状況が持続すると、新規陽性者は一気に増えていく。従来のウイルスから変異ウイルスに置き換わっていく過程では、すごい勢いで増える。急激に感染の再拡大が起こる可能性がある」と述べました。

また、変異ウイルスの検査について「出てきた事例を徹底的に調べて、どういう広がりをしているか見つけることは重要で、それが早くできると抑え込みにつながる」とした一方で「すべてを調査しているわけではないので、ひょっとすると広がっているかもしれないと想定しておかなければならない」と述べました。

都医師会 副会長 “病床の拡大には限界がある”

モニタリング会議に出席した東京都医師会の猪口正孝副会長は「感染の再拡大が起きたら専用の病床を広げなくてはいけない。通常の医療をさらに制限して病床を確保することになる」と述べました。

その一方で、都は、感染の拡大時に新型コロナウイルスの患者用に最大限転用できる病床を6044床確保したものの、さらに増やすことを考えた場合、猪口副会長は「7000床や8000床くらいがせいぜいだ」と述べ、病床の拡大には限界があるという認識を示しました。

また「すぐに入院につながるよう調整機能を強化するなど、いろいろな作戦をとりながら解決しようと考えている」と述べました。
25日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、24日時点の7日間平均が299.9人と前の週からおよそ7人増加し、依然として高い値が続いています。

専門家は「第2波では新規陽性者数が十分に減少せず、およそ150人から200人の間で増減を繰り返したあと、急激に感染が再拡大して第3波を迎えた。今回は250人を下回らずに推移し、増加に転じている。今後、第3波を超えるような経過をたどることが危惧される」と指摘し、強い危機感を示しました。

そのうえで「感染力が強い変異ウイルスが全国に広がりを見せていて、急激に拡大するリスクがある。新規陽性者数が再度増加する局面を確実に捉えて、変異ウイルスを徹底的に封じ込めることが重要だ」と指摘しました。

今月22日までの1週間に感染が確認された人を年代別の割合でみると
▽20代が最も多く21.5%
▽30代が16.1%
▽50代が13.7%
▽40代が13.0%
▽60代が8.9%
▽70代が8.5%
▽80代が6.7%
▽10代が5.3%
▽10歳未満が4.5%
▽90代以上が1.8%でした。

このうち、20代、50代、60代の割合が上昇しました。

65歳以上の高齢者は435人で、前の週より2人減少しましたが、新規陽性者に占める割合は21.2%でほぼ横ばいでした。

感染経路がわかっている人のうち
▽家庭内での感染が46.2%で最も多く
▽病院や高齢者施設などの施設内が30.0%でした。

70代の37.1%、80代以上の73.3%が施設内での感染でした。

このほか
▽職場は前の週より1ポイント増えて9%
▽会食は1.4ポイント増えて5.1%でした。

専門家は「多岐にわたる場面で感染例が発生している」と分析しています。

また「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路がわからない人の7日間平均は、24日時点で144.1人で、前の週よりおよそ3人増えました。

専門家は「20代から50代では感染経路がわからない人の割合が50%を超えていて、保健所での疫学調査による接触歴の把握が難しい状況が続いている」と指摘しています。

医療提供体制

検査の「陽性率」は、24日時点で3.7%と先週の3.5%からわずかに上昇しました。

入院患者は24日の時点で1371人で、今月17日の時点より101人増えていて、専門家は「増加傾向にあり、通常医療への影響が長期間続いている」と指摘しています。

また「現在の医療提供体制では変異ウイルスによる急激な感染の再拡大には対応できなくなる危険性がある」と指摘しました。

一方で「再拡大を想定して病床や宿泊療養、自宅療養の体制確保のための対策を検討している」と述べました。

また、都の基準で集計した24日時点の重症患者は今月17日の時点より1人増えて42人となり、専門家は「重症患者の新たな発生も続き、横ばいで推移している」と分析しています。

今月22日までの1週間では54人が亡くなったと都に報告があり、前の週の110人の半分以下に減りました。

亡くなった54人のうち8割余りにあたる46人が70代以上の高齢者でした。