東京オリンピック聖火リレーがスタート

東京オリンピックの聖火リレーが、福島県をスタートして始まりました。新型コロナウイルスの感染が収まらない中、リレーはおよそ1万人のランナーが参加して121日間をかけて47都道府県を巡ります。

東京オリンピックの聖火リレーは、復興五輪を大会理念に掲げる中、東日本大震災の被災地、福島県の「Jヴィレッジ」で25日午前9時から出発式典が行われました。
大会組織委員会の橋本会長は、去年3月にギリシャで採火され日本に聖火が運ばれた後に新型コロナの感染拡大で大会が延期となった経緯を踏まえ「この1年間、世界中が困難な状況だったが聖火は静かに力強くともされ続け今、花開こうとする桜のつぼみのごとく、きょうを待っていた。私はオリンピアンとして数々の聖火を見てきたが、夏の聖火は燃えるように情熱的で力強く、冬の聖火は深くともり、優しくて温かい。東京大会ではこれらが合わさり力強く温かい光となって日本全国に一つ一つ希望をともしていってほしい。きょう出発する聖火が、暗闇の先の一筋の光として希望の道をつなぎ7月23日に日本と世界の皆さんの希望が詰まった大きな光となって国立競技場に届くことを祈念する」とあいさつしました。
丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は「私たちはこのJヴィレッジのように、未曽有の大災害から復興を成し遂げつつある被災地の姿を力強く発信し、復興オリンピック・パラリンピックとして世界中に希望と勇気を届ける最高の大会にしたい。政府としてIOCや組織委員会、東京都、関係自治体とともに、コロナ対策を万全のものとし、安全で安心な大会を実現していく。この聖火が人々の心を1つにつないで大会本番を迎えられることを心から願う」とあいさつしました。
また東京都の小池知事は「今回の大会の原点は、復興オリンピック・パラリンピックだ。復興の象徴といえるJヴィレッジから始まる聖火リレーが国民の皆様のご協力によって安全に全国を回り、大会に向けた希望の道となって、復興をさらに加速させ、コロナ禍からの『サステイナブルリカバリー』の一歩につながることを確信したい。ともにがんばりましょう」とあいさつしました。
福島県の内堀知事は「福島復興のシンボルであるJヴィレッジから聖火リレーがスタートすることは、県民を大いに勇気づける。福島県民は震災以降さまざまな困難に見舞われてきたが、世界中の人たちの優しさに支えられ、数多くの応援をもらったからこそ、前を向き一歩ずつ復興の歩みを進めてこられた。私たちの歩みはどんな困難も乗り越えられるという力強いメッセージとして、聖火を希望のともしびとして輝かせる。聖火が全国の多くの人の希望の道を照らし出すことを願っている」と述べました。
そして、桜をモチーフにしたトーチに聖火がともされると、2011年サッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表「なでしこジャパン」の当時のメンバー16人が、トーチを手に最初の聖火ランナーとして走り始め、東京オリンピックの聖火リレーがスタートしました。

第1走者を務めた「なでしこジャパン」のメンバーたちは、午前9時40分すぎ、トーチを持つ岩清水梓選手を先頭に出発式典の会場から出てきました。

メンバーは、両側に間隔を空けて並び、拍手を送る地元・福島の子どもたちに手を振るなどして応えながら、笑顔でゆっくりと走っていきました。
聖火リレーはおよそ1万人のランナーが参加して121日間をかけて47都道府県を巡ります。

初日の25日は、福島県内の10の市町村をおよそ100人のランナーが走り、順調に進めば午後5時すぎに1日の最後の式典会場に到着する予定です。

東京大会は、史上初の延期から1年がたった今も感染が収まらない中、およそ4か月にわたって全国を巡る聖火リレーが安全に行われるかが、大会の機運を醸成する上でも大きな課題となります。

“なでしこ” 佐々木則夫さんは…

聖火リレーで最初のランナーを務めた2011年のサッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表「なでしこジャパン」の当時の監督、佐々木則夫さんは「Jヴィレッジはなでしこの聖地であり、福島の復興のあかしの施設でもある。そこからスタートができ、日本の皆さんの思いを含め、聖火が無事、国立競技場まで届いてもらえればと願っている。なでしこジャパンが2011年に元気を送れたように、東京オリンピックが、コロナ禍、そして復興半ばの東日本の皆さんに、勇気や元気を送れると信じている。安心・安全を踏まえたうえで、日本だからこそできるオリンピックになってほしいしぜひ成功させましょう」と話していました。

“なでしこ” 選手たちは…

トーチに点火した岩手県出身の岩清水梓選手は「トーチを持つ大役を務めさせていただき恐縮だったが、光栄な思いだった。岩手や東北の皆さんに喜んでもらえたらうれしいという思いで走った。メンバーとも10年ぶりに再会でき、すてきな機会となった」と話していました。

宮間あや選手は「本当に光栄な思いで、感謝の気持ちでいっぱいだった。いろいろなことが難しい世の中で、難しい感情ではあったが、オリンピックを成功させようという思いがあるので、この経験ができてありがたかった」と話していました。

またJヴィレッジを本拠地としていたサッカーチーム、「東京電力マリーゼ」に所属していた丸山桂里奈さんは「メンバーと一緒に走れてうれしかった。福島は第2の故郷だと思っていて、私の体の半分は福島が作ってくれたので、いろんな方に感謝を込めて走った。足の裏が少し熱くなった」と話していました。

同じく「東京電力マリーゼ」に所属していた鮫島彩選手は「毎日のようにJヴィレッジで仲間たちとボールを蹴って、なでしこでも多くの時間を過ごした、本当に思い入れのある場所だ。希望の光の聖火リレーのスターターとして走れて光栄だ。明るい話題がない中、ポジティブなニュースとして広がっていってほしい」と話していました。

第1区間のランナーたちは…

第2走者を務めた大和田朝斗さんは、Jヴィレッジがある福島県広野町出身の16歳で、東日本大震災と原発事故からの復興を支える人材を育成する県立ふたば未来学園高校の1年生です。去年、大会が延期される前から第2走者で走ることが決まっていて、1年越しの聖火ランナーとして、第1走者の「なでしこジャパン」の岩清水さんから聖火を引き継ぎ、ゆっくりとトーチを掲げて走りました。

走り終わった後、大和田さんは取材に応じ「聖火は思ったより明るかった。なかなかできない体験をできているんだと感じました」と振り返りました。大和田さんは震災と原発事故のため栃木県に避難し、地元に戻った後、Jヴィレッジを拠点とするサッカークラブに所属した経験があり「福島の復興の現状が伝わればいいなと思って走った。自分のつなげた火がいろんなところを回っていくので、その風景を見てほしい」と福島への思いを語りました。そのうえで「一人一人の区間が短くても、多くの人がつながることで長い距離になり、人と人とがつながる大きさを感じた。オリンピックはみんなで力を合わせて団結してできればいいなと感じている」と話していました。

第3走者を務めた大和田智美さん(44)は福島県富岡町にある自宅が原発事故により今も立ち入りが厳しく制限される「帰還困難区域」に指定されていて、ふるさとの復興を加速させたいと聖火ランナーに応募しました。聖火を受け取った大和田さんは、マスクをつけたままゆっくりと走り出し、2分ほどかけて次のランナーに引き継ぎました。

第4走者を務めた平澤俊輔さん(26)は、Jヴィレッジを拠点にトップ選手を育成する「JFAアカデミー福島」に所属していた高校生の時に被災し、その後は去年までサッカーJFLのいわきFCでプレーしていました。聖火リレーを走り終えたあと、平澤さんは「私はJヴィレッジでサッカーをしていて、震災直後はやむをえずここを離れてしまったが、10年後に戻ってきてここで聖火リレーをできるとは思っていなかったので、感慨深い瞬間になった」と振り返りました。そのうえで「どんな困難でも立ち向かってきたからこそ、今の福島県があると思う。コロナの状況で世界中が難しい状況に直面しているが、助け合いができれば乗り越えられると信じているので、その一助として、オリンピックやスポーツの力があると思う」と話していました。

福島 新型コロナ感染の状況は

福島県では、2月下旬にいったん感染状況が落ち着いたあと、再び新型コロナウイルスの感染確認が相次ぐようになり、24日まで31日連続で新たな感染確認が発表されています。

郡山市や福島市など東京オリンピックの聖火リレーのルートとなっている自治体では、最近大規模なクラスターの発生が相次いでいます。

累計の感染者数は2371人にのぼっていて、このうち107人が死亡しました。

感染者数に占める死者の割合「死亡率」は4.5%と、今月14日時点の全国の死亡率1.9%を大幅に上回っています。

福島県内の死者は、24日現在、今月だけで36人と月別で最も多かった今年1月の27人を上回って過去最多となっていて、県民の間に不安が広がっています。

病床の利用率は、先月いったん20%を切る水準まで下がりましたが、先月末から再び増加傾向が続いていて、23日現在で52.9%と、政府の分科会が4段階で示すうち最も深刻な「ステージ4」の基準50%を超えています。

聖火リレー 新型コロナ感染対策は…

今回の聖火リレーでは、新型コロナウイルスの感染を広げないことが大きな課題となっていることから、組織委員会は対策のガイドラインをまとめています。

それによりますと、まず観客の対策として、住んでいる都道府県以外では沿道での応援は控えること、沿道などではマスクを着用し、応援は大声ではなく拍手などで行うこと、そして聖火リレーの様子はインターネットのライブ中継を見ることで、沿道での密集を避けるとしています。

そのうえで、出発式などのセレモニーでは人数制限を行う場合があり、このうち1日の最後の式典の会場は、原則として事前予約制にします。

また、聖火ランナーの対策として、2週間前から当日まで、会食をしないことや密集する場所への外出を避けること、走行時以外はマスクの着用を求めています。

このほか、沿道に多くの観客が密集するおそれのある著名人ランナーについては、密集対策ができる場所を走ることにしています。

一方、都道府県に緊急事態宣言や外出自粛の要請などが出ている場合には、公道でのリレーは見合わせ、1日の最後の式典会場での無観客での点火セレモニーだけにするなど、聖火リレーの実施方法を変更する場合もあるとしています。

組織委員会はこうした事前のガイドラインに加え、コロナによって事態が起きた場合の対応方針を公表しています。

それによりますと、沿道で「密集」と判断する基準を、多くの観客が肩が触れ合う程度などと定め、スタッフや広報車が移動や分散を呼びかけるなどしても解消されない場合には、その場所を「スキップ」して次に進むなどとしています。

また、運営スタッフなどに感染者が確認された場合の対応では、感染規模と影響度を小、中、大の3段階に分け、感染者や濃厚接触者が1、2人程度の「小」では、配置を換えるなどして通常どおり運営を行い、代わりの要員が難しいなどの「中」では縮小案を検討、感染者の集団=クラスターが発生した場合の「大」では公道のリレーは中止を検討するとしています。

また、各都道府県でクラスターが発生した場合は、ルートの一部で「スキップ」を検討するなどとしています。

出発式典でも感染対策

出発式典は、新型コロナウイルスの感染防止策として、一般の観客を会場に入れずに行われました。

関係者の座席はおよそ1メートル間隔で配置され、ステージ上でも登壇者に一定の間隔が空けられたほか、あいさつ以外ではマスクを着用するなど、対策が取られていました。

大会組織委員会によりますと、式典には、国や東京都、スポンサーなどの関係者およそ160人が出席し、会場に入るときには全員にアルコール消毒や検温が行われたということです。

福島県で辞退した聖火ランナー

全国各地で著名人など聖火ランナーの参加辞退が相次ぐ中、福島県で行われる聖火リレーでは、これまでに24人が参加を見送ったことが明らかになっています。

このうち著名人では、初日の25日の出発式典の直後に走る第1走者を務める予定だった元「なでしこジャパン」の澤穂希さんが、体調不良のため辞退しました。「なでしこジャパン」ではこのほか、川澄奈穂美さん、岩渕真奈さん、熊谷紗希さん、永里優季さんも辞退しました。

また、最初の区間「Jヴィレッジ」を走るランナーでは、当初第3走者として走る予定だった、東京オリンピック男子マラソン日本代表内定の大迫傑選手と、その次の第4ランナーとして走る予定だった俳優の香川照之さんも走りません。

さらに、初日の最終ランナーとして南相馬市を走る予定だった「TOKIO」と、NHK連続テレビ小説「エール」で福島市出身の作曲家古関裕而をモデルとした主人公を演じ福島市を走る予定だった俳優の窪田正孝さんも、いずれもスケジュールの都合を理由に辞退しました。

このほか、3日目の27日に、原発事故のためかつて避難指示が出された田村市の都路地区を走る予定だった50代の被災者の男性も、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の発言をめぐる問題への対応に納得がいかないとして辞退しました。

福島県で行われる聖火リレーへの参加を辞退した聖火ランナーは、明らかになっているだけで24人にのぼっています。

走者だけでなくルートも変更に

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で1年延期されたことに伴い、福島県では聖火リレーのコースも当初の計画と変わりました。

大会組織委員会は、時間を短縮し運営を簡素化するため、浪江町と猪苗代、それに双葉町でルートを一部見直しました。

このうち猪苗代町では、全国で唯一、ランナーがスキーで滑る予定で、昨シーズンの記録的な雪不足になっても滑走できるよう、スタート地点を当初の予定より250メートルほど標高が高い場所に変更しました。

また双葉町では、当初予定していた、ランタンを持ったランナーがJR常磐線の列車に乗って聖火を運ぶパフォーマンスをやめました。

さらに、2月13日に発生した東日本大震災の余震とされる最大震度6強の地震の影響で、相馬市のルートも一部変更になりました。地震の揺れで、参道の両脇の石灯籠が数本倒れ、中継ポイントとなっている大手門の支柱が壊れていることがわかったためです。

相馬市と隣の新地町では、先月の地震でルートや周辺の道路に亀裂が入ったり段差ができたりしているところが見つかり、応急的な補修が行われました。