さよなら?皆勤賞

さよなら?皆勤賞
卒業式や終業式が行われる3月。
SNS上ではこんな声が次々とあがっています。

「皆勤賞ゲット!次の学年も頑張るぞ」
「子どもが皆勤賞をもらって帰ってきてくれてうれしい…」

この皆勤賞、いま、やめる学校が出てきています。

(青森放送局 記者 吉元明訓/ネットワーク報道部 記者 野田綾 林田健太 谷井実穂子)

皆勤賞 やめました

皆勤賞。

それは、1日も休まず登校した子どもに渡される賞です。

取材のきっかけは新型コロナ。

「新型コロナの影響で皆勤賞がなくなっているらしい」という話を聞いたのです。

県などに聞いても統計はありません。

そこで担当している青森市などの60の中学校に取材をしてみました。

結果はこうでした。

昨年度は皆勤賞の表彰をしていたのは18校。

このうち5校が今年度、皆勤賞を取りやめていました。

聞いた話は事実でした。
取りやめた青森市立戸山中学校 神和宏校長
「無理に登校して体調を崩したり、ほかの生徒に感染させてしまったりするのを避けるため表彰を取りやめました」

「入学した時から皆勤賞を目指していた生徒もいたと思います。申し訳ない気持ちもあります」
実は、国は新型コロナに感染した時や、感染を心配して登校しなかった時などは、欠席に含まないという指針を示しています。

そうした状況にあっても取りやめるケースが出てきているようです。

減りつつあった皆勤賞

ただ、取材して驚いたのは、取りやめたのが5校という数字ではありません。

皆勤賞を実施していたのは18校だけという数字、つまり残りの42校には新型コロナが広まる前から皆勤賞がなく、ここ数年でやめたという学校もあったことです。

取材した限りでは皆勤賞があるのは少数派。

私(吉元)は、中学校を皆勤して表彰状をもらいうれしかったことをよく覚えています。

なぜ、皆勤賞がなくなっているのか?

取材の方向をそちらに変えて話を聞いてみました。

皆勤賞のない学校は

見えてきたのは“学校を休む”そのことに対する考え方の変化です。

皆勤賞がない学校の先生のことばにそれを強く感じました。
中学校の校長
「事情があって学校に行けない不登校の生徒もいます。休むことは必ずしも悪いことではないと考え皆勤賞をやめました」

別の学校の教師
「『1日も休まず学校に』ということが、どこか少し根性論のようにも聞こえると思いました。学校に来る、それだけがすべてではないと思います」

努力は認めてあげたい

一方、皆勤賞がある学校も子どものことを思って、実施をしています。
複数の学校の担当者
「1日も休まないことは簡単なことではありません。その努力はきちんと認めてあげたいんです」

「皆勤賞を目指すことで、規則正しい生活と健康管理につながると思います」
またネットの声にもあるように「子どもの励みになるので続けてほしい」という保護者の声もあると話していました。

さらに受験の際の内申書などに「皆勤」と記載すれば、自己PRにつながると考える生徒や保護者もいるという声もありました。

皆勤賞の起源は?

そもそも皆勤賞はどんな目的でできたのでしょうか。

教育史が専門の京都大学の石岡学准教授に聞いてみました。
京都大学 石岡学准教授
「明治時代に就学した子どもに配られた“就学牌”というバッジが原型かもしれません」

「そして、富国強兵の国策を背景に、大正時代には子どもの健康が注目され、赤ちゃんコンクールや健康優良児の表彰も盛んになってきます」
起源ははっきりわからないものの、社会全体の価値観とマッチして皆勤賞が定着していったと考えています。
石岡 准教授
「高度経済成長期にバブル期と20世紀後半の日本社会は『休まないことが美徳』でした」

「今から見れば大人が働き過ぎていたという面もあるかもしれませんが、そうした時代の中では、休まない子どもを表彰する皆勤賞は深くなじんでいったと思います」
社会の流れ、時代の雰囲気。

今後、皆勤賞は議論になっていくと石岡さんは考えています。
石岡 准教授
「時代は変わり、いま、大人は休む時はしっかり休む『働き方改革』が進んでいます」

「不登校の子どもが行くフリースクールもあり、必ずしも学校に通わなくても学習ができるようになりました。これから、皆勤賞のあり方が変わっていくのは自然なことではないでしょうか」

欠席日数も“記述せず”

中には、出席や欠席の日数自体を高校受験の調査書、いわゆる内申書から無くしたところもありました。

広島県教育委員会です。

おととし12月、公立高校の入試制度改革を行い、令和5年度の受験から調査書の内容を変え、出席や欠席の日数を記す欄も無くすことにしたのです。

不登校になった子どもたちの進学を考えた変化だといいます。
広島県教育委員会 担当者
「不登校の理由はさまざまで、生徒本人の理由だけで学校を欠席しているとは限りません」

「そうした子どもが欠席日数の多いことで、希望の進学をあきらめるようなことがないようにしたい。学びたいという意欲を大切にしていくことが大事だと考えて、出欠席日数の欄を無くすことにしました」
調査書からは、部活動や生徒会活動といった“特別活動”の記入欄も無くしました。

そして受験の際は、得意なことや取り組んできたこと、入学後の目標などを“自己表現”する面談を行い、調査書と同じ比重で評価することにしています。
担当者
「調査書を気にしすぎることなく、のびのびと学校生活や自分のやりたいことに取り組み、それが評価される体制にしたいという思いです」

街の人の意見は

街なかで皆勤賞について聞いてみると、意見はまさにさまざまで、励みになるという声も少なくありません。
「学校にくるモチベーションになるから、あってもいい」

「無理してとる必要はないが、とった子がいたら認めてあげてもいいと思う」

また「体調面や精神面のコンディションによりそってあげるためにも、なくていいと思う」といった声もありました。

あってもなくても…

取材の最後に、不登校やひきこもりの子どもたちの現状を伝えている「不登校新聞」の編集長の石井志昂さんに意見を聞いてみました。

石井さん自身も中学2年生から不登校になり、16歳から新聞の作成に携わってきました。
「不登校新聞」石井志昂 編集長
「体調が悪い、精神的にもつらいことは大人にもあります。無理すると、体も心も壊れてしまう。ただ大人になるとうまく休みをとれますが、子どもは休み方や学校からの離れ方がわからないことがあるんです」

「私は皆勤賞はあってもいいと思います。ただ必要なときには学校を休むことの大切さ、それを大人がきちんと教えて欲しい。制度があってもなくても、必要なら休むというメッセージをきちんと出してあげる、私はそれが一番大事だと思っています」