新型コロナが影響 修学旅行実施できた学校は5割にとどまる

緊急事態宣言は解除されましたが、大きな影響が残ったのが「修学旅行」です。
大手旅行会社では、今年度、全国で予定されていたおよそ4000校のうち、修学旅行を実施できたのは5割にとどまっていて、年度末の今、学校現場では失われた多様な機会を生徒たちに届けようという動きが相次いでいます。

「近畿日本ツーリスト」では、年間に小中学校や高校、およそ4000校の修学旅行を手がけていますが、今年度は1度目の緊急事態宣言で、春に予定していた学校のほとんどが中止や延期を決めたといいます。

3学期に延期した学校も多くありましたが、2度目の宣言で再び中止を余儀なくされ、特に宣言が長期化した首都圏では、1月から3月に予定されていた修学旅行のおよそ65%が中止や延期になり、残る35%も日帰りやオンラインなどに変更したところが多かったということです。

結果的に今年度、全国で予定されていたおよそ4000校のうち、修学旅行を実施できたのは5割程度にとどまったことがわかりました。

こうした中、年度末を迎えた各学校現場では、訪問予定だった現地とオンラインで結ぶ「リモート修学旅行」のほか、代わりの日帰り遠足や学校内でのイベントなどが駆け込みで実施されているということです。

近畿日本ツーリストの担当者は「卒業アルバムが真っ白な状態で、子どもたちを卒業させることは何とか食い止めたいという思いです。リモートなどを活用し、工夫をこらした新しい形での思い出づくりを提案したい」と話しています。

現地と結ぶ「リモート修学旅行」も

2度目の宣言で修学旅行を中止した学校では、現地と教室をオンラインでつなぐ「リモート修学旅行」を急きょ実施する動きが相次いでいます。

このうち、東京 杉並区にある東京立正高校では2度目の緊急事態宣言の影響で、ことし1月に予定していた沖縄への修学旅行を今月に延期しましたが、感染拡大が収まらず中止を決断しました。

代わりに、本来は沖縄に出発していたはずの今月22日、2年生の生徒およそ160人が、沖縄の現地とオンラインで結ぶ「リモート修学旅行」に教室から参加しました。
この中では、幼い頃に沖縄戦を経験した仲座ヨキさん(83)とつなぎ、火の海となったサトウキビ畑の中を必死に逃げた体験などが語られました。

仲座さんが「家族、友達、恋人を失う戦争を二度としてはいけない」と呼びかけると、生徒たちはノートを取りながら真剣な表情で耳を傾けていました。

このほか、「SDGs」=持続可能な開発目標にあわせ、沖縄の自然や歴史、文化について学びを深めたり、現地から指導を受けながらシーサーに絵付けをしたりして沖縄に思いをはせていました。

参加した女子生徒は、「沖縄に行けなくなったのがとても悲しく、リモートで楽しめるのか不安でしたが、戦争の話をはじめ伝わってきたことが多くありました。企画してくれた先生たちに感謝したいです」と話していました。

梅沢辰也校長は「本当は、何としても沖縄に連れて行きたかったので苦渋の決断でしたが、リモートでも現地の方の思いがしっかりと届いていたので、この経験が大きなものとして残ると信じたい」と話していました。

失われた“多様性実感する場” 別の機会で確保する学校も

修学旅行の中止によって失われた「多様性を実感する場」を、別の機会で確保しようという学校も出てきています。

東京 台東区の白鴎高校附属中学校では、感染拡大で3年生の修学旅行先をアメリカから長崎に変更していましたが、2度目の緊急事態宣言の再延長で中止を余儀なくされました。

長崎に行っていたはずの今月19日、学校は多様性を学べる機会を持ちたいと、障害などの啓発に取り組む団体の協力を得て、視覚障害のある6人と交流する催しを開催しました。

交流ではソーシャルディスタンスを保ちながら、障害のあるなしにかかわらず、誰もが楽しめる遊びを開発することになり、生徒たちは視覚障害のある人と対話を重ねながら、「音」を頼りに遊ぶ方法を考えていきました。

発表の場では、目を閉じている人の周囲で複数の人が手をたたき、一定のリズムの人の方向を当てるゲームなど、さまざまな遊びが披露されていました。

視覚障害のある男性は、生徒たちに「誰もが楽しめる遊びを考えることは、SDGsに掲げられている『誰も取り残さない社会をつくる』ことにつながる時間でした。この視点を忘れないでほしい」と語りかけていました。

参加した女子生徒は「きょうのふれあいを通じ、特別視せずに普通に接していいのだと実感しました。『助けて』と言われたときに、必要な手助けをする距離感がいいのかもしれないと考え方が変わりました」と話していました。

企画した池田仁教諭は「生徒たちから『もっと理解しよう』『ちゃんと伝えよう』という変化が感じられてよかった。直接の出会いから生まれる学びを奪ってはいけないと思うので、感染対策をとりながらもできる形を追い求めていきたい」と話していました。