災害時の赤ちゃんへの授乳にまつわるウソ?ホント?調べました

「災害時にはストレスで母乳が出なくなる」こんな話、聞いたことありませんか?実は不正確な情報です。赤ちゃんに関する災害時の備えをめぐっては真偽不明の情報がたくさん。どう備えればよいのか調べました。

1 母乳はストレスで出なくなるの?

災害時の授乳をめぐってはネット上などで不正確な情報が多く見られます。

その代表例として多くの専門家があげるのが「災害時のストレスで母乳が出なくなる」というもの。

たしかに東日本大震災では、一時的に母乳が出なくなったと訴えるお母さんもいました。

しかし、日本新生児成育医学会は「過度の心配は不要」としています。
日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長の笠井靖代さんも「一時的に母乳が出てこなくなることもあると言われますが、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらい続ければ出るようになります」と指摘します。

災害時は、断水などで衛生状態を保つことが難しい場合もあります。

乳幼児は下痢や感染症を起こしやすいため、ふだん母乳で育てている人はそのまま母乳をあげてください。

2 災害に備えてミルクに慣らしておくべき?

「母乳の人も、災害に備えてミルクに慣らしたほうがいい」という情報もよく目にしますが、こちらも間違い。

東日本大震災の被災地で母子支援を行った助産師によると、母乳が足りないだろうからと支援物資のミルクを赤ちゃんに与えたら母乳が出にくくなったという人がいたということです。

笠井さんも「災害に備えるため無理に粉ミルクに替える必要はありません」と言います。

これまで続けていたことをなるべく続けられるようにしていくことが重要です。

3「カイロでミルクを温める」はダメ!

不正確な情報の中には赤ちゃんの命に関わるものもあります。

例えば「非常時でお湯がない時は調乳した粉ミルクを使い捨てカイロで温める」というノウハウ。

これは絶対にやってはいけません。

厚生労働省によりますと、粉ミルクには有害な「サカザキ菌」がまれに混入している可能性があります。

70度以上で死滅するため、日本のミルクメーカーは各社共通で粉ミルクは70度以上の湯で溶くよう求めています。

粉ミルクを水で溶いて使い捨てカイロで温めても、70度には達しないので、絶対にやらないでください。

4 飲み残しをあげてはダメ!

「飲み残しても2時間までなら大丈夫」こんな情報もネットで見かけます。

災害時には物資は貴重で少しくらい大丈夫だと思ってしまうかもしれませんが、飲み残しは絶対あげてはいけません。

一度でも赤ちゃんが口をつけたらミルクに唾液が混ざって雑菌が繁殖して腐敗しやすいので必ず処分してください。

新たな選択肢“液体ミルク” でも哺乳瓶は毎回洗って!

ミルクで育てている人の備えとして注目されているのが「液体ミルク」です。

粉ミルクと異なりお湯がいりません。

哺乳瓶に移し替えるなどすれば常温で飲ませることができます。

おととしから日本のメーカーも販売を始めました。

ただしミルクを入れる哺乳瓶は毎回きれいに洗って消毒する必要があります。

使い捨ての哺乳瓶もありますが、再利用はできません。

いずれも難しければ清潔な紙コップで飲ませる方法もあります。

その場合は、赤ちゃんが起きていることを確認して必ず縦抱きにしたうえで、ミルクを流し込むのではなく赤ちゃんが自分のリズムで飲めるようにしてください。

何を備えればいいの?「アセスメントシート」でチェックを

備えるべき内容は人によってさまざま。

どんな備えをすればよいのか考えるうえで参考になるのが、内閣府が去年作成した「授乳アセスメントシート」です。

これは避難所の運営者向けに作られたもので、必要な支援を被災者に聞き取るためのシートですが、お母さんにも参考になります。

シートに沿って「母乳の出に不安があるか?」「赤ちゃんのおしっこの回数は?」などの質問に答えていくと、それぞれの母子にどのような支援が必要か分かるようになっています。
「母と子の育児支援ネットワーク」代表でシートの作成にも協力した本郷寛子さんは「シートは一人一人に寄りそった支援を行うためのものです。赤ちゃんがいる家庭にとっても当然参考になりますし、災害時誰もが支援する側に回る可能性があるので、赤ちゃんがいるいないにかかわらず、多くの人にぜひ一度見てもらいたいです」と話しています。