北朝鮮が巡航ミサイル発射 バイデン大統領 “挑発と捉えず”

北朝鮮が今月21日に巡航ミサイルとみられる2発を発射したことが韓国軍の関係者の話で明らかになりました。

これについてアメリカのバイデン大統領は新たな挑発とは捉えていないという認識を示し、政権の高官も通常の軍事活動の範囲内だとして北朝鮮に外交を通じて関与していく姿勢を示しました。

韓国軍の関係者は北朝鮮が今月21日の朝に西部のピョンアン(平安)南道オンチョン(温泉)付近から巡航ミサイルと推定される2発を発射したと明らかにしました。

またアメリカの複数のメディアもアメリカ政府当局者の話として北朝鮮が複数の短距離ミサイルを発射したと報じました。

これについてバイデン大統領は日本時間の24日午前、記者団から「挑発だと思うか」と聞かれたのに対し「そうは思わない。国防総省によればいつものことだ。彼らのやったことに何も新しいことはない」と述べ、新たな挑発とは捉えていないという認識を示しました。

またバイデン政権の高官も電話会見で「弾道ミサイルを制限する国連安保理決議の制裁の対象にはなっていないもので、通常の軍事活動の範囲内だ。短距離システムのものだった」として同様の見解を示しました。

そのうえで高官は「大げさに扱うことは利益にならない。週末に起きたことは対話の扉を閉じるものではない。対話の扉が開いていないと受け止められる状況は望ましくない」と述べ、北朝鮮に外交を通じて関与していく姿勢を示しました。

バイデン政権は対北朝鮮政策の見直しを進めるとともに北朝鮮との接触を試みていますが、北朝鮮は「敵視政策を撤回しないかぎり無視する」としてこれに応じておらず、アメリカ側の出方を注視しているとみられます。

北朝鮮 金総書記 住宅着工式に出席 ミサイル発射にふれず

北朝鮮の国営メディアは、キム・ジョンウン(金正恩)総書記がピョンヤンで住宅建設の着工式に出席したと24日朝伝えましたが、これまでのところミサイルの発射については明らかにしていません。

24日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、23日、ピョンヤンで住宅1万戸を建設する工事の着工式が行われ、キム・ジョンウン総書記が出席したと伝えました。

この中でキム総書記は「超高層住宅の建設で、国家の潜在力と人民の創造力が改めて誇示されるだろう」と述べ、その後着工を記念した発破が行われたということです。

一方で北朝鮮は、ミサイルの発射についてこれまでのところ発表していません。

ただ北朝鮮は今月、キム総書記の妹のキム・ヨジョン(金与正)氏がアメリカ軍と韓国軍の合同軍事演習を非難する談話を出したほか、北朝鮮外務省のチェ・ソニ第1次官がバイデン政権に対し「敵視政策を撤回しないかぎり、無視する」とする談話を発表し、アメリカに反発する姿勢を示しています。

韓国軍関係者「21日の朝 2発発射を把握 巡航ミサイルと推定」

アメリカの複数のメディアが、北朝鮮が先週末、短距離ミサイルを発射したと報じたことに関連し、韓国軍の関係者は、発射は今月21日の朝で、西部のピョンアン(平安)南道オンチョン(温泉)付近から巡航ミサイルと推定される2発を発射したことを把握していると明らかにしました。

通信社の連合ニュースは、ミサイルは朝鮮半島西側の黄海に向けて発射されたと伝えています。

また韓国軍の関係者は、飛行距離など詳しいことは分析中だとしています。

さらに韓国軍は、アメリカとの緊密な協力のもと、北朝鮮のミサイルに関する動向を常に把握していると強調する一方で、これまで情報を明らかにしなかった理由については「北に関連するすべての情報を公開するわけではない」としています。

加藤官房長官「米韓と連携しながら警戒監視に全力」

加藤官房長官は、午前の記者会見で「北朝鮮の軍事動向については、平素から重大な関心持って情報収集、分析に努めているが、事柄の性質上、個々の具体的な情報の内容について答えることは、これまでも差し控えてきたところだ。引き続き、アメリカ、韓国と緊密に連携しながら、必要な情報の収集、分析、警戒監視に全力を傾注していきたい」と述べました。

そのうえで「弾道ミサイルでないかなど、具体的な内容については、事柄の性質上、答えは差し控えさせていただいているが、日本政府として北朝鮮側に抗議をしている事実はない」と述べました。

防衛省 “短距離のミサイル発射 1年で複数回確認”

防衛省は「北朝鮮の軍事動向は平素から重大な関心をもって情報収集、分析に努めている。引き続きアメリカや韓国と緊密に連携しながら情報収集、分析、警戒監視に全力をあげる」としています。

防衛省関係者によりますと、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が最後に確認された去年3月29日以降も、アメリカ大統領選挙の投票日直前の去年10月26日や、バイデン政権発足直後のことし1月22日など、複数回にわたってミサイルの発射が確認されているということです。

いずれも飛行距離が短く、日本側のレーダーには映らなかったということで、弾道ミサイルを制限する国連安保理決議の制裁の対象外とみられます。

防衛省関係者の1人はNHKの取材に対し「アメリカを過度に刺激することは避けつつ、ミサイル技術の向上を図っているのではないか」と話しています。

弾道ミサイルは去年3月が最後 それ以降は短距離巡航ミサイル

北朝鮮は、去年とおととしに弾道ミサイルを発射していました。

おととしは、5月から11月にかけて短距離弾道ミサイルなど、合わせて25発を発射し、このうち10月の発射について北朝鮮は、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイル「北極星3型」と発表しました。

このときは、日本のEEZ=排他的経済水域内に落下したとみられています。

去年は3月に短距離弾道ミサイルなどを合わせて8発発射し、このとき1回の発射で2発ずつを短い間隔で発射したことから、連射能力の向上を図ったものとみられていました。

これ以降は、弾道ミサイルの発射は確認されていませんが、去年4月には日本海に向けて、短距離の巡航ミサイルとみられる数発を発射していました。

最近の米朝関係 ”具体的な協議の進展みられず”

北朝鮮はアメリカのトランプ前政権と3回にわたって首脳会談を行いましたが、非核化をめぐる立場の隔たりは埋まりませんでした。

おととし10月には、スウェーデンで米朝の実務者協議が行われましたが、北朝鮮はアメリカの姿勢に変化がないとして、「協議は決裂した」と主張し、その後、具体的な協議の進展はみられないままです。

キム・ジョンウン総書記は、ことし1月の朝鮮労働党大会で、アメリカを「最大の敵」と呼んで、バイデン政権を念頭に対決姿勢を示しました。

ただ、キム総書記は「新たな米朝関係を樹立するかぎは、アメリカが敵視政策を撤回することだ」とも述べ、対話に含みを持たせました。

今月になると、キム総書記の妹、ヨジョン氏がアメリカ軍と韓国軍による合同軍事演習に反発する談話を発表し、バイデン政権をけん制していました。

一方、バイデン政権は先月から北朝鮮との接触を試みていると明らかにしていますが、これに対し北朝鮮外務省のチェ・ソニ第1次官は、「敵視政策を撤回しないかぎり、無視する」と談話を出し、反発していました。

北朝鮮情勢に詳しい専門家「アメリカの反応探りたい意味も」

北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は発射について、訓練など通常の軍事活動の可能性も指摘した上で「今のタイミングでの発射は米韓合同軍事演習と日米・米韓の『2プラス2』への抗議や、ブリンケン国務長官がここ数週間以内に北朝鮮政策の見直しが完了すると明言したことについて、アメリカの反応を探りたかったのではないかという意味も込められていると思う」と分析しました。

そして「いまの段階でいきなり弾道ミサイルの発射や核実験は難しいだろう。バイデン政権の北朝鮮政策の見直しが明らかになったタイミングで、内容が到底受け入れられないと判断すれば、国連安保理の決議に違反する弾道ミサイルの発射や核実験を行う危険性はあるだろう」と述べました。

また、対立が深まっているアメリカと中国の関係を北朝鮮がどう見ているかについて触れ「米中関係によっては中国がアメリカと協力して北朝鮮にプレッシャーをかける可能性もある」と指摘した一方で、米朝間で対話が進むような場合「中国が北朝鮮にブレーキをかけさせるかもしれない」とも述べて、北朝鮮が米中両国の動きを注視しているという見方を示しました。