緊急事態“再宣言”ならば経済損失 最大4200億円余増と試算

首都圏の1都3県の緊急事態宣言は解除されましたが、東京大学の経済学者のグループが公表したシミュレーションでは、解除後に気が緩んで対策がおろそかになると5月には再び感染が拡大し、再度、緊急事態宣言が出された場合は、経済損失が最大で4200億円余り多くなるという結果となっています。

シミュレーションを行ったのは、東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師のグループです。

グループは、今月14日までのデータをもとに、首都圏の1都3県で宣言解除後に、経済活動を去年の秋程度のレベルまで戻すのにかける期間と感染状況や経済への影響を分析しました。

分析は、感染の広がりを予測する数理モデルと、経済学の予測モデルを組み合わせ、今後、ワクチンの接種が順調に進む想定で行いました。

このうち東京都では、宣言解除後に1か月程度かけて経済活動を戻す場合は、感染者の数は6月には1日800人近くに増えましたが、ワクチンの効果などによってその後は収束に向かい、1年後の死者の総数は3342人という結果となりました。

これは、2か月程度かけて経済活動を戻した場合と比べると、経済的な損失はおよそ800億円少なくなる一方で、死者は400人ほど多くなっています。

ただ、仮に宣言解除後に気が緩んで歓送迎会や花見の宴会などが行われ、感染の広がりが加速すると(※)経済活動を1か月程度かけて戻した場合でも、東京都での新規感染者の数は5月には1日1300人を超え、1年後の死者数は3703人に増えるという結果になりました。

感染の急拡大によって、緊急事態宣言のような強い対策が再びとられると、感染者数は減りますが、経済的な損失は最大で4200億円余り多くなったということです。

一方、気の緩みがあった場合で、経済活動を2か月かけて戻した場合は、6月下旬には新規の感染者数は1日1200人程度まで増えますが、ワクチンの効果が出てくればその後は、収束に向かうとみられるということです。

仲田准教授は「再度、緊急事態宣言レベルの対策がとられると経済損失が跳ね上がるのでそれを避けながらある程度時間をかけて慎重に経済活動を戻していくべきだ。また、変異株の流行など分析に加えていない要素によって想定を超える可能性があり、それらを見極めるための時間も必要だ」と話しています。

研究グループでは、シミュレーション結果を毎週更新し、ホームページで公開しています。


(※)1人が何人に感染させるかを示す実効再生産数が、3週間にわたり1.25倍に増加する想定。

(HPアドレス)https://covid19outputjapan.github.io/JP/index.html