村上春樹さん直筆原稿 オークションに出品 編集者から流出か

世界的なベストセラー作家、村上春樹さんの直筆原稿20点が、20日東京で開かれたオークションに出品され、このうち19点が落札されました。オークション会社によりますと、原稿はコレクターが20年ほど前に古書店で購入したもので、村上さんとつきあいのあった編集者から流出した可能性があるということです。

オークションに出品されたのは、昭和60年に刊行されたエッセー集「映画をめぐる冒険」の草稿や、レイモンド・カーヴァーの短編を翻訳した原稿など、村上春樹さんの直筆原稿20点で、いずれも、村上さんに関する資料の収集を40年以上続けてきたコレクターの男性が所有していました。

男性は20年ほど前に古書店で購入したということで、直筆のサイン本などほかのコレクションとともに、20日、東京で開かれたオークションに出品しました。

その結果、直筆原稿は19点が落札され、最も高いもので155万円の値が付き、落札額の合計は540万円余りになりました。
村上さんの直筆原稿をめぐっては、今から15年前の平成18年に村上さん自身が月刊誌に文章を寄せ、かつてつきあいのあった編集者に手渡した複数の原稿が無断で古書店などに売られていたことを明らかにしています。

オークション会社は、今回出品された原稿の多くは、すでに亡くなっているこの編集者から流出した可能性があるとして、そのうえでコレクターが購入したのは村上さんの記事の数年前で法的な問題はなく、今回のオークションにあたっては村上さん側に連絡し、原稿を出品することを伝えたと説明しています。

出品した男性は「出品にあたって悩む部分もありましたが、村上さんの貴重な原稿を公の場で引き継ぐことができてよかったです。ファン共通の財産として大切に保管され、引き継がれてほしいと思います」と話していました。

村上さん 流出したとみられる経緯を平成18年に記す

村上春樹さんは、平成18年の「文藝春秋」4月号に「ある編集者の生と死」という文章を寄稿し、自身の直筆原稿が長年つきあいのあった編集者を経由して市場に流出したとみられる経緯を記しています。

この中で村上さんは「僕の手書きの生原稿が少なからず流出し、マーケットに商品として出回ってきた」と記したうえで、「要するに、活字になって発表され、印刷所から戻ってきたあと、一部の担当編集者がその生原稿を社に戻さず、自宅に持ち帰って勝手に保管していたらしいのだ」と指摘しています。

この編集者は、この文章が書かれる3年前に亡くなっていますが、村上さんはその前後の原稿流出をめぐるいきさつについても記しています。

それによりますと、編集者は亡くなる前の年から古書店主を呼んで書庫の処分を始め、亡くなったあとは故人の意向を受けた遺族が同じ店主に残りを引き取ってもらったということで、村上さんは、その中に自分の原稿が含まれていたと推測しています。

そのうえで村上さんは「流出したまま行方不明になっている僕の自筆原稿はまだ大量にある。それらが不正に持ち出された一種の盗品であり、金銭を得るために売却されたものであることをここで明確にしておきたい」と訴えています。