サリン事件の詳細記録 収集保存へ テロ発生時に教訓生かすため

26年前に起きた地下鉄サリン事件では、誰が、いつ、どこで被害に遭い、どんな治療を受けたのかなど被害者についての詳細な記録がまとめられていません。国は、教訓を生かせないとして、昨年度から、そうした記録の収集や保存に向けた調査・研究事業を始めました。

平成7年3月20日に発生したオウム真理教による「地下鉄サリン事件」では、都内を走る3つの路線で猛毒のサリンがまかれ、14人が死亡、およそ6300人が被害に遭いました。

裁判などを通じて加害者側の情報は明らかになっていった一方、被害者については、いつ、どこで、どのような被害に遭い、どんな治療を受けたのか、そしてその後、健康状態に問題がないかなどの詳細な情報はまとめられていません。

こうした状況について超党派の国会議員連盟がおととし、このままでは、大規模テロ事件が再び起きたときに教訓を生かせないなどと決議したことを受け、厚生労働省は昨年度から研究班を立ち上げて、記録収集と保存に向けた調査と研究を始めました。

研究班では、まず、被害者の治療にあたった医療機関のカルテのほか、消防の活動記録や、警察への被害届、地下鉄の運行記録などがどの程度保存されているのかを調べました。

その結果、法律で定められた5年の期間を超えて、今もカルテを保存していることが確認された病院は限られるほか、ほかの機関の場合、個人情報の扱いが問題になるなど記録収集にあたっての課題も浮き彫りになってきたということです。

研究班は、今後記録を収集し保存する事業を本格的に始めるのに向けて、課題の解決方法や必要な態勢について検討を進めていきたいとしています。

治療にあたった医師「次世代への責務」

厚生労働省の研究班の代表を務める日本中毒情報センターの奥村徹理事は、地下鉄サリン事件が発生した当時、聖路加国際病院で治療にあたった医師の1人です。

将来的に、集めた記録を個人情報などに配慮した形で広くアクセスできるようにし、教訓を共有できる仕組みを作っていきたいと考えています。

奥村医師は「記録を残しておくというのは、次世代への責務だ。今のままでは今後、万一大規模テロが起きた場合に教訓とすることができないうえ、被害者や当時を知る人が高齢化する中、事件を風化させることなく、後世に伝えるために極めて重要だ。将来的には、集めた記録が被害者への支援や、AIなども使った新たなテロ対策などに生かされるようになってほしい」と話しています。