【詳しく】首都圏 緊急事態宣言解除へ 今後の対策や暮らしは?

首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言について、政府は夕方に開いた対策本部で期限の今月21日で解除することを決定しました。これによっておよそ2か月半にわたった宣言はすべて解除されることになりました。

▽懸念されるリバウンドへの対策は?
▽外出の自粛や時短要請・協力金など暮らしに関わることは?
▽各方面の受け止めは…?

宣言の解除をめぐる情報をまとめました。

宣言21日で解除 対策本部で決定 政府

政府は午後5時半から総理大臣官邸で新型コロナウイルス対策本部を開き、菅総理大臣をはじめ西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣らが出席しました。
会議では首都圏の1都3県の緊急事態宣言について、期限の今月21日で解除することを決定しました。

記者会見した菅総理大臣は、解除を判断した理由について「飲食店の時間短縮を中心にピンポイントで行った対策は大きな成果をあげている。2週間宣言を延長し、病床の状況などを慎重に見極め判断すると申し上げてきたが、目安とした基準を安定して満たしており、本日解除の判断をした」と述べました。

一方で「感染者数は横ばい、あるいは微増の傾向が見られ、人出が増加している地域もあることから、リバウンドが懸念されている。変異株の広がりにも、警戒する必要がある。宣言が解除される今が大事な時期であり、それぞれの地域の状況を踏まえ国と自治体が一層協力しながらしっかりと対策を続けていきたい」と述べました。

そして国民に対して、マスクの着用や手洗い、それに「3密」の回避などの基本的な感染対策を、引き続き徹底するよう呼びかけました。

また宣言を解除したあとの感染の再拡大を防ぐため、
▽飲食を通じた感染防止、
▽変異したウイルスの監視体制の強化、
▽感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施、
▽安全で迅速なワクチン接種、
▽次の感染拡大に備えた医療体制の強化の
5つの柱からなる総合的な対策を決定したと説明しました。

今回の決定によって、ことし1月からおよそ2か月半にわたった宣言はすべて解除されることになります。

1都3県の「病床の使用率」は?

宣言が解除されることが決まった1都3県では、病床の使用率が解除の目安とされる水準まで下がっています。
16日の病床使用率は
▽東京都が25%
▽埼玉県が38%
▽千葉県が37%
▽神奈川県が25%で
いずれも宣言解除の目安としている「ステージ3」の水準になっています。

延長を表明した今月5日に発表された、今月4日の値は、
▽東京都が30%
▽埼玉県が41%
▽千葉県が46%
▽神奈川県が28%で
40%を超えていた埼玉県や千葉県も30%台に下がっています。

菅総理大臣は18日夜の記者会見で「病床のひっ迫が続いた千葉県などにおいても日を追って入院者が減少し、病床の使用率50%という解除の目安を下回り40%以下となっている。2週間、宣言を延長し病床の状況などを慎重に見極め判断すると申し上げてきたが、目安とした基準を安定して満たしており本日、解除の判断をした」と述べました。

「基本的対処方針」変更

緊急事態宣言の解除に伴い政府は新型コロナウイルス対策の「基本的対処方針」を変更することにしています。

今回変更される「基本的対処方針」の案では、社会経済活動を継続しながら再度の感染拡大を防止するための取り組みを進めるとしています。
具体的には、
▽変異ウイルスへの対応として現在、新規感染者の5%から10%を目安に検体を抽出して行っている検査を早期に40%程度まで引き上げ、全国的な監視体制を強化するとしています。また、民間の検査機関や大学などとの連携をさらに進めゲノム解析を強化するとしています。

さらに、
▽感染状況の兆候を早期につかむため先月、宣言が解除された大阪や愛知、福岡などを含めた10都府県に対し今月中をめどに高齢者施設での検査を実施することや、来月から6月にかけて歓楽街などで定期的に集中的な検査を行うことを求めています。

そして、
▽宣言の解除後も引き続き、日中を含む不要不急の外出の自粛を要請するとしています。

また、
▽飲食店の営業時間の短縮については、地域の感染状況を踏まえながら都道府県知事が適切に判断するよう求めているほか、自治体などに対し飲食店が感染防止のためのガイドラインを守っているか見回り調査を行うよう促すとしています。

さらに、
▽イベントの開催制限についても感染状況などを踏まえ段階的に緩和するよう求めています。

そして、
▽感染が再拡大した場合には飲食店に対する営業時間の短縮要請や、「まん延防止等(とう)重点措置」を機動的に活用するとしています。

感染者数は横ばいか微増

一方で、感染者数は横ばいか増加傾向にあります。

まず、18日・木曜日の感染者数は、
▽東京都が323人
▽神奈川県が160人
▽埼玉県が115人
▽千葉県が122人でしたが、
宣言の延長を表明した今月5日の前の同じ木曜日・今月4日は、
▽東京都が279人
▽神奈川県が138人
▽埼玉県が123人
▽千葉県が107人でした。

埼玉県で減少していますが、東京都、神奈川県、千葉県では増えています。

諮問委員会 尾身会長「今までの延長線上にない対策の加速を」

菅総理大臣の記者会見に同席した諮問委員会の尾身茂会長は首都圏の1都3県で緊急事態宣言が延長されたこの2週間の対策について「国や地方自治体には延長された2週間をリバウンド防止対策を作る準備期間にしてほしいと呼びかけてきた。これからの対策として重要なことは、今までの延長線上にはない対策を打っていくことだ。感染が上昇しそうな時に急ブレーキをかけるための対策であるサーキットブレーカーの検討や、重点的なモニタリング検査、それに高齢者施設の定期的な検査や変異株への対策などがある。こうした対策の準備はまだ完全では無いがいくつかの都道府県では始まっている。専門家としてやってもらいたい対策の準備が始まっていると言えるので今後加速してほしい」と述べました。

また、今後の対策については「これまでは食を介しての感染が問題となり飲食店の営業時間短縮を要請をしてきたが、首都圏ではクラスターが多様化している現状もある。深掘りの調査を行い、新たな感染の源があればその対策をとる必要がある」と述べました。

1都3県 “外出自粛・時短要請”継続へ

首都圏の1都3県は感染の再拡大を防ぐため、緊急事態宣言が解除されたあとも今月末まで不要不急の外出自粛や営業時間の短縮要請を続けます。

東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県の知事は今月21日に緊急事態宣言が解除されたあとの対応についてオンラインで協議しました。
知事たちは感染の再拡大を防ぐため、引き続き連携して対策を続けていくことで一致しました。

具体的には宣言が解除された翌日の今月22日から31日までの取り組みとして、
▽都民・県民に対して不要不急の外出自粛を要請します。

▽飲食店などに対しては今の午後8時から午後9時までに緩和するものの、営業時間の短縮要請は継続します。協力金は1日当たり4万円とします。

また、
▽イベントの制限についても要請を継続し、収容の上限を5000人もしくは定員の50%以内のいずれか多いほうにしたうえで、開催時間は午後9時までとするよう求めます。

このほか、
▽感染状況を踏まえて来月以降の取り組みについて改めて協議していくことや、
▽国に対して財政的な支援などを要望していくことを確認しました。

知事の受け止めは?

東京都 小池知事「現状は依然厳しい」戦略的に検査実施の方針

東京都の小池知事は臨時の記者会見を開き、現状は依然として厳しく感染の再拡大を防ぎたいとして、拡大の端緒を確実に捉えるため区市町村と連携して戦略的に検査を実施する方針を示しました。

この中で小池知事は「東京都の現状は依然として厳しい。宣言は解除されるが感染はまだ収まっていないという状況だ。これから段階的緩和期間に入るが、感染を抑えて都民、家族、そして自分自身の命や健康を守るためのリバウンド防止期間だという意識を皆さんと共有したい」と述べました。

そのうえで都内の現状について「医療提供体制は改善しているが国が示すステージ2の水準にはまだ至っていない。この1週間、新規陽性者数は増加に転じており感染状況についても一部がステージ3となっている」と述べました。

そして「この先リバウンド対策をしっかり進めていくが、検査・医療提供体制の強化が極めて重要だ」と述べ、今後、感染拡大の端緒を確実に捉えるためPCR検査などを拡充し、区市町村と連携して戦略的に検査を実施する方針を示しました。

このほか、営業時間の短縮要請に応じない店に改正特別措置法に基づいて全国で初めてとなる命令を出したことについて「法的な裏付けをベースにしながら最も効果的な方法を活用していく以外にない。そういう意味でこれからも法律的な措置を活用しながら最大限、有効な方法を探っていきたい」と述べました。

一方、宣言を解除した政府の判断を支持するかどうかや、さらに延長して欲しかったかどうかなど自身の考えを質問されたのに対し小池知事は「新規の陽性者が増えてきていることには懸念を抱いているが、しっかり国と連携しながらまん延を防止する対策に努めていきたい」と述べ、明言を避けました。

埼玉県 大野知事「病床の確保進むなど大きな成果も」

埼玉県の大野知事は「宣言の期間中に病床の確保が進むなど大きな成果もあり、次の経過措置につなげられる埼玉県になったと思う」と述べました。

政府が宣言を解除することを正式に決めたことを受けて、埼玉県は医師や県の幹部が参加する専門家会議を開き、宣言が解除される22日以降、具体的にどのような対策を行うべきか話し合いました。

会議のあと大野知事は宣言の解除が正式に決まったことについて「現時点で埼玉県から解除をお願いする状況ではないが、この緊急事態宣言の期間中に病床の確保が進むなど大きな成果もあった。次の経過措置につなげられる埼玉県になったと思う」と述べました。

また、埼玉県医師会の金井忠男会長は「緊急事態宣言は一定の効果があったと認識している。ただ最近、陽性者が増加傾向にあることを考えると、これ以上効果があるとは考えられず解除はやむをえないと思う。解除になっても示された制限はしっかり守っていただきたい」と述べ、解除後も引き続き感染対策を徹底するよう呼びかけました。

千葉県 森田知事「適切な判断」

千葉県の森田知事は18日夜、記者会見で「1都3県の状況をしっかりと検証して適切な判断だと思う。千葉県としては病床稼働率は下がったものの、十分に余裕があるところにまではいっていない。宣言は解除されたが自分の行動でリバウンドを起こさないという強い意識を持った行動が大事だ。4月以降も感染状況や医療提供体制を加味しながら考えていく必要があり、段階的に緩和していかないといけない。元気な千葉県を取り戻すために引き続き、協力をお願いしたい」と述べました。

神奈川県 黒岩知事「リバウンド絶対避けるため対策を」

神奈川県は18日夜、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、緊急事態宣言が解除されたあともおおむね1か月を「段階的緩和期間」と定めたうえで、感染拡大防止のための対策を引き続き行っていくことを決めました。

会議では今月22日からおおむね1か月を「段階的緩和期間」と定めたうえで、まずは今月31日まで飲食店に対し営業時間を午後9時まで、酒類の提供は午後8時までとするよう要請することを決めました。

協力した店舗には1日4万円の協力金を支払うということです。

また、県民に対しては生活に必要な場合を除き日中を含め外出自粛を引き続き要請します。

一方、4月1日以降の対応については感染状況や医療提供体制を踏まえて今月中に改めて方針を示すということです。

会議のあと黒岩知事は、再度の感染拡大を防ぐためにも変異ウイルスへの対策が重要だとして、現在行っているサンプリング調査をより幅広く実施し、抽出する割合を国が求めている40%まで引き上げる考えを示しました。

そのうえで黒岩知事は「これから最も気をつけなければならないのはリバウンドだ。リバウンドを絶対避けるため県民の皆さんにはマスク会食や3密を避けるなど、基本的な対策を引き続きお願いしたい」と訴えました。

経済界の反応は…?

●日本商工会議所 三村会頭
日本商工会議所の三村会頭は全国の商工会議所の幹部がオンラインで参加した総会であいさつしました。

この中で、新型コロナウイルスの発生から1年以上が経過した中小企業の経営の現状について「とりわけ飲食、宿泊、交通、イベントなどの業種は極めて厳しい状況に陥っている。事業者の心が折れて倒産や廃業とならないよう、政府は支援策の継続や拡充をはかってほしい」と述べました。

そのうえで緊急事態宣言については「国が果たすべき役割の第1はコロナの感染拡大を制御し、先行きの明るい見通しを国民に示すことだ。緊急事態宣言は国民生活や経済活動に深刻な影響を与えるのでこれで最後にしなければならない」として、今後、感染が再拡大した場合でも経済活動が続けられるよう一般の人へのワクチン接種の早期実施や、医療体制の整備などを政府に求めました。
●「日本旅行」 堀坂明弘社長
「人が動くことで感染が広がらないような対策が重要で「Go Toトラベル」の再開という以前に、皆さんが動きたいという思いをどう具現化していけるか業界として対策を検討したい」

飲食店 解除を歓迎も「心から喜べない、すごく複雑…」

東京の飲食店からは歓迎する一方で感染の再拡大や今後の経営を不安視する声が聞かれました。

JR新橋駅近くの焼き鳥店「山しな」は感染拡大前は午後5時から午後11時半まで営業していましたが、緊急事態宣言を受けて新たにランチメニューを作り午後0時半から午後8時までの営業に切り替えました。
しかし、ランチの利用客は少なく先月の売り上げは感染拡大前の6割程度に落ち込んでいて、本来は送迎会などでかき入れ時となる今月も予約がほとんど入っていないということです。

政府が緊急事態宣言を今月21日の期限で解除することについて、店主の山科昌彦さんは「お店としてはようやく1歩前に進めるという思いもありますが、その反面リバウンドのようなものが生じ感染者数が増えているのが心配で、はたして解除していいのかとも思います。心から喜べない、すごく複雑な感じがします」と話しました。

東京都は緊急事態宣言が解除されたあとも、今月中は飲食店などへの営業時間の短縮要請を午後9時までに緩和したうえで続けることにしています。
店主 山科昌彦さん
「店の経営は厳しい状態が続いていますが1日も早くいつもの生活に戻れるのがいちばんいい。短縮要請には応じようと思いますが、世の中は新しい生活のリズムになっているのでコロナ前の売り上げには戻らないのではないかと不安を感じています」

「屋形船」 売り上げの回復期待も “客足戻るか不安…”

東京の名所を巡る「屋形船」の関係者からは売り上げの回復を期待する一方、客足が戻るか不安視する声も上がっています。

お台場や隅田川など東京の名所を巡る屋形船を運営している東京 品川区の「船清」では去年1月、利用客や従業員が新型コロナウイルスに感染し、およそ3か月半にわたって休業を余儀なくされました。
営業を再開したあとは、感染対策として換気や消毒の徹底それに客席を半分ほどに減らしたうえ、客どうしが向き合わないようテーブルに間仕切りを立てる工夫もしました。

また、去年12月には大型の屋形船1つを改装し船内を9つの半個室に分けて少人数でも利用できるようにしました。

しかし、先月までの1年間の売り上げは例年の1割にも満たず大きく落ち込んでいます。
「船清」おかみ 伊東陽子さん
「宣言解除と言っても不安があります。まだまだ自粛ムードは強く、皆さんの心は花のようには満開になっていないかなと思います。これから大型連休をめざして屋形船の魅力を知ってもらう努力をしていきたい」

宣言で休業や時短… 観光施設 “客を迎え入れたい”

千葉県内の観光施設では感染防止対策に力を入れて客を迎え入れたいという声が聞かれました。
千葉県東部にある銚子市の犬吠埼温泉にあるホテルでは、ことし1月からの緊急事態宣言で宿泊客のキャンセルが相次いで新規の予約がほとんどなくなり、今月上旬まで休業していました。

この間、従業員を自宅待機としていましたが今後は感染防止対策に力を入れて客を迎え入れたいとしています。
梅津佳弘さん(ホテルの総支配人・銚子市旅館ホテル組合長)
「コロナ禍で休業している間はつらかったが今後は感染防止対策に力を入れてリピーターのお客さんを増やしていきたい」
また、千葉県南部にある館山市の観光施設「館山ファミリーパーク」では100万本のポピーの花が現在、満開の見頃を迎えていますが、営業時間を短縮していたこともあり来場者が去年の同じ時期の半数以下に落ち込んでいました。

宣言の解除後は、施設では感染防止対策をとりながら通常の営業時間に戻し、見頃のポピーをことし5月末まで鑑賞できるようにしたいとしています。
長谷川元喜さん(施設の支配人)
「宣言が解除されても感染がなくなるわけではないのでお客さんにはしっかりと対策をとってもらい来てほしいです」