ベルマーク アナログ作業は 変わるのか

ベルマーク アナログ作業は 変わるのか
集めるだけでも一苦労なのに、それを切って、貼って、数えてと…家族を巻き込み大変な思いをした方も多いのではないでしょうか。

ベルマークの基礎情報から、過酷な体験談、ネット売買、最新事情まで、これを読めばあなたもベルマークの達人に!
(ネットワーク報道部 記者 小倉真依 高杉北斗 杉本宙矢)

「アナログすぎる」切って、貼って…

SNS上には、令和の時代にこんなアナログなシステムが…と、作業がしんどいという意見が相次いでいます。
「深夜までひたすらベルマーク切ってのりで貼ってセロテープで止める作業。時代錯誤すぎないか…恐るべしベルマーク」
「朝からベルマーク集計したけどしんどいな…もっと効率的にポイント計上できないの?アナログすぎる」
「平日に大人数が集まってベルマーク集計、それってなんの罰ゲーム?」

過酷な体験 1日作業で228円

ベルマークに苦労した1人、関西に住む三つ子の母、宮瀬とまとさんに体験談を聞くことができました。

PTAの役員を務めていた宮瀬さんは、年3回ベルマークの集計作業に携わることになったそうです。

ある日、30人の役員が学校に集まって集計作業を行いました。

中には仕事を休んできた人もいたそうです。

1点、2点、0.5点… ベルマークを種類や点数ごとに切って、1枚1枚台紙にテープで貼り付けます。

この時の様子をイラストにまとめています。
後日、この日の作業でまとめたベルマークの合計が6850円分だと知らされます。

作業した30人で割ると1日作業して1人当たりわずか228円の成果に衝撃を受けました。

宮瀬さんは人手や時間、作業量に見合ったものではないと感じました。

さらに時間内に終わらなかった分は、自宅に持って帰って作業したそうです。
宮瀬とまとさん
「共働きが増える中でなんだか時代に合っていない気がしました。生活を支える大事な仕事を休んでまで参加して1人当たり228円とは…」

ベルマークの始まり “愛の鐘”鳴り響かせ

そもそもベルマークはどのような仕組みで、何ができるのでしょうか?

始まったのは昭和35年(1960年)でした。当時はまだ必要な備品がそろっていない学校があり、継続的に学校の設備を整えるために生み出されたのがベルマーク運動でした。

新聞社が設立したベルマーク教育助成財団が事業を運営しています。

マークがベルの形をしているのは「国内外の友達に“愛の鐘”を鳴り響かせよう」という助け合いのメッセージを込めているということです。
参加団体として登録された学校(PTA)や公民館単位で集めたベルマークを財団に届けると、1点が1円に換算されて「ベルマーク預金」がたまります。

この「預金」で子どもたちに必要な備品を購入することができるのです。

この資金は、ベルマークを付けた製品を製造販売する「協賛会社」が、回収されたベルマークの点数に応じて財団に支払います。

200万円のピアノも購入できる!

学校(PTA)が購入できるのは、高い物では200万円以上するグランドピアノや、家電製品、文房具などさまざまです。
現在は、全国の小学校の72%にあたる1万4000校余り、中学校の61%にあたる6200校余り、高校の23%にあたる1100校余りがベルマーク運動に参加しています。

公民館など生涯学習施設も参加することができ、いまはおよそ2万7000団体が参加しています。

2019年度には、合計で4億1028万点のベルマークが集まり、買い物に充てられました。
ベルマーク教育助成財団 斎藤健一広報部長
「この運動は地方の学校に勤める教員たちが学校の窮状を訴えたことで始まりました。当時は、実験で使うビーカーやフラスコがなかったり、鉄棒がさびていて使えなかったりした学校もあったようです。こうした教員たちの声を受けて企業に協賛を呼びかけ、学校にも声をかけて今の運動につながっていったんです。ベルマークを集めることで学校に必要な備品をそろえることができるので、60年以上にわたってこの運動が続いています」
さらに、特別支援学校や災害で被災した地域、それに海外の子どもたちの援助にも一部が充てられているということです。

回収やめる学校も 負担大きく…

しかし、負担の大きさからベルマークの回収をやめる学校も出ています。

東京・江東区の豊洲北小学校は、2年前にベルマークの回収をやめました。

PTA会長を務めている浅見純一郎さんは、保護者の中には共働きの家庭が多く負担が大きかったと言います。
豊洲北小学校PTA会長 浅見純一郎さん
「ベルマークを集めたあとに、分類して貼り付ける作業はどうしても手間がかかり、中には有給休暇や半休を取って会社を休んでまで作業する保護者がいるほどでした。一人ひとりの頑張りに支えられていましたが、不満も大きく『ベルマーク活動はなくてもいいのではないか』という議論になりました。子どものためとはいえ労力を考えるとやめようという話になりました」
浅見さんたちは学校とも相談して、最終的にPTAの役員の多数決で廃止を決めました。

その後は、必要な物があれば保護者がお金を出し合って購入することにしています。

このほか首都圏にある別の学校も、少子化で保護者の数も少なくなり、ベルマークの取りまとめを担当する委員に人員を割くことが難しくなったということで去年、廃止を決めました。

ネット売買されている!なぜ?

取材を進めると、フリマアプリでベルマークが売買されていることがわかりました。

出品されていたのは、きれいに切り分けられた数多くのベルマーク。

企業の種類ごとに小袋に分けられた物や、台紙に貼られて集計されている物もあります。

確認できただけでも100点以上が出品されていました。
値段は点数にもよりますが、安い物で300円。

高い物で3500点分が3000円で出品されていて、これはすでに買い手がついていました。

誰がどのような目的で買っているのか?ネット上にはこんな意見もありました。
「学校から、種類ごとに分け、さらに点数を数えて提出するように求められている。そんな手間をかけるくらいだったらお金を払ってでも解決したい」
こうした売買は法的には禁止されている訳ではありません。

しかしベルマークを運営する財団は、活動の趣旨に反するとしてアプリ運営会社に売買をやめるよう申し入れました。

その後も売買は続いているため3年前に「売買しないようにする」とした独自の規定を設け、売り買いをしないよう呼びかけています。

貼らなくてもいいんです

丸まったり、風で飛んだりと、細かな作業が大変だというベルマーク。

中でも、台紙に貼る作業は目がチカチカして腰も痛くなると特に敬遠され気味です。

実は、集めたベルマークは台紙に貼らなくてもいいんです。

これを知っていれば作業の大幅な軽減につながるかも知れません。

運営する財団は、切った現物を種類ごとに分けて袋に入れ、点数と枚数が分かるようにして送ってもらえれば問題ないとしています。

ただ「貼った方が分かりやすい」という場合は、台紙に貼ってもかまわないということです。

貼らない学校はどうしている?

佐賀市にある高木瀬小学校も、保護者の負担を減らすためベルマークを台紙に貼っていません。

高木瀬小学校の取り組みはこうです。
(1)牛乳パックで種類ごとに分別して収集

(2)集まったベルマークの点数を数える

(3)袋に入れて送る
これによって、ベルマークを台紙に1枚1枚のりやテープで貼り付ける作業を省くことができ、保護者が一斉に集まることもなくなりました。

集計も独自に作った表計算ソフトで行い、時間を大幅に短縮できたということです。
高木瀬小学校PTA 武藤千亜紀さん
「以前は、保護者が月1回学校に集合してベルマークを『宿題』として自宅に持ち帰り、1枚1枚テープで貼り、それをまた回収して点数を集計してという作業をしていました。紛失してしまうトラブルもありました。作業方法を効率化したことで『活動が継続できる』という声をかけてもらったので改善したかいがありました」

「強制しません」無理なく続ける学校も

無理のない範囲で続けようとする学校もあります。

東京・世田谷区の城山小学校のPTAは、作業する人が集まらなければベルマークを翌年度に持ち越して、できる範囲でベルマーク運動を続ける方針を打ち出しました。

保護者や子どもたちに強制参加させないことにしています。

自主性を尊重することで、ベルマークを集計する専属の委員を設けることをやめました。

さらに、保護者の負担を少しでも減らそうと、去年からオンラインの連絡ツールを導入しました。

オンライン会議も導入し、学校に出てこなくても打ち合わせや作業ができるよう効率化を図っています。
城山小学校PTA 戸崎啓一会長
「PTAはあくまでボランティアの活動なので、無理にやってもらうのはおかしいと思いました。連絡ツールを使って作業したい人を募集して、自主的に集まってくれた人だけで無理せずできる範囲でベルマーク運動を続けています」
今年度は新型コロナ対策として密になりやすい集計作業は行わず、集めたベルマークは来年度に持ち越すことを決めたということです。

効率化が最大の課題 自動読み取り化できるか?

集計作業が「大変だ」という声は運営する財団にも届いていて、こうした作業のデジタル化を目指す取り組みが行われています。

かつて、ベルマークをQRコードにして管理する案も検討されましたが、技術的に難しいことがわかり頓挫しました。
いまは、ベルマークを自動で読み取って集計できる仕組みの研究が進められ、デジタル化の実現が期待されています。
これには角度によって光が当たってしまったり、ベルマークごとにフォントが異なっていたりして正確に読み取ることが難しいといった、克服しなければならない課題があり、試行錯誤が続いています。

ネットショッピングで “愛の鐘”を

ベルマークをすべてデジタル化してWEB上で管理する取り組みも行われています。

ネットショッピングを通じてベルマークを貯められる仕組み、その名も「ウェブベルマーク」です。

10年前の東日本大震災で被災した学校を支援しようと始まりました。

その仕組みはこうです。
(1)ウェブベルマークのサイトに氏名やメールアドレスを登録

(2)サイトを経由してオンラインショップで商品を購入


(3)購入金額や回数に応じてベルマーク点数が付与


(4)自分で指定した学校にベルマーク点数が加算
企業にとっては、このサイトに掲載されることで商品の広告につながるメリットがあるのです。
企業によって異なりますが、例えば参加している「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」では、購入金額の0.4%程度がベルマークの点数として学校に自動的に加算されます。

現在、大手通販サイトや旅行サイト、オフィス用品やふるさと納税の運営サイトなど100社以上が参加しています。
ウェブベルマーク協会 今宿裕昭常務理事
「ウェブベルマークは、貼り付けや仕分けの作業の負担もなく、ネットショッピングのついでに誰でも手軽に好きな学校を支援することができます。ベルマークの現物を送ってもらう手間も無いので、学校への支援も速やかに行うことができます」
ベルマーク運動を行っている全国すべての学校が支援の対象として指定でき、指定しない場合には災害で被災した学校のために使われるということです。

子どもたちのためにと、その作業に苦労した人も多いベルマーク。

デジタル化を取り入れて、いかに作業の軽減を図れるかが今後も継続できるかの鍵になっています。