ワクチン接種 「接種する側の手は下ろして」医師の学会が修正

新型コロナウイルスのワクチンの接種方法について内科医などで作る学会ではこれまで、「接種する側の手を腰に当てる」とする解説動画を公開していましたが、この方法では腕の神経を傷つけるおそれがあるとして、腕を下ろして接種するよう動画を修正したことが分かりました。

この動画は内科医や小児科医などで作る「日本プライマリ・ケア連合学会」が、新型コロナウイルスのワクチンの接種方法を医療従事者向けに解説するため、2月、インターネット上で公開したものです。

学会によりますと、動画では注射をする際に「接種する側の手を腰に当てる」などと解説していましたが、動画を見た医師から、この方法では腕の神経を傷つけるおそれがあるのではという指摘があったということです。

学会が調査したところ、手を腰に当てると腕をひねった状態になり、針を刺す部分が腕の後ろ側にある神経に近づいてしまうことが分かったということです。

このため学会では、新型コロナウイルスのワクチンで行われる「筋肉注射」では、腕を下ろした状態で接種するほう安全だとして、動画を撮影し直し、改めて公開しました。

学会のワクチンチームの中山久仁子医師は「以前から日本では教科書などで、筋肉注射は腰に手を当てると書かれていたが、検討の結果、より安全な方法を採用した。新しく公開した動画を確認して接種を進めてほしい」と話しています。

指摘した医師は

「日本プライマリ・ケア連合学会」が公開した動画に対し、腕の神経を傷つけるおそれがあると指摘した、奈良県立医科大学の仲西康顕医師はNHKの取材に応じ「筋肉注射によって神経が傷ついた患者を多く見てきたので、学会が当初、紹介していた方法では神経や関節の傷害を完全に避けることは難しいのではないかと判断した」と指摘した経緯を説明しました。

仲西医師は、研修医などが安全にワクチン接種を行えるよう、独自のパンフレットを作成し学内で研修を実施してきました。

今回、学会が撮影し直した動画には、自身が作成したパンフレットの内容も盛り込まれたということです。

仲西医師は「こちらの意見に真摯(しんし)に耳を傾けて、実践的でわかりやすい動画を撮影・編集していただき、大変ありがたく感じている。われわれが推奨する方法を1つのたたき台として、安全で合併症のリスクが少ない筋肉注射が広まってほしい」と話していました。