1000年後の命を守る

1000年後の命を守る
東日本大震災から10年。被災地には多くの石碑が建てられてました。「災害の教訓をどう伝えていくか」。石碑に込められた思いをたどります。

問題に挑戦!

問題
2019年3月に国土地理院は、2006年以来13年ぶりに地図記号の制定を発表しました。過去に発生した○○に関わることがらが記載されている石碑などを地図上に表記することで、身近な防災意識を高めることを目的としています。空欄○○にあてはまる語句を漢字4字で答えなさい。

(浦和明の星女子中学校2020年)
新しい地図記号の名称、わかりますか。
答えは「自然災害」、新しい地図記号は「自然災害伝承碑」です。
自然災害伝承碑は全国各地にあり、水害や津波、噴火などさまざまな災害を伝えています。
しかし風化が進み、存在が知られていないなど、十分に活用されないケースが目立っています。
そこで国土地理院が新たに地図記号にしたというわけなんです。

生徒の思いからできた石碑

震災で死者・行方不明者が800人以上にのぼった宮城県女川町。津波で甚大な被害が出た町では、震災の後、多くの石碑が建てられました。実は、当時被災した子どもたちが中心となって作ったものです。
どんな思いから作られたのでしょうか。
2013年、女川中学校に新しい石碑が完成した際、活動のリーダーとして鈴木智博さんがあいさつしました。
「もし大きな地震が来たら、この石碑よりも上に逃げてください」
「1000年後の命を守りたい」

活動の中心を担ったのは、生徒たちでした。
大学3年生となった鈴木さん。なぜあのとき、中学生だった自分たちで石碑を作ろうと思ったのでしょうか。
鈴木さん
「がれきが多い町を見ながら授業をしていて、その授業の中で自分たちが後世のために震災を伝える上で何かできないかと話し合いました」

生かされなかった教訓

実は東北各地には、震災前から過去の災害について伝える石碑がありました。
女川町にもありましたが、十分に生かされていなかったと鈴木さんはいいます。
鈴木さん
「町の造成などの関係で、高い所にあった津波の石碑が、低い所に移動させられてしまったり、あまり目立たない所に行ってしまったせいで、そのときの教訓が生かされなかったというのがありました」
鈴木さんは、震災の前に地元に石碑があることは知っていたのでしょうか。
鈴木さん
「そこに石碑があるというのは知っていたけど、どういう意味があるのか実は全く知りませんでした」

自ら作った自然災害伝承碑

鈴木さんたちは町の沿岸部の21の集落すべてに石碑を建てることを目指し、現在18基が完成しました。避難に役立つよう、津波が到達した場所に石碑を設置。そして「石碑を絶対に移動させないでください」という文も刻みました。さらに石碑を活用し、地元の人たちと避難訓練も実施。
「石碑を作って終わり」ではなく命を守るための活動に取り組みました。

震災の教訓を伝え続ける

高校生になった鈴木さんたちは、石碑を建てる活動を通じて、「震災の教訓をどう伝えていくか」、より深く考えるようになったといいます。
そこで仲間たちと取り組んだのが「女川いのちの教科書」づくりです。自分たちの被災体験や、それを基にした命を守る対策の提言を具体的にまとめました。震災を知らない世代にも防災について考えてほしいと作りました。
この中で、命を守るために最も大事だとしたのは「住民の絆」でした。
鈴木さん
「日頃から近所とか近くにいる人の絆を深めておけば、何かあったときに“この人が言うなら逃げなきゃいけない”とか、“この人が言うことは聞いておこう”と巻き込んで避難ができて、少しでも被害を減らせるんじゃないかと考えました」
人を動かすのは、やっぱり顔を知っている人の言葉やそのつながりかもしれませんね。

「あの日」から、10年。
鈴木さんはいまも仲間たちと石碑の整備や震災の教訓を伝える活動を続けています。
鈴木さん
「10年というのは1000年を目標にしているので、まだ1%にしかなっていません。自分の家が流されたり、家族が犠牲になったり、いろんな悲しい思いをした人がたくさんいて、そういう思いをしてほしくないということで、自分たちは今まで活動を続けてきたので、これからも活動を続けたいし、いずれは自分の下の世代に引き継いでいって、それがどんどんつながっていって気付いたら1000年だったというのが、うれしいのかなと思います」
鈴木さんたち生徒は、石碑作りの費用を確保するため町の内外で募金活動を行い、修学旅行先の東京でも企業などに協力を求めたそうです。
石碑は2021年内に最後の21基目が完成する予定です。
全国にある「自然災害伝承碑」には、先人たちの悲しみや子孫に伝えたい教訓が刻まれています。
改めて自分の地元にどんな伝承碑があるかを調べ、その声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
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