UAE 新型コロナ ワクチン接種進む 半ば強制的に促す対策も

各国が新型コロナウイルスのワクチン接種を急ぐ中、中東のUAE=アラブ首長国連邦ではすでに、人口の35%が少なくとも1回の接種を終え、世界的にも早いペースでワクチンの接種が進んでいます。接客業などにあたる人に対して優先的な接種を行うと同時に、接種を強く促す対策も始まり、普及を急いでいます。

人口およそ980万人のUAE=アラブ首長国連邦では、去年12月から、中国の製薬大手「シノファーム」や、アメリカの製薬大手「ファイザー」が開発したワクチンの接種を始め、16日時点で、650万回余りの接種が行われました。

イギリス・オックスフォード大学の研究者などが各国の接種状況をまとめた「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと先月23日の時点ですでに人口の35.2%が少なくとも1回は接種を終えたということで、イスラエルとイギリスに次いで世界で3番目に早いペースとなっています。

UAEでは、優先的な接種の対象者に、医療従事者や高齢者などに加え、接客業を担うエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちも加えています。

政府系のエミレーツ航空は、地上スタッフなど8万人をエッセンシャルワーカーと位置づけ接種を進めるなど、政府と関わりが深い大手企業を中心に、大規模な接種が進められています。

また、ワクチンを接種していない人に対しては、PCR検査を定期的に受けることを義務づけることで、接種を強く促しています。

このうち、北部のシャルジャでは先月から、飲食店や食料品店の従業員でワクチンを接種していない人については、2週間に1度、PCR検査を受けることを義務づけています。

同様の対策は公務員も対象となり、ワクチンを接種していない人についてはやはり、定期的な検査が義務づけられ、接種を促す対策となっています。

UAEは、中東の経済ハブとして、外国からのビジネス客や観光客を頼りに発展し、ことし10月には、国際博覧会「ドバイ万博」も開かれる予定で、感染の収束に向けた取り組みを進めています。

大手企業や大学で大規模なワクチン接種

外国人居住者が人口のほとんどを占める、UAE=アラブ首長国連邦では、政府系の大手企業や、大学などで、国籍を問わない形で大規模なワクチン接種が進められペースの加速につながっています。

このうち、政府系の大手航空会社エミレーツ航空は、関連企業と合わせた社員およそ8万人を、優先的な接種の対象とするエッセンシャルワーカーに位置づけ、ドバイ国際空港内に設けた会場で接種を進めています。

会場には、業務の合間をぬって地上スタッフや整備士などが次々と訪れ中国の製薬会社が開発したワクチンの接種を受けていました。

接種を受けたフィリピン人の男性は「都市封鎖や国際線の停止はもうこりごりで、客や家族の安全のために接種を決めました」と話していました。

政府系の大手企業では、通信会社や国営の石油会社も従業員に、ワクチン接種を受けてもらうと発表し、企業ごとに大規模な接種が進められています。

また接種は大学でも行われ、UAE北部にある私立のアジュマン大学では、7日、キャンパス内に会場が設けられました。

この大学ではすでに、教職員の7割が接種を済ませ、現在は学生に対しても接種を受けるよう強く求めているということです。

大学では、卒業生も無料で接種を受けられるということで、大勢の人が訪れていました。

接種に訪れた、建築学を教えるアルジェリア人の男性教授は「建築学の場合、オンライン学習では教えるにも学ぶにも限界がある。少しでも多くの人がワクチンを接種して通常の形で授業を再開させたい」と話していました。

ワクチン接種の会場の担当者、ヒシャーム・ムタナウィさんは「大学構内の施設はアクセスもよいので、多くの人に来てもらい、100%の接種率を目指したい」と話していました。

半ば強制的に接種促す対策も

UAE=アラブ首長国連邦では、ワクチンの接種を受けていない人たちに定期的なPCR検査を義務づける動きも一部で始まり、半ば強制的な形で接種を促す対策を進めています。

こうした対策はUAEの複数の地域で始まり、このうち北部のシャルジャでは先月末、飲食店や食材を扱う店舗で働く従業員については、ワクチンを接種していない場合、2週間に一度、新型コロナウイルスのPCR検査を義務づけると発表しました。

こうした動きに対して市内の飲食店からは、ワクチンを接種する以外に選択肢はないという声があがっています。

このうち、市内のパレスチナ料理店は、店長と従業員の5人で交代しながら勤務にあたっていますが、検査を受けると結果が判明するまで自宅での待機が求められるため、業務を続けることが難しくなるということです。

店のオーナーで、パレスチナ人のアハマド・ムゼイニさんは、「定期的な検査は経営には大きな負担で、ワクチン接種以外に選択肢はありません。私たちのような外国人はUAEでの仕事を守るため、政府が推奨することを拒むことはできないので、従業員にはワクチンを受けてもらいます」と話していました。