耳かき、しちゃダメなの?

耳かき、しちゃダメなの?
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耳が、かゆい。

そんな時、ふと耳かきに手を伸ばす人、多いのではないでしょうか。
くすぐったいような、でも、なんだかツボに当たっているような、あの快感。いいですよね。
…でも、それ、ちょっと気をつけた方がいいかもしれないんです。

この記事で分かること
・耳あかの知られざる正体
・耳掃除が「いらない」理由
・正しい耳掃除の方法って?
 動画でも解説しています

(ネットワーク報道部 記者 玉木香代子 秋元宏美 國仲真一郎)

「耳かき」やる? やらない?

誰しもやったことがある、耳かき。
先日、SNSでは「やらなくていい」「やったほうがいい」という議論が巻き起こっていました。
(ツイッター上の声)
「育児書にも耳かきは穴付近だけでいいと書いてあったから子供の耳かきはしないでいたら、中でガチガチに固まって点耳薬で耳垢を溶かす羽目になった」

「うちの子もやらない方がいいと聞いて控えてたら、聴こえにくいって言われて見たら奥に大きな塊が」

「上の子はほぼ耳かきした事ないですが、学校の耳鼻科検診で何も言われません。でも下の子は耳垢で閉塞してると通知がきます」
見てみると、子育て中、あるいは高齢者と接する機会が多いとみられる人の投稿が多いようです。
「カチカチの耳垢をピンセットで引っ張り出したら、サザエの壷焼きみたいな、耳の穴の形そのままのモノが出てきたのが年に何回かありました」
こんな投稿をしていた、かつて介護施設に勤めていた介護士の男性に話を聞くことができました。
施設を利用する高齢者に週に1回程度、耳掃除をしていたそうで、投稿した「カチカチの耳垢」に出会うことも少なくなかったといいます。
投稿者の男性
「耳掃除のときに目視で確認できたり、食事の介助をしていたりした時に見つけたことがありました。利用者から『片耳だけ聞こえが悪い』と言われて調べたら耳あかが詰まっていた…ってこともありました」
いったんこうした耳あかが見つかってしまうと、耳かきでは滑って取り出せない、耳の穴がふさがれて隙間に器具が入らない、取り除こうにも時間がかかりすぎる…ということで、高齢者の負担も合わせて大変な作業だったそうです。
投稿者の男性
「私が対応したケースにかぎりますが、認知症の進行によってご自身でケアできない方や耳の変調を訴える事ができない方が多かったように思います。ご自分で耳かきを行わない以上、スタッフか家族がチェックし、その都度ケアするしかないから…やはりいくらかは耳かきを行わないと、と思います」

耳あか、その知られざる正体は…

人々を悩ませる耳あか。
取材を進めていた私たちは、ある疑問にぶつかりました。

…そもそも耳あかっていったい何なんだっけ?

すると「耳の掃除は本当に必要なの?」というタイトルでYouTubeに投稿された動画を見つけました。
動画を見てみると、耳あかは実は鼓膜だったというんです。
鼓膜が再生するのに伴って皮膚に変化して外側へ進み、最終的に剥がれたものだと説明しています。
こちらは鼓膜に色をつけて、時間がたつにつれてどうなったか確認する実験の映像。4週間たつと、鼓膜だった部分が外側へ移動しているのが分かります。

これが私たちが「耳あか」と呼んでいるものの正体なんです。

で、結局していいの? ダメなの?

さて、最初の疑問「耳かき、しちゃダメなの?」に戻りましょう。
日本耳鼻咽喉科学会の見解を確認することにしました。

ホームページのQ&Aコーナーに直球の質問を発見。
Q 耳の掃除はしないほうがいいのですか?
A 「耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為であることを認識してください」
医学的に不必要!?
いったいどういうことなんでしょうか。

学会を代表して、荏原病院耳鼻咽喉科医長の木村百合香医師が答えてくれました。

医師を直撃!

Q 耳掃除はなぜ不必要なんでしょうか?
A 耳あかは耳の奥で出される皮脂などの分泌物のほか、鼓膜の表面が古くなって剥がれ落ちたりしたものですが、皮膚の再生に伴って耳あかを外側に排泄するため多少であれば家庭で無理に取る必要はまったくありません。
なるほど、先ほどの動画で説明していたとおり、わざわざ耳かきをしなくても通常は自然と耳あかが外へ出る仕組みだということのようです。

ただ、ここで疑問が。
Q しばらく耳掃除をしないでいると、耳がかゆくなって掃除をしたくなってしまいます。
A かくことにより一時的な爽快感が得られるので何度もしたくなりますが、掃除することで皮膚のバリアが壊れてしまい、またかゆくなるという悪循環に陥ります。耳の中の皮膚はとても薄く、アレルギーや細菌、カビに感染するとかゆくなります。
ツイッター上に寄せられていた耳掃除にまつわるトラブルや疑問についても聞いてみました。
Q 耳あかで穴が詰まってしまうケースはどういうことでしょう?
A 耳そうじの際に耳あかを奥へ押しやってしまい、つまって耳栓のような状態になることがあります。外耳道真菌症になるとカビの塊が耳の中を塞いでしまうことがあります。耳の聞こえが悪くなった場合などは、耳鼻咽喉科医に診てもらうようにしてください。

Q 耳あかが乾いたタイプか、湿ったタイプかで違いはあるのでしょうか?
A 湿ったタイプの耳垢の方が耳垢栓塞になりやすいという説があります。湿ったタイプの方は時々、近くの耳鼻咽喉科でお手入れをしてもらうのがよいでしょう。

Q 年代や性別による違いはあるのでしょうか。
A 耳の穴が狭く皮脂の分泌が盛んな小児や、耳あかを排出する機能が落ちる高齢者は量が増えることがあります。特に小児の場合は、無理をして耳あかをかき出そうとすると暴れて外耳道を傷つけたり、鼓膜や鼓膜より奥の部分を損傷するおそれがあります。
耳あかのお手入れには必ず耳鼻咽喉科医に相談してください。

自分の耳を知るためにも

そうは言われても、耳掃除だけのために耳鼻科に行ってもいいのか…ちょっとためらってしまいます。

実際に医師に話を聞きました。
教えてくれたのは日本耳鼻咽喉科学会の認定専門医で、耳掃除のトラブルに詳しい、慶友銀座クリニックの大場俊彦院長です。
大場院長によると、耳掃除で耳をかきすぎて外耳炎になったという患者や、耳掃除で耳あかが詰まってしまい耳の聞こえが悪くなったと訴える人が後を絶たないそうです。

大場先生、耳掃除のためだけに耳鼻科を受診してもいいんですか?
大場院長
「もちろん大丈夫です。耳かきは意外と難しく、外耳道のカーブの形や耳あかのタイプによって耳あかがたまりやすい人もいます。まずは自分の耳について耳鼻科で知ることも大切です」

耳掃除“達人” その極意とは?

とはいえ、毎回病院に行くのも…という人も多いのでは。
約50年にわたって耳かきやエステに携わっている「日本イヤーエステ協会」の代表、高橋光さんに聞いてみました。
太さの異なる柔らかい竹でできた10本の手作り耳かきを、穴の形によって使い分けるという高橋さん。

耳の中は奥に行くにつれて柔らかくなっていて、こびりついた耳あかを無理に取ろうとすると逆に皮膚を傷つけてしまうおそれがあるそうです。
なので外側に近い場所は大きな耳かきで、中は極細のものを使って慎重に優しく、目で見てとれる範囲ですくってとるようにしているそうです。

耳かきの際に耳の外側を指などで押してマッサージするととても気持ちよく、肩凝りや首の痛みにも効果があると教えてくれました。
高橋さん
「耳には多数のツボがあり、片方だけでも200近いと言われています。耳を刺激することで全身が心地よく感じることがある一方、数ミリ奥に物を入れただけで痛みを伴う危険な場所でもあります。耳かきをするときには呼吸を止めるくらい、慎重に、気をつかってやっています」
呼吸を止める…!
耳かきの“達人”でも、ここまで慎重にやっているんですね。

“達人”ではない私たち 家庭での耳掃除は?

では家庭で耳掃除をしたいときはどうしたらいいんでしょうか。

まず、気になるのが道具。
竹や金属の耳かき、綿棒、ピンセット…それぞれお気に入りがあると思います。
中でも手軽な綿棒は、白や黒など色だけでなく太さや形などバリエーションが豊かです。

パッケージをよく見てみると…
「鼓膜や粘膜を傷つけるおそれがありますので、耳または鼻の奥まで入れないでください」

正直、今まで詳しく見たことがありませんでしたが、奥まで入れてはダメだとちゃんと書いてありました。

綿棒などを製造・販売する企業で作る「一般社団法人日本衛生材料工業連合会」では、商品のパッケージにこうした文言を記載する自主的なルールを設けているそうです。
そして、実際にどんな方法で耳掃除をすればいいのか?
再び、クリニックの大場俊彦院長に聞きました。
綿棒の先端部分を耳の穴の入り口から1センチほど差し込みます。

皮膚をこすりすぎないよう、優しく触れるくらいの強さで、入り口付近を3回ほどぐるっとなぞります。

頻度は月に1回程度で十分だということです。
こんな点にも気を付けるとよいと教えてくれました。
・オイルなど染み込ませて使わない
 → 耳あかが排出されにくくなってしまうおそれ
   使う場合は医師の判断を求める
・綿棒を使う際には片耳ごとに新しいものを使用する
・人とぶつからないよう周囲に注意
 → 鼓膜など耳の奥を傷つけてしまうおそれ
一生つきあう耳。長く、大切にしていきたいですね。