柏崎刈羽原発 長期間テロ対策に不備 「最も深刻レベル」規制委

新潟県にある東京電力柏崎刈羽原子力発電所でテロ対策などとして不正侵入を防止する検知設備が去年3月以降、複数壊れていた可能性があることが原子力規制委員会の調べでわかりました。規制委員会は長期間、不正な侵入を許すおそれがある状態になっていたとして核物質防護に関わる4段階の評価のうち最も深刻なレベルに当たるとの暫定評価を明らかにしました。

原子力規制委員会はことし1月、柏崎刈羽原発で作業員が誤って侵入者を検知する設備を損傷させたと東京電力から報告を受け、現地で検査を行ってきました。

きょうは非公開で開かれた会合で、検査の結果が報告され、作業員が誤って壊した検知設備とは別に、ほかの複数の検知設備が去年3月以降壊れていた可能性があることがわかったということです。

規制委員会によりますと東京電力の警備担当の社員はその後、とられた代替措置に実効性がないことを認識しながら改善しなかったということです。

規制委員会は長期間不正な侵入を許すおそれがある状態になっていたとして核物質防護に関わる4段階の評価のうち最も深刻なレベルに当たるとの暫定評価を明らかにしました。

規制委員会は今後、評価を確定し、東京電力の処分などを検討することにしていますが、このまま評価が変わらなければ、去年、この評価手法を導入して以降、最も深刻なレベルとされるのは初めてとなります。

東京電力は柏崎刈羽原発の再稼働を目指していますが、去年9月、社員が他の社員のIDカードを使って中央制御室に不正に入室するなど問題が相次いでいて東京電力の管理体制が問われています。

規制委 更田委員長「極めて深刻 検査は1年以上かかるのでは」

原子力規制委員会の更田豊志委員長は、臨時の会見を開き「暫定評価ではあるが、柏崎刈羽原発が核物質防護において極めて深刻な状態にあることを示している。今後、評価の確定を待ち、検査などを通じて、さらにしっかりとした把握に努めていく」と述べました。

また、更田委員長は、今回の事案を受けた検査について「極めて早く進んだとしても、1年以上かかるのではないか」と述べたうえで「規制当局として、再稼働について言及する立場ではないが、当然、検査に長期間を要する中で、柏崎刈羽原発が運転に向けた次のステップに進むことはないと考えている」とし、再稼働の見通しが
さらに不透明になる可能性を示唆しました。

そして、中央制御室への不正入室など、東京電力で問題が相次いでいることをどう思うか問われたのに対して「ほかの電力事業者と比べて東京電力に著しい特徴があるのか問い直している。原子力規制委員会の発足以前、データの改ざんや隠蔽は他社に比べて東京電力が際立っているところがあった。東京電力は、福島第一原発という非常に大きなことがあって本当に芯から反省し、教訓を受け止めて生まれ変わったと主張し、私たちもそのプロセスを見てきたが、今回の一連の問題を受けて東京電力の核物質防護や安全文化について改めて考え直すだろう」と述べました。

東京電力「深くおわび」

この問題について東京電力は16日夜、会見の代わりに都内の原子力規制庁で記者に状況の説明を行いました。

この中で東京電力は、テロ対策に関わる設備なため詳細は明かせないとしたうえで、先月の時点で、合わせて16の検知設備で故障を把握し、会社としては全て代替措置を取った認識だったと説明しました。

これについて検査を実施した原子力規制委員会からは10の検知設備で代替措置などが不十分だとの指摘を受けたということです。

東京電力では故障した設備の修理を行い今月5日までにすべて復旧したとしています。

また、これまでに不正侵入は確認されていないということです。

今回の問題について東京電力は、大変重く受け止めているとしたうえで「核セキュリティの確保については、当社にとって重大な責務であるなか柏崎刈羽原発においては、不正ID使用の件に続き、核物質防護事案が発生しており、地元の皆さまをはじめ、社会の皆さまに、大変なご不安やご心配をおかけしておりますことを、改めて深くおわび申し上げます」とのコメントを出しました。

梶山経産相「遺憾 再稼働できる段階にない」

梶山経済産業大臣は16日夜、経済産業省で記者団の取材に応じ、「事案を深刻に受け止めている。大変、遺憾で残念だ」と述べました。

そのうえで「経済産業省としても資源エネルギー庁長官から東京電力の小早川社長に対して、経営陣を含む組織全体で職員の意識など根本原因を究明し、抜本的な対策を講じるよう厳しく指導した。強い危機感と緊張感を持って対応にあたってほしい。経済産業省としてしっかり指導、監督していきたい」と述べました。

また、今後の柏崎刈羽原発の再稼働について、梶山大臣は「原子力規制委員会から安全確保に関する組織的な管理機能の劣化を厳しく問われている状況だ。このままでは再稼働できる段階にないと考えている。なぜこのような事案が生じたのか、会社としてどのような問題があるのか。いったん立ち止まって徹底的に原因究明し、根本的な対策を講じて原子力規制委員会の検査に対応することが重要だ」と述べました。

花角知事「東電の能力にますます疑問符」

新潟県の花角知事は県庁で記者団に対し「中央制御室への不正入室問題よりもさらに深刻で、大変、重大な事態だ。どうしてそういう事態が起きるのか。東京電力の管理能力と、原発の運転を的確に遂行する技術的能力にますます疑問符がつく。東京電力は徹底的に事実関係を調べ、原因を究明すべきで、原子力規制委員会も厳しく確認すべきだ」と述べました。

そのうえで花角知事は東京電力に原発を稼働させる適格性があるかどうか改めて評価するよう、原子力規制委員会に求める考えを明らかにしました。

柏崎市長「喪失感を覚える」

柏崎刈羽原発の再稼働に前向きな姿勢を示していた新潟県柏崎市の桜井市長は「非常に衝撃的だ。規制委員会の検査が今後少なくとも1年かかる可能性があるということは、今までの積み重ね、時間の経過がリセットされてしまい、喪失感を覚える。怒りを生み出すエネルギーが出てこないというか力を抜かれてしまった」と述べました。

立憲 枝野代表「国会審議で最重要案件に」

立憲民主党の枝野代表は、記者団に対し「遺憾を通り越して怒りでいっぱいだ。原発事故の教訓と反省はどこへいったのか。東京電力にはとても原発を運営する資格はないと言わざるをえない。事業の所管官庁としての経済産業省、資源エネルギー庁の責任は問われないといけないし、東京電力の経営陣の責任も当然問われる。命に関わりかねない問題で、国会審議では最重要案件に位置づける」と述べました。

4段階の評価とは

原子力発電所で不正や故障など問題が起きた場合、原子力規制委員会は原発の安全性や核物質防護に関わるリスクを深刻さの度合いに応じて4段階で評価する手法を去年、検査体制の見直しにあわせて導入しました。

4段階のどの段階に当てはまるかという暫定の結果を示したあと、電力事業者から意見を聞いたうえで最終的な評価を確定します。

その評価に応じて、規制委員会は電力事業者に対して再発防止に関する命令や指導を行います。

4段階で▽最も低いものは通常どおりの監視を継続するレベルとしています。

▽次に下から2番目の評価は、事業者に改善の措置を指導するレベル。

▽3番目はより厳しい対応として指導ではなく、改善措置の命令を出すことなどが検討されます。

そして、4段階で最も深刻な評価は、▽原発の運転停止を命じることも含めた極めて厳しい対応をとるレベルとしています。

今回は暫定評価で、このもっとも深刻なケースとされ、今後、この評価が確定した場合、東京電力は規制委員会に対して原因の説明と再発防止策を示すことになります。

そして、それを踏まえて規制委員会は改めて検査を実施します。

その検査に合格しなければ、東京電力が目指している柏崎刈羽原発7号機の再稼働はできないことになります。