“テレワークが認められず” 派遣社員から相談相次ぐ 裁判にも

職場の感染対策として推奨され、企業に広がった「テレワーク」。しかし、派遣社員から「テレワークをさせてもらえない」という相談が労働組合に相次ぎ、中には労働トラブルに発展するケースも出ています。

東京にある労働組合「総合サポートユニオン」には、2度目の緊急事態宣言が出された1月7日からおよそ1か月間で派遣社員からテレワークに関する相談が33件、寄せられたということです。

「派遣だからという理由でテレワークが認められず、無給の休みにされる」とか「派遣は時短にもならない。差別を感じる」などと、派遣社員がテレワークをさせてもらえないという相談が多いということです。

相談を受けている総合サポートユニオンの池田一慶さんは「企業はまず直接雇用の社員を守ろうとするため、派遣社員は後回しになっていると感じる」と話しています。

テレワークをめぐって派遣社員と、派遣先の会社との間で、トラブルになり、裁判にまで発展するケースが出ています。

都内の40代の女性は、去年春の緊急事態宣言の際、派遣先の会社にテレワークを希望しましたが、同じ部署の派遣社員3人は認められなかったということです。

女性は「テレワークを早くしたいと何度もお願いした。まさか感染対策まで差別されるとは思わず、すごく怖かったし、納得できなかった」と話しています。

一方、派遣先の会社の役員はNHKの取材に対し、「派遣社員であることを理由にテレワークをさせなかったわけではなく、情報漏えいへの対策が難しいことや、多額のコストがかかることなど課題が多く、当時は対応できなかった。今月から一部の派遣社員もテレワークをできるようにした」と説明しています。

派遣社員だった女性はトラブルの末に雇い止めされたなどとして、3月、東京地方裁判所に訴えを起こしました。

テレワークをめぐるトラブルについて、労働問題に詳しい千葉商科大学の常見陽平准教授は「新型コロナショックで働く現場が混乱した。どこまで出勤を求めるかや、テレワークの際のセキュリティー、それに勤務管理などをどうするか、企業にとっては判断が難しかったのではないか。合理的な理由がない場合は派遣社員と正社員との区別を無くすことが大事だ」と話しています。

厚労省 雇用形態で分けないで

厚生労働省は、正社員や派遣社員といった雇用形態の違いを理由にテレワークの対象者を分けてはいけないとしています。

厚生労働省は、派遣社員もテレワークの対象とするように、派遣会社の団体や経済団体に要請を行っています。

去年12月には厚生労働省が設置した専門家で作る検討会が報告書をまとめ、正社員と比べて非正規雇用で働く人のテレワークの実施率が低いことから、雇用形態の違いだけを理由としてテレワークの対象者を分けないよう、留意する必要があると指摘しています。