フィリピン マニラ 新型コロナ 外出制限が1年に

フィリピンの首都マニラで新型コロナウイルス対策として実施されている外出制限は、15日で1年になります。感染は収まっていないうえ、去年1年間のGDP=国内総生産の伸び率は東南アジア主要国の中で最悪で、ドゥテルテ政権の課題は山積しています。

フィリピンのドゥテルテ大統領が新型コロナウイルス対策として首都マニラでの企業活動の制限や子どもや高齢者の外出を原則として禁止する措置を導入して15日で1年になります。

フィリピン全土で1日に確認される新規の感染者数は、先月末から増加に転じ、14日までの3日間は4500人を超える日が続き、外出制限がとられているにもかかわらず、感染は収まっていません。

その理由として、WHO=世界保健機関の専門家などは、1軒の住宅に大人数で暮らしていることや、保健当局によるクラスター対策が不十分だからだと指摘しています。

さらに、経済の中心、マニラで企業活動の制限を続けたことで、経済は著しく悪化し、去年1年間のGDP=国内総生産の伸び率はマイナス9.5%で、統計を取り始めた1946年以降最大の落ち込み幅となり、東南アジア主要国の中で最悪となりました。

新型コロナウイルス対策と経済対策の両面でドゥテルテ政権の課題は、山積しています。

雇用環境が悪化 仕事失った人たちは…

長引く経済の落ち込みで雇用環境は著しく悪化しています。フィリピン政府が今月8日発表した去年1年間の平均の失業率は10.3%と前の年のほぼ2倍で、現在の方法で統計が取られるようになった2005年以降、最悪となりました。

フィリピン司法省によりますと、仕事を失った人の中には、現金を得ようと子どものわいせつな動画をインターネット上に投稿し、摘発されるケースが相次ぎ、その多くは自分の子どもを撮影し、投稿していたということです。

マニラにある保護施設では、親からの虐待を受けた18歳未満の12人が保護されていますが、このうち3人はこうした性的な虐待を受けたということです。

フィリピン国内で去年1年間にインターネットのプロバイダーやSNSの運営会社から児童のわいせつな動画や写真が投稿されていると通報があったのは129万件で、前年の3倍に増えています。

施設に勤めるユニス・ディパスピルさん(32)は「親の失業に子どもたちの外出禁止が重なり被害が増えている。保護されたばかりの子どもたちは混乱し、心に深く傷を負っており対策が必要だ」と話していました。

教育格差の拡大も懸念

外出制限の導入以降、フィリピンではすべての学校が閉鎖され、対面授業が中止となり、15歳未満の子どもの外出も原則として禁止されています。

児童や生徒は、この1年、学校から配布されたプリントの宿題に取り組んだりオンライン形式での授業を受けたりして自宅での学習を余儀なくされています。

首都マニラに暮らすジョン・バルウェラ君(9)は、マニラ市が貧困層を対象に無料で貸し出しているタブレット端末で配信される教材を使って学習しています。しかし、通信状況が極めて悪いため、教材をダウンロードして入手することが難しいうえ、たとえわからない問題があっても教師に質問することは困難だといいます。

ジョン君は「先生や友達に会って勉強したい」と話していました。

母親のセサルドさんは「子どもは毎日学校に行きたがっています。このオンライン授業は通信状態が悪すぎて勉強になりません」と話していました。

フィリピン教育省によりますと、小学生から高校生までの6割にあたる1440万人がこうしたオンライン授業すら受けることができず、地元メディアからは教育格差の拡大を懸念する声が上がっています。