世界共通のデジタル証明書 日本で実証実験始まる

国境を越えた人々の移動の本格的な再開につなげようと、新型コロナウイルスのPCR検査の結果やワクチンの接種履歴をスマートフォンのアプリで表示する、世界共通のデジタル証明書の開発が進んでいます。このほど、日本でも実証実験が始まりました。

実証実験が始まったのは、世界経済フォーラムなどが開発している「コモンパス」と呼ばれるスマホアプリです。

今月10日、羽田空港の国際線ターミナルに設置されたPCR検査場では、5人が唾液による検査を受けました。

検体は空港近くの検査機関に送られ、およそ2時間後、陰性を知らせる検査結果のデータがそれぞれのスマホに届きました。

このデータをコモンパスのアプリに連携させるとQRコードで結果を表示させることができ、世界共通のデジタル証明書の役割を果たします。

飛行機に搭乗する際などにスマホを読み取り機にかざすことで訪問先の入国条件を満たしていることを証明できる仕組みです。

世界経済フォーラムの藤田卓仙プロジェクト長は「紙の証明書と比べて改ざんされるリスクが低く、持ち運びもしやすい。どうすれば安心した海外渡航を実現できるか、その仕組みをつくる1つのきっかけになる」と話していました。

世界経済フォーラムなどは、ワクチンの接種履歴も表示できるようにして世界各国の航空会社に採用を働きかけていく方針で、入国手続きへの導入に向けては、政府との連携が進むかが鍵になります。また、ワクチンの接種を希望しない人などへの対応も課題になりそうです。

国際航空運送協会「 世界で標準化を」

スマホアプリを使ったデジタル証明書は、世界のおよそ290の航空会社が加盟するIATA=国際航空運送協会も開発を進めています。

アプリは「IATAトラベルパス」と呼ばれ、ワクチンが世界中で広く普及するにはまだ時間がかかる見通しだとしてまずPCR検査の結果の表示から運用を始める考えで、シンガポール航空やUAE=アラブ首長国連邦のエミレーツ航空などが実証実験に参加します。

また、全日空も来月以降、実証実験に加わる計画で、日本航空も参加を検討しています。

IATAでアジア太平洋地域のトラベルパスの責任者を務めるヴィノープ・ゴエル氏は、「私たちの最終的な目標は航空業界がコロナ危機から回復することだ。トラベルパスが世界標準となり、航空会社や乗客が世界中で同じパスを使えるようにするのが願いだ」と話しています。

そのうえで「アプリを提供する企業や団体がいくつあろうとも、世界標準を1つにすることが重要だ。IATAのアプリはオープンな規格にして他のシステムと互換性を持たせる形で開発している」と話し、アプリどうしの互換性を高め、利便性を向上させることが欠かせないと強調しています。

世界で進む実証実験

コモンパスの実証実験は、アメリカのユナイテッド航空や香港のキャセイパシフィック航空、ドイツのルフトハンザ航空など、世界各地の航空会社も進めています。

このうち、ユナイテッド航空は、去年10月、イギリスのロンドンとアメリカ東部のニューアークを結ぶ便でアプリの実証実験を行いました。

日本でも、今後、全日空と日本航空が実証実験に参加する予定です。