新型コロナ 自治体財政への影響が深刻化 住民サービスに影響も

新型コロナウイルスによって今後、深刻化するとされるのが自治体の財政への影響です。地方交付税を受けていない全国の76の自治体を対象に新年度の財政についてNHKが調査したところ、一部で事業や住民サービスに影響が生じる見通しとなっていることがわかりました。

総務省によりますと、新型コロナウイルスの影響などで全国の自治体の新年度の財政は今年度の倍以上の財源不足が見込まれ、国からの「仕送り」にあたる地方交付税の増額などが行われることになっています。

一方、いわゆる企業城下町や観光都市など地方税収が多いため交付税を受けていない「不交付団体」にあたる都道府県と市町村は今年度、全国に76あり、NHKはこの「不交付団体」を対象に新年度の財政を調査しました。

それによりますと新年度の税収について、8割余りを占める65の自治体が「減収の見込み」と答え、このうち今年度より5%以上減ると回答した自治体も27ありました。

減収の割合が最も高かったのは、山梨県山中湖村で14.2%の減少、次いで滋賀県竜王町で13.1%、静岡県御殿場市で13%でした。

また、税収減などの影響を最小限に抑えようと全体の9割近い68の自治体が貯金にあたる財政調整基金を取り崩すとしています。

取り崩しの額は、東京都で460億円、市町村で最も多いのが愛知県豊田市で87億円、神奈川県藤沢市で52億円、愛知県岡崎市で50億円などとなっています。

住民サービスに影響の可能性も

さらに、予定していた事業を見直す動きも出始めていて、27の自治体が「事業や住民サービスに影響が生じる可能性がある」と答えました。

このうち川崎市はJR南武線の高架化の事業について、新年度から土地の買収などを始める予定でしたが、事業の進め方を見直すことになりました。

予定されている区間には、遮断機が降りたままとなる、いわゆる「開かずの踏切」が5か所あり、ピーク時には1時間あたり40分以上遮断しています。

去年10月には死亡事故も起きていたことから早期の事業開始に期待が寄せられていました。

また、埼玉県和光市は国民健康保険と介護保険の特別会計に市の一般会計から繰り出していた額を減らすことになり、その分、市民が負担する保険料などが値上げされる可能性があるということです。

ほかにも、千葉県浦安市では子ども図書館の新設や郷土博物館のリニューアルを延期するほか、愛知県碧南市では駅前のロータリーの拡張計画について、今後、完成時期の先送りや計画の凍結もありうるとしています。

そして、税収減などを受け、一部の自治体ではこれまで受け取ってこなかった国からの「仕送り」地方交付税が必要になる可能性も出ています。

新年度、交付税を受け取る「交付団体」となる可能性があるかたずねたところ、栃木県芳賀町、東京・国立市、神奈川県の川崎市、愛川町、山梨県の忍野村、山中湖村、静岡県富士市、愛知県豊橋市、滋賀県竜王町の9つの市町村が「可能性がある」と回答しました。

専門家「財政状況が一気に悪化もあり得る」

自治体の財政に詳しい一橋大学の佐藤主光教授は、不交付団体が直面している状況について「ふだんは豊かだが、税収減がそのまま住民サービスに直結するので影響は大きい。財政調整基金を取り崩してコロナに備え、税収減を埋めるのは当然の対応だが、基金にも限りがあるので影響が長引くと枯渇することがあるかもしれず、その結果、地方債が増えてこれまで豊かだった自治体の財政状況が一気に悪化することはあり得ることだ」と指摘しました。

そして「地方自治体はこの危機をきっかけに既存の事業を見直して効率的な予算配分や事業を実施する自助努力が求められている」と強調しました。

さらに国の支援の在り方については「自治体の求めに応じて地方交付税などの財政支援をしているが、地方の財政悪化を国が穴埋めすることになると転じて国の財政悪化に直結するかもしれない。財政支援を行うのはやむを得ないが、その効果をしっかりと検証し、必要に応じて将来の見直しにつなげていかなければならない」と話しています。