アナフィラキシーの疑い「重大な懸念認められず」 厚労省分析

厚生労働省の専門家部会は新型コロナウイルスのワクチンについて、接種後にアナフィラキシーの疑いがあると報告された事例を分析した結果、アナフィラキシーに該当したのはおよそ4割だったと明らかにしました。厚生労働省は安全性に重大な懸念は認められないとして、接種後の経過観察を徹底したうえで接種を続ける方針です。

厚生労働省によりますと、国内では11日午後5時までに、アメリカの製薬大手ファイザーのワクチンの接種が医療従事者に対して18万1184回行われました。

このうち医療機関が報告を取り消した1件を除く36件について、接種後、アナフィラキシーの疑いがある症状が確認されたと医療機関から報告があったということです。

割合にすると5033件に1件で、アメリカでの報告のおよそ42倍、イギリスのおよそ11倍となっています。

12日に開かれた厚生労働省の専門家部会では、委員が「各国で同じ基準で報告されているわけではないので、理解したうえでデータを見る必要がある」などと指摘していました。

今月9日までに国内で報告された17件について「ブライトン分類」と呼ばれる国際的な評価指標に基づいて分析した結果、アナフィラキシーに該当したのはおよそ4割の7件だったということです。

残る10件は十分な情報がなく判断ができないか、アナフィラキシーでないと評価されたということです。

接種後にくも膜下出血を起こして死亡した60代女性については「接種との因果関係が評価できない」としました。

厚生労働省は安全性に重大な懸念は認められないとして、接種後は少なくとも15分、過去に重いアレルギー症状を起こした人は30分は必ず経過を観察するよう自治体や医療機関に呼びかけたうえで、引き続き接種を進めていくことにしています。

「接種開始当初は 報告頻度高いという研究も」

厚生労働省の専門家部会の部会長をつとめる東京医科歯科大学の森尾友宏教授は「国内では医療機関からの報告がそのまま計上されているため、結果的にアナフィラキシーに分類されないものも含まれている。海外の事例をみると、接種が始まった当初は報告の頻度が高くなるという研究結果もあり、報告にはばらつきがある。さらにデータを集めたうえで国際的な指標にもとづいて内容を精査したい」と述べました。

委員の1人で埼玉県立小児医療センターの岡明 病院長は「わかりやすく内容を説明することが大前提で、必要な注意喚起をしながら不安をあおらないようにするのが大切だ」としています。

「アメリカでの発症頻度は日本とほぼ同じ」

日本より早く接種が始まったアメリカでは、接種後のアナフィラキシーについて研究が進められています。

今月、マサチューセッツ総合病院などの研究班は、接種後のアレルギー反応に関する調査結果をアメリカの医学雑誌「ジャーナルオブジアメリカンメディカルアソシエーション」に掲載しました。

それによりますと、アメリカで、ファイザーのワクチンの接種を受けた2万5929人について、自己申告で報告を求めたところ、1.95%にあたる506件のアレルギー反応が報告されました。

これらについて、複数の専門医が「ブライトン分類」と呼ばれる国際的な評価指標などを使って分析した結果、7件がアナフィラキシーと判断されたということです。

100万回の接種につき、270件の割合になります。

一方、日本では11日、午後5時までに36件、100万回当たりの接種に換算して199件のアナフィラキシーが報告されました。

厚生労働省の専門家部会の委員の1人は「今回のアメリカの調査で確認されたアナフィラキシーの発症頻度は日本とほぼ同じだ。日本での報告が特別に多いと誤解されないよう説明する必要がある」と指摘しています。

接種部位の痛み ほとんどが翌日に症状

厚生労働省の研究班は、新型コロナウイルスのワクチンの先行接種を受けた医療従事者のうち、20代から70代の男女1万7138人について、これまでに確認されている接種後の症状をまとめました。

それによりますと、接種部位の痛みが出た人は全体の92.4%で、ほとんどの人は翌日に症状が確認されました。ほぼ5人に1人が鎮痛剤を服用したということです。

また、けん怠感があった人は23.1%、頭痛は21.3%で、いずれも接種の翌日に症状が確認された人が最も多くなりました。まれに、疲労や頭痛で日常生活に支障が出たという人もいたということです。

また、37度5分以上の熱があった人は3.3%で、接種の翌日に症状が出た人が最も多くなりました。

厚生労働省の研究班は「翌日に症状が出ることは珍しくないので、解熱剤を飲んだり仕事を休んだりして慌てずに対応してほしい。今後は2回目の接種のあとの症状についても分析していきたい」としています。