東京都 “繁華街で人の流れ増加 感染急拡大を危惧” 専門家

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、専門家は、新規陽性者数は下げ止まりが見られるとしたうえで、「一部の繁華街では緊急事態宣言の発出直後よりも人の流れが増加していて、感染の急拡大が危惧される」と指摘し、再度拡大に転じることへの危機感を示しました。

12日の会議で専門家は都内の感染状況と医療提供体制を、いずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について新規陽性者数の7日間平均は、今月3日時点のおよそ272人から10日時点はおよそ262人で、依然として高い数値だと指摘しました。

増加比はおよそ96%で2週連続で100%前後で推移していて、下げ止まりが見られると分析しました。

そのうえで「一部の繁華街では1月8日の緊急事態宣言の発出直後よりも人の流れが増加していて、感染の急拡大を招くことが危惧される」と指摘しました。

また「第1波では緊急事態宣言解除の1週間前に新規陽性者数の増加が見られている。今回の第3波でも宣言解除前から再度感染拡大に転じることへの十分な警戒が必要だ」と危機感を示しました。

さらに、今後は流行の主体が感染力が強い変異ウイルスに移る可能性があるとして「感染が急速に拡大するリスクがある。新規陽性者数が再度増加する局面を確実に捉えて、変異ウイルスを徹底的に封じ込めることが重要だ」と強調しました。

一方、医療提供体制については10日時点の入院患者が1333人と、先週の1548人から減少したものの、依然として高い水準だと指摘しました。

そのうえで「病院の体制が十分に確保できないまま感染が再拡大する危険性がある。再拡大を想定して病床や宿泊療養、自宅療養の体制確保の戦略を早急に検討する必要がある」として、対応を求めました。
12日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況 「減少傾向は鈍化している」

新たな感染の確認は、10日時点の7日間平均が262.1人と7週連続で減少しましたが、専門家は「減少傾向は鈍化している。第2波では、7日間平均がピーク時の346人から十分に減少せず、およそ150人から200人の間で増減を繰り返したあと、急激に再拡大して第3波を迎えた」と分析しています。

そして「緊急事態宣言の解除後には感染者数が増加する可能性を認識し、宣言の期間中にできるだけ感染者を減らし、保健所や医療機関に対する負荷を可能なかぎり軽減しておくことが必要だ」と指摘しました。

今月8日までの1週間に感染が確認された人を年代別の割合でみると、
▽20代が最も多く21.5%、
次いで
▽30代が15.7%、
▽40代が13.0%、
▽50代が12.8%、
▽60代が9.3%、
▽70代が8.9%、
▽80代が7.9%、
▽10代が4.4%、
▽10歳未満が3.7%、
▽90代以上が2.8%でした。

このうち、20代と60代の割合が上昇しました。

また、65歳以上の高齢者は418人で前の週より47人減少し(前の週=465人)、新規陽性者に占める割合は23.8%で横ばいでした。

感染経路がわかっている人のうち
▽家庭内での感染は44.3%で最も多くなり、
次いで
▽病院や高齢者施設などの施設内が35.6%でした。

70代の63.4%、80代以上の73.3%が施設内での感染でした。

このほか、
▽会食が4.5%で前の週から0.7ポイント、
▽夜間営業する接待を伴う飲食店の関係が1.8%で、前の週から0.9ポイント、それぞれ増加しました。

専門家は「感染リスクが高いと考えられる会食では、会話の際にマスクを着用するとともに、人数はいつも近くにいる4人までとするなど、国の提言を順守する必要がある」と呼びかけています。

また、「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路がわからない人の7日間平均は、10日時点で124.7人で、前の週よりおよそ9人減りましたが(前の週=134.0人)、専門家は横ばいと評価しました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は、10日時点で3.3%で、前の週の3.2%から横ばいでした。

専門家は「感染を抑え込むために濃厚接触者などの積極的疫学調査を充実させ、陽性率の高い特定の地域などで検査を受けてもらうようにする必要がある」と指摘しました。

また、都の基準で集計した10日時点の重症患者は、前の週より13人減って39人となり(前の週=52人)、専門家は「減少しているが、第2波のピーク時と同じ人数だ」と分析しています。

そのうえで「重症患者のための医療提供体制は長期間にわたり厳しい状況が続いている。感染防止対策を緩めることなく徹底し、重症化リスクの高い高齢の新規陽性者を減らすことが重要だ」と指摘しています。

今月8日までの1週間で都に報告があった亡くなった人は84人で、前の週の121人から37人減りました。

亡くなった84人の9割以上にあたる77人は70代以上でした。

「総括コメント」の表現を一部変更

12日のモニタリング会議で、専門家は、「感染状況」と「医療提供体制」の「総括コメント」の表現を一部変更すると説明しました。

このうち「感染状況」について、4段階のうち最も高い警戒レベルのコメントは、これまで「感染が拡大していると思われる」となっていましたが、「感染の再拡大の危険性が高いと思われる」という表現も加わりました。

専門家は「これまでのコメントでは感染が収束に向かう状況にはそぐわない」と説明しています。

一方、「医療提供体制」については、4段階のうち最も高い警戒レベルの「体制がひっ迫していると思われる」に、「通常の医療が大きく制限されていると思われる」という表現が、上から2番目のレベルの「体制強化が必要であると思われる」に、「通常の医療との両立が困難であると思われる」という表現が、それぞれ追加されました。

また、3番目のレベルでは、「体制強化の状態を維持する必要があると思われる」という表現が、「通常の医療との両立が困難になりつつあると思われる」に変更されました。

都によりますと、これまでは新型コロナウイルスに対応する医療提供体制を示す表現にしていましたが、通常医療への影響も考慮する必要があると判断したということです。

専門家ボード 賀来座長「戦略的な検査を」提言

12日のモニタリング会議で、都の「専門家ボード」の座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、感染の再拡大を防ぐため、戦略的な検査を行うよう提言しました。

提言では、今後、医療機関や高齢者施設などでの「クラスター発生予防」と繁華街や特定の地域などでの「モニタリングによる早期探知」に重点を置いて検査を行う方針を打ち出しています。

このうち「クラスター発生予防」では、施設の職員や患者を対象に定期的に検査を行い、今月中旬から試験的に始めて、今月下旬以降、順次拡大するとしています。

都としては、葛飾区から開始する方針です。

一方、「モニタリングによる早期探知」のうち、繁華街エリアでは飲食店の従業員などを対象にした検査を、事業所や学校、駅の周辺では一般の成人などを対象にした無作為の検査を、いずれも今月中に開始するとしています。

賀来座長は「予兆となるクラスターを迅速に捉えて感染拡大を抑えていく」と話しています。

また、東京都医師会の猪口正孝副会長は「感染を抑え込むためには検査能力を有効に活用する必要がある。高齢者を守るという意味での『守り』の検査と、『攻め』の検査だ」と話しています。

このほか、提言では、感染力が高いとされる変異したウイルスについて、都の研究施設や民間の検査機関での検査を、これまでの2700件から来月までに合わせて4000件にすることを目指し、規模を拡大するとしています。