米議会下院 コロナ対策 200兆円規模の経済対策法案可決 成立へ

アメリカ議会下院で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応した総額200兆円規模の経済対策の法案が10日、可決され、成立することになりました。バイデン政権発足後、初めてとなる経済対策のもと、1人あたり最大15万円の現金給付が月内にも始まる予定です。

アメリカ議会下院は10日、「アメリカン・レスキュー・プラン」と名付けられた総額1兆9000億ドル、日本円で200兆円規模の経済対策の法案を可決しました。

上院ではすでに可決されているため、バイデン大統領が週内に署名して成立することになります。

バイデン政権発足後、初めてとなる今回の経済対策は、▽原則、年収およそ860万円以下の人に1人あたり最大15万円を給付する措置が柱で、月内にも給付が始まる予定です。

また、▽失業保険の積み増しを9月まで延長する措置や、▽ワクチン接種を普及させるための予算も盛り込まれ、労働者や家計への支援を重視した内容です。

バイデン大統領としては、就任後、速やかに経済対策を打つことで傷ついた経済の立て直しを急ぎたい考えです。

ただ、巨額の財政出動をめぐって市場では、財政を悪化させるだけでなく、景気を過熱させるのではないかという見方も出て、長期金利の上昇を招いていて、経済政策のかじ取りは難しい状況が続きそうです。

さらに今回は、これまでと異なり、与野党間の合意を経ずに民主党が単独での可決を強行していて、今後の重要法案の審議に影響を及ぼす可能性もあります。

バイデン大統領が声明

経済対策の法案の可決を受けてバイデン大統領は声明を発表し「法案は、この国の柱となるエッセンシャルワーカーや労働者たち、そして国を支えている人々にチャンスを与えるものだ。ワクチンの接種や、全体の85%の世帯に対する1400ドルの現金給付、小規模の事業者への支援などを進められる」と評価しました。

そして、12日の金曜日にホワイトハウスで署名する考えを示しました。

消費意欲を一気に高める可能性も

バイデン政権は、労働者や家計への支援に焦点を当てた巨額の経済対策で新型コロナウイルスの感染拡大で傷ついた経済の立て直しを急ぎたい考えです。

一方で、アメリカでは、新たな感染者が1月中旬から減少傾向にあるほかワクチンの接種も進みつつあり、ことし半ば以降にはGDP=国内総生産の規模が感染拡大前の水準に戻るという予想も多く出ていて、巨額の経済対策が景気の過熱につながりかねないとの指摘も出ています。

対策の柱の現金給付も、トランプ前政権時代の2度の給付ですでに1人あたり最大1800ドル、日本円で19万円余りが支払われていて、3度目の支援が消費意欲を一気に高める可能性もあります。

専門家「これほどの刺激策が必要だったのか疑問」

メリーランド大学のピート・カイル教授は「アメリカはパンデミックから抜け出して今後数か月のうちに多くの人が外食をし、旅行にも出かけるようになる。これほどの景気刺激策が必要だったのか、大きな疑問がある」と述べました。

その上で「政府の財政赤字は前例のない規模だ。経済が回復するさなかの大規模な財政出動は、インフレを招くリスクがあり、例えばレストランの場合、新型コロナウイルスの影響で店の数自体が減っているので多くの客が急に戻ってくると、食事の値段が上がってしまう」と指摘し、急な物価の上昇に警鐘を鳴らしました。

景気の動向は今後の感染状況に左右されることになりますが、バイデン政権にとって経済政策の難しいかじ取りは続きそうです。