“ハゲタカ”が救世主か?~ファンドが担う中小企業再生~

“ハゲタカ”が救世主か?~ファンドが担う中小企業再生~
新型コロナウイルスの打撃を受けた中小企業を誰がどう支えてゆくのか。
影響が長期化する中で大きな課題となっています。こうした状況に、中小企業の再生を後押ししようと動きを活発化させているのが「投資ファンド」です。かつては買収した企業を容赦なく整理し売り払う“ハゲタカ”というイメージもつきまとった「投資ファンド」。企業再生の救世主になるのでしょうか。(経済部記者 木村隆介)

事業再生のプロが立ち上げたファンド

まず最初に訪ねたのが、東京都内に拠点をおく投資ファンド「ニューホライズンキャピタル」です。
会長を務める安東泰志さんが、新型コロナで打撃を受けた中小企業を支援する企業再生ファンドをつくるため、先月、新しい会社を立ち上げました。
安東さんは、銀行に勤務していた90年代にヨーロッパの支店で不良債権処理の経験を積み、その後、自らのファンドを立ち上げました。
20年近くにわたって、「三菱自動車工業」や京都に本社を置く和食器販売会社「たち吉」など、不振に陥った企業の再生に最前線で取り組んできた経験を持ちます。
安東さんは、コロナの影響を受ける中小企業の現状は深刻だと言います。
安東さん
「飲食や宿泊などの業種では、債務が右肩上がりに伸びていて、返済に10年以上もかかる過大な借金を抱える中小企業が急増しています。返済を先延ばししても全く解決にならない。いったんここで抜本的な手をうたなければなりません」

地域金融機関とも協力

企業再生ファンドは、一般的に企業が抱える債務を金融機関から買い取るなどして、資金繰りを改善させます。また、資金を拠出して新たな設備を導入したり、採算が合わない事業を切り出したりして、会社の再生を後押しします。事業が軌道に乗って企業の価値が高まれば、ファンド側も利益を得ることができます。

安東さんは、ファンドを通じて地方銀行や信用金庫といった地域の金融機関から中小企業向けの債権を買い取る一方、金融機関とも協力しながら事業の再生計画をつくり、再生のノウハウを提供したいとしています。
安東さん
「われわれが中に入ることで、返済の必要がない資金が手に入ります。そうしないと、負債の返済だけに終わってしまい、会社が成長できない。ファンドが入ることで、借金を資本性の資金にスムーズにかえていきます」

100社以上の支援目指す

安東さんは、年内に10を超える地銀や信用金庫と共同で、200億円から300億円規模の企業再生ファンドを立ち上げる計画です。全国の100社以上の中小企業を対象に支援を行う考えです。
安東さん
「すでに2、3の具体的な案件の相談が来ています。中小企業の経営者が過剰債務に苦しんでいますが、日頃の努力がたりなかったのではなく、新型コロナという外的要因によるものです。地域の金融機関と一緒に、地域の大事な企業を過剰債務から解放させたい」

金融の地産地消を目指す地域ファンド

地域レベルでも、コロナ禍に対応した企業再生ファンドが立ち上がっています。その1つが、福岡に拠点をおく投資ファンド「ドーガン」です。
社長の森大介さんが去年12月、地元企業などの出資を受けて立ち上げました。
森さんは、外資系金融機関の勤務などを経て、利益を地域に還元する“金融の地産地消”を掲げ、2004年から地元・九州の企業再生に取り組んできました。
廃業寸前だった熊本県のシャツ縫製工場を、全国ブランドの会社に再生させた経験もあります。
森さん
「ファンドらしくないのですが、地方は社会が狭いので、会社の再生が終わっても、経営者の方々となかなか縁が切れないですね。一緒に再建に向けて働いてきて、仲間みたいなところがあるんです。いま地方では後継者が見つからない事業承継の問題が深刻で、それにコロナが追い打ちをかけています。これからさらに相談が増えると感じます」

“リスクマネー”を投入

森さんは、返済が滞るなどして、銀行などから融資が得にくくなっている企業に対して、新設備の導入やデジタル化など経営革新のための資金を注入したいとしています。経営者の負担が少ない、いわゆるリスクマネーを投入することで、再生を目指します。
森さん
「どんなに経営が厳しい会社も相談はすべて乗ります。たとえファンドの資金で支援ができなくても、雇用をつなぐためにM&A(企業の合併・買収)を行ったり、われわれがコンサルタントとして入ることで、事業をつなげたりすることもできます」
「地方の中小企業を支援するのはそう簡単ではありません。それでも、身の丈に合った支援で、自分の会社に自信がもてるようにしてあげたい。利益が出せて会社としてやっていけるところまでお手伝いしたいと考えています」

公的機関もファンドに資金を拠出

企業再生ファンドの取り組みには、公的機関も支援に乗り出しています。中小企業の支援を行う独立行政法人の「中小企業基盤整備機構」が、最大でファンド資金の5分の4を拠出する対応に乗り出しています。

企業再生ファンドは、不振企業をただ生きながらえさせるのではありません。あくまで再生の可能性のある企業に対し、ビジネスとして投資を行います。再生の過程ではさまざまな痛みも伴うこともあります。

それでも、経営者にとって、返済の必要がない資金で再出発のチャンスを得ることができるのは大きな利点です。資金繰りに苦しむ中小企業の新たな支援の担い手として、企業再生ファンドに存在感を発揮してほしいと思います。
経済部記者
木村 隆介
2003年入局
福井局、国際部、
ベルリン支局を経て
現在は証券業界を担当