中国の国防費 去年比6.8%増加 日本円で22兆円余計上

中国政府はことしの予算案で、国防費について、去年より6.8%多い、1兆3553億人民元、日本円で22兆円余りになることを明らかにし、引き続き軍備の増強を進める姿勢を示しました。

中国政府は、5日から始まった全人代=全国人民代表大会で、ことしの予算案を明らかにしました。

このうち、国防費は去年に比べて6.8%多い、およそ1兆3553億人民元、日本円で22兆円余りとなりました。

去年からの増加額は、およそ873億人民元、日本円で1兆4500億円余りに達しました。

去年の伸び率は、新型コロナウイルスの影響で経済が落ち込んだことなどからおととしを下回りましたが、ことしは、去年の伸び率をわずかに上回りました。

中国は「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を作る」という目標を掲げていて、新たな国産空母の建造を進めるなど、軍備の増強を進めています。

一方で、国防費をめぐっては詳しい内訳は公表されていないことから、各国から、透明性が欠けているとして根強い批判の声があります。

これについて、全人代の張業遂報道官は、4日夜の記者会見で「中国の国防費はすべて国家予算案に盛り込まれ、全人代で審査されており、透明性がある」と主張しています。

ただ、専門家などからは、中国の国防費には海外から調達する兵器の費用や研究開発費が含まれていないという指摘もあり、実際は公表される額を大幅に上回っているのではないかという指摘があとを絶ちません。

李克強首相「戦略能力を高める」

中国の国防政策について李克強首相は、5日行った全人代の政府活動報告の中で「軍は安全保障と新型ウイルスの感染防止対策で優れた能力を発揮した」と述べました。

そのうえで「戦いに備えた訓練を全面的に強化し、各方面、各分野における安全保障リスクに対応し、国家の主権と安全、発展の利益を守るために戦略能力を高めていく」と述べ、軍備の増強を一層進める姿勢を示しました。

「世界一流の軍隊を作る」

中国は「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を作る」という目標を掲げ、軍事力の増強を進めています。

去年12月には、2009年以来、11年ぶりとなる国防法の改正を行い、宇宙やサイバー空間などを「重大な安全領域」と位置づけ、中国の主権や領土に加え「発展の利益」が脅かされた際にも軍事活動を総動員できるとするなど、有事の際の軍事活動に対する法的根拠を整備しました。

このうち、宇宙やサイバー空間では、敵の情報システムやネットワークを攻撃し、無力化する能力を高めようとしているとみられます。

海軍力については、2012年に就役した初の空母「遼寧」に続き、おととしには国産としては初となる空母「山東」を就役させています。

さらに、中国共産党系のメディア「環球時報」の英語版は、上海で建造中の新たな国産空母について、電磁式カタパルトが装備され、ことし中にも進水する可能性があると伝えています。

また、沖縄県の尖閣諸島周辺では中国海警局などの船が頻繁に活動していて、これについて中国国防省は「正当かつ合法的だ。引き続き常態化していく」として今後も同様の活動を続けると主張しています。

中国は先月、海警局の船に武器の使用を認める「海警法」を施行し、日本では懸念の声が出ています。

一方、南シナ海では、中国が実効支配する島々や人工島で軍事施設を増強する動きを見せており、領有権をめぐって争う周辺の国などが批判を強めています。

このほか中国軍は、アメリカ軍の基地があるグアムを射程に収め「グアムキラー」とも呼ばれる中距離弾道ミサイル「東風26」を3年前に配備したほか、ステルス性能を持つとされる新型の長距離爆撃機「轟20」の開発を進めています。

こうした軍事力の増強について、国際社会からは、中国の国防政策には透明性が欠けているとして根強い批判の声があります。

中国国防費の推移

中国の国防費は、1989年から2015年まで、ほぼ毎年、前の年を10%以上上回るペースで増え続け、2017年には1兆人民元の大台を突破しました。

2016年以降の伸び率は1桁台ですが、去年の中国の国防費は1兆2680億人民元、日本円でおよそ21兆円で、今年度の日本の防衛費、5兆3133億円の4倍近くとなっています。

一方、アメリカの軍事費は2021会計年度の予算で7405億ドル、およそ79兆円となっていて、中国はアメリカに次いで世界第2位の軍事大国となっています。

一方、去年の台湾の軍事費は3512億台湾元、およそ1兆3000億円で、中国と比べておよそ16分の1となっています。

専門家「他国と比べても非常に高い伸び率」

中国の国防費が去年に比べて6.8%増えたことについて元海上自衛官で中国の防衛駐在官を務めた笹川平和財団の小原凡司上席研究員は「6.8%という伸び率はほかの国に比べて非常に高い。コロナで経済的なダメージを受ける前でさえ、6%以上の伸び率を示す国は、先進国では多くなかったのではないか」と述べました。

そのうえで「中国共産党系のメディアは、中国が新型コロナウイルスを完全に抑えこんでいて、国家の安全保障に支障はないことを示したという論調で伝えている」と述べ、中国が軍備増強を続ける意思に変わりはないことを示していると指摘しました。

小原氏は、中国の軍が近年、宇宙やサイバー空間で活動するための装備や、AI=人工知能を搭載した最新兵器の開発などに多額の予算を計上している可能性があるという見方を示しています。

そのうえで「中国が公表する国防費は武器・装備品の研究開発費や海外から武器を調達する際の予算が含まれていないと言われ、軍備増強の全体像を示すものではない」と述べ、中国は国防費の内訳を公表し、透明性を確保すべきだという考え方を示しました。

また、小原氏は「中国の軍備増強が今後、日本周辺、あるいはインド太平洋地域にどのような影響を及ぼすのか見ていく必要がある」と述べ、日本が同盟国のアメリカなどと連携し、警戒を続ける必要があるとしています。