東大グループ “東京新規感染者 7月再び1日1200人超”の分析も

東京大学の経済学者のグループが、緊急事態宣言を解除した場合のシミュレーションを行い、宣言解除後の気の緩みなどで再び感染が拡大すれば、7月には、東京都の新規感染者数が再び1日1200人を超えるとする計算結果を公表しました。

シミュレーションを行ったのは、東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師のグループです。

グループは、2月28日までのデータをもとに、感染の広がりを予測する数理モデルと経済学の予測モデルを組み合わせ、首都圏の1都3県で緊急事態宣言が解除されたあとの感染状況や経済への影響を分析しました。

このうち東京都について、2週間後の3月第3週に新規感染者数が1日150人を下回った状況で宣言が解除され、ワクチンの接種が順調に進むと想定したところ、経済活動の再開などにより感染者数は再び増加し、7月には1日500人を超えましたが、その後、感染は収束に向かい、今後1年後の死者の総数は2147人という計算結果となりました。
ただ、宣言解除後に気が緩んで、歓送迎会や花見の宴会などが行われ、感染が再び加速したとすると、1人が何人に感染させるかを示す実効再生産数が3週間にわたり1.25倍に増加する想定で、東京都での新規感染者の数は7月には1日1200人を超え、1年後の死者数は3083人という結果が出ました。
一方、宣言解除後も、飲食店の営業や旅行などの経済活動をすぐに再開せず、2か月かけて去年の秋程度のレベルまで戻していくと想定すると、7月に新規感染者の数が1日350人余りとなり、ピークを迎えました。

この場合、1年後の死者数は1971人で、すぐに経済活動を再開した場合に比べて1100人余り減りましたが、経済的な損失は3118億円増加する計算となりました。
仲田准教授は「宣言解除までに感染者の数がしっかり減ることが前提なので感染状況によってはその後の結果は変わる。今回のシミュレーションによって宣言を解除したあとに段階的に経済活動を進めることで、感染者数の増加を大幅に抑えることができることが分かってきた。こうした結果を政策の参考にしてほしい」と話しています。

首都圏 3県のシミュレーション

東京大学のグループでは、緊急事態宣言が続いている神奈川県、埼玉県、千葉県の3県でも、緊急事態宣言を解除した場合の感染状況と経済への影響についてシミュレーションを行いました。

いずれもワクチンの接種が順調に進み、効果が期待できるという想定など、さまざまな想定を置いたうえでのシミュレーションとなっています。

神奈川県

神奈川県では、3月の第3週に1日あたりの新規感染者数が80人を下回った状況で宣言が解除されたと想定しました。

その結果、新規感染者数は、7月の第3週にピークを迎え、1日341人となりましたが、その後、収束に向かうという計算になりました。

ただ、宣言解除後の「気の緩み」を想定すると、新規感染者数は6月の第3週にピークとなり、1日701人と再び緊急事態宣言が出されるような水準まで増え、1年後の死者の総数は1537人という結果になりました。

一方、宣言解除後も経済活動をすぐには再開せず、2か月かけて去年の秋程度まで戻していくと想定すると、新規感染者の数はピーク時でも252人で、1年後の死者数は1161人でした。

また、経済損失は緊急事態宣言が回避できたことで、すぐに経済を再開する場合に比べて1555億円少なくなるという結果でした。

埼玉県

埼玉県は、3月の第3週に1日あたりの新規感染者数が60人を下回った状況で宣言が解除されたと想定しました。

その結果、新規感染者数は7月の第4週にピークを迎え、1日357人となりました。

「気の緩み」を想定した場合は、感染者数は5月の第3週に1日404人で、緊急事態宣言が出される水準となり、1年後の死者数は1155人という結果になりました。

経済活動を2か月かけて去年の秋程度まで戻していくと想定すると、ピーク時の新規感染者の数は1日244人で、1年後の死者数は1080人、経済損失は緊急事態宣言が回避できたことで、すぐに経済を再開する場合に比べて1633億円少なくなるという結果でした。

千葉県

千葉県では、3月の第3週に1日あたりの新規感染者数が60人を下回った状況で宣言が解除されたと想定しました。

その結果、新規感染者数は6月の第2週にピークを迎え、1日368人となり、再び緊急事態宣言が出される水準になったということです。

宣言解除後の「気の緩み」を想定した場合は、感染者数は5月の第1週にピークとなり1日391人と、こちらも再び緊急事態宣言が必要となる水準になりました。

1年後の死者数は888人という計算でした。

経済活動を、2か月かけて去年の秋程度まで戻していく想定でも、7月の第4週には新規感染者数は1日367人、1年後の死者数は878人となったほか、すぐに経済を再開する場合に比べて、経済損失は1862億円増える結果となりました。

一方、経済活動を戻すまでに、さらに1週間長くかけた場合には、再び感染が拡大しても緊急事態宣言の水準まで感染者数は増えなかったということです。

仲田准教授は「再度の緊急事態宣言を引き起こさないことが最も重要だ。地域の感染状況を見極めて、中途半端な対応を取らず、必要に応じてしっかりと時間をかけて経済活動を再開していくことが重要だ」と話しています。