服が炎上!? “表面フラッシュ”に注意

服が炎上!? “表面フラッシュ”に注意
「ガスコンロに火をつけた瞬間にボッと。
 胸元まで一瞬にして広がったのでゾッとしました」

聞き慣れない言葉ですが「表面フラッシュ」ってご存じですか?

コンロなどの火が衣服に燃え移り、一瞬で炎が広がる現象です。

コロナ禍の冬、自宅で火を使った調理をする機会も増えていると思います。特に空気が乾燥するこの季節は注意が必要だと思って調べてみました。
(ネットワーク報道部記者 目見田健 馬渕安代 杉本宙矢/SNSリサーチ 荻荘友幸)

表面フラッシュ現象って?

今月2日の仕事帰り。

記者(馬渕)がスマホでメールをチェックしていると、会員登録している下着メーカー「ワコール」から「重要なお知らせ」と書かれたメールが届いていました。
一部の商品の回収を呼びかける内容でした。
「一部のパジャマおよびボトムにおいて、表面フラッシュが発生するおそれのあることが判明し、2016年3月から回収とご返金のご案内をしております」
「表面フラッシュってなに?」

インターネットを検索すると、こんな動画が。
神戸市消防局が実験した映像には、長袖シャツに火が燃え移ると、すごい速さで服全体に炎が広がる様子が映っています。

「ワコール」によると、ことし2月の時点で商品の回収率は62.3%。

幸い、今のところ事故やけがの報告は寄せられていないということです。

表面フラッシュの発生が懸念され、回収を呼びかけているのは5つの商品で、5年前からホームページやメールなどでお知らせしています。
ワコールホールディングス 広報担当
「時間がたてば燃えなくなるというものではないので、企業の責任として、お客様の安全を守るため、告知を続ける必要があると判断しています。100%の回収を目指して今後も告知を続けていきます」

火災につながる危険も

表面フラッシュに詳しい東京消防庁の担当者に話を聞きました。
東京消防庁 消防技術安全所 都民安全技術係 細谷昌右 係長
「衣服の生地の表面に細かい繊維が毛羽立っていると、空気との接触面積が大きいため、コンロなどの炎が接触しただけで、あるいは近づいただけで毛羽部分に燃え移り、一瞬のうちに表面に炎が走るような現象が生じることがあります。これが『表面フラッシュ』と呼ばれるものです。服が燃えて、やけどや火災の原因になる『着衣着火』の一種です」
「表面フラッシュは一瞬なので、それだけでは急激な温度変化はありませんが、気付くのが遅れて髪の毛に燃え移ったり、慌てて動き回ったりすると衣服全体に延焼し、思わぬ火災や事故を招くことになります」
表面フラッシュが起きていたかどうかは別として、消防庁によると、「着衣着火」が原因の火災では、令和元年だけで106人が亡くなっています。

どんな服に注意?

どのような服や素材に注意が必要なのか。

NITE=製品評価技術基盤機構の佐藤秀幸さんが説明してくれました。
NITE 製品安全センター 広報担当 佐藤秀幸さん
「服の素材と、表面の形状に注意が必要です。まず素材では、綿やレーヨン、キュプラなどのセルロース系繊維などは燃えやすいと言われています。また、ネルシャツなどの表面を起毛させた素材やパイル織りの生地は、空気を含んで暖かい一方で、表面フラッシュが起きやすくなります」
「特に寒い時期は静電気が起きやすく、衣類の表面が毛羽立ちやすくなります。寒くなるとよく利用されるフリースも燃えた事例があり、注意が必要です」

青い炎が一瞬で袖から背中へ

その怖さの一端は、SNS上でも話題になっていました。

「誰にでも起こりうる事故だと思います」

燃えたパジャマの写真とイラストの投稿で、みずからの体験を伝えた東京都の50代の女性。
寝坊して、慌てて台所でお茶を入れるための湯を沸かしていたときのこと。

「焦げる匂いがする。何が燃えているんだろう?」

そう思ってパジャマの袖を見たところ、火が!

すぐに水をかけて消すことができましたが、振り返ると恐怖が込み上げてきたそうです。
女性が着ていたのは、起毛した綿素材のパジャマで、写真では白っぽいパジャマの袖が茶色く焦げています。
50代女性
「火を使った料理が好きなんですが、今後はIHコンロなどに切り替えていこうかなと思います。このことがあってから、台所に入るときは、起毛素材の服は避けて、さらに袖が広がらない服を着るようにしています」
ほかにもこんな投稿が。
「ガスコンロに火をつけた瞬間にボッと。表面の毛羽立った部分が燃えたのですが、胸元まで一瞬にして広がったのでゾッとしました」
こうツイートした30代の女性に話を聞きました。

冬に片手鍋でお湯を沸かそうと、コンロの火をつけた瞬間、青い炎が一瞬で袖から胸元、背中にまで広がったといいます。

「パニックになり、何もできませんでした」

女性が着ていたパーカーは、着古していたため表面が少し毛羽立っていたそうです。

幸い、火は毛羽だった部分だけが燃えて自然と消えたため、大事には至らなかったということです。

対処方法は?

表面フラッシュが起きたり、服に火が燃え移ったりした時、私たちはどんなことに注意すればよいのでしょうか。

NITEの佐藤さんは、何よりも大切なのは慌てずに行動することだといいます。
NITE 製品安全センター 広報担当 佐藤秀幸さん
「服を脱げる場合は脱いで、例えばシンクで水をかけるなどして燃えている服の消火を試みてください。もし服を脱げない場合は、水や消火器を使って火を消してください」
服を脱ぐことができず、水や消火器も使えない場合の対処法も教えてくれました。
NITE 佐藤さん
「驚いて慌てて走り回ると、火の回りが早くなるおそれがあります。アメリカで実践されているストップ、ドロップ&ロールと呼ばれる方法が有効だとされています」
「ストップ、ドロップ&ロール」は、服に火が燃え移ったときの対処法で、その言葉どおり「止まって、倒れて、転がる」という順番の3つの行動だといいます。
まずは、火の回りを早めないためにも立ち止まる。

次に、炎は上に上がる性質があるので、頭部や気道を守るために地面に倒れ込み、燃えているところを地面に隙間ができないよう押しつける。

最後に、地面に倒れたまま左右に転がって衣服についた火を消す。その際、両手で顔を覆い、顔へのやけどを防ぐようにする。
NITE 佐藤さん
「まずは予防することが大切です。調理中は、マフラーなどは外し、すそや袖が広がっている服を着ている時は、炎に接しないように特に注意してください。火が接しても着火しにくい防炎のエプロンやアームカバーを着用することも有効です。また、炎の付近は実際に目に見えている以上に広い範囲が高温になっていて、炎に触れていなくても、燃えやすいものに着火するおそれがあることも覚えておいてください」

身近な危険に気をつけて

取材しながら、私自身も以前、ガスコンロの火が上着のフリースのすそに燃え移って、一部を焦がしてしまった経験を思い出しました。

誰にでも起こりうる身近な危険で、一歩間違えば火災にもつながっていたかもしれません。

あらためて気を付けたいと思いました。