変異ウイルス どうなっている? 対策は?

新型コロナウイルスの変異ウイルスは感染性が高まったり、ウイルスが抗体の攻撃から逃れやすくなったりするおそれが指摘されています。
国内でも感染の広がりを受けて、対策が重要になっています。

厚労省 水際対策強化へ

厚生労働省は、変異ウイルスの水際対策を強化するため、新たに合わせて13の国や地域から入国する人に対して宿泊施設での待機などを求める方針を決めました。
厚生労働省は変異ウイルスが流行している国や地域から入国する人に対し、入国後も検疫所が確保した宿泊施設で待機してもらい、3日後に改めて検査するとともに陰性でも14日間は自宅などで待機するよう求めています。
現在の対象
▽イギリスや▽南アフリカ▽イスラエル▽アイルランド▽ブラジルのアマゾナス州

新たに追加
▽UAE=アラブ首長国連邦▽イタリア▽オーストリア▽オランダ▽スイス▽スウェーデン▽スロバキア▽デンマーク▽ドイツ▽ナイジェリア▽フランス▽ベルギー▽ブラジル(アマゾナス州以外の地域も)


対策が強化されるのは5日の午前0時からで、入国前の14日以内にこれらの国や地域に滞在していた人が対象となります。

厚生労働省はほかの国や地域についても変異ウイルスの流行が確認された場合は、同様に水際対策を強化する方針です。

神戸では15%が変異株

変異ウイルスを巡って気になる調査結果が発表されました。

神戸市は先月12日からの1週間、市内で感染が確認されて検体を調べた人のうちおよそ15%でイギリスの変異ウイルスが見つかったと発表しました。

神戸市はイギリスで広がった変異ウイルスへの感染者が兵庫県内でも相次いでいることから市独自に、ことし1月1日から先月18日までの間、市内で新型コロナウイルスの感染が確認された人のうち1000人あまりの検体を市の環境保健研究所で調べました。

その結果、1月1日から1月28日の間に感染が確認された677人からはイギリスの変異ウイルスは確認されませんでした。
しかし1月29日からの1週間の感染者173人のうち4.6%にあたる8人から変異ウイルスが見つかりました。

さらに先月5日からの1週間では105人の感染者のうち10.5%にあたる11人から、そして先月12日からの1週間では79人のうち15.2%にあたる12人からイギリスの変異ウイルスが確認され感染の割合が増える傾向にあることがわかりました。

このほか、起源が不明な変異ウイルスが5人の検体から見つかったということです。
神戸市の久元市長は「緊急事態宣言は解除されたが、変異ウイルスの割合は増えている。事実を踏まえて行動変容をとっていただきたい」と注意を促すとともに、変異ウイルスの検査体制を強化する考えを示しました。
※小数点第二位切り上げ
海外では感染が小学生や中高生などにも広がっているとして、感染状況が最も深刻な地域で学校の授業をすべてオンラインに切り替えることを決めた国もあります。

イタリアではイギリスで最初に確認された変異ウイルスの感染が拡大し、先月中旬の時点で新たな感染の50%以上にのぼるということです。

2日に行われた記者会見で保健当局は変異ウイルスの感染が小学生や中高生などにあたる6歳から19歳の間でも広がっていることを明らかにし、スペランツァ保健相は感染状況が最も深刻な「レッドゾーン」に指定している地域で、すべての学校の授業をオンラインに切り替えると発表しました。

「レッドゾーン」では外出が制限され、小売店や飲食店の営業は原則として禁止されていますが、小学校と中学校では対面で授業が行われてきました。

ヨーロッパでは隣国のフランスでも変異ウイルスの感染拡大を受けて一部の地域で規制を強化するなど警戒が強まっています。
周辺国などとの国境の管理も厳格化しています。

ドイツでは感染症対策にあたる政府の研究機関が変異ウイルスの感染が拡大している地域をリスクの高い地域として指定しています。

これを受けて政府は指定された地域からの入国を制限する措置をとっていて、先月には隣国のチェコとオーストリアの西部チロル州が指定されたことから、両地域からの入国をドイツ国籍を持つ人や貨物の輸送などの目的に制限しました。

チェコでは制限のあと物流に影響が出て、国境付近では一時、ドイツに向かう大型トラックがおよそ10キロにわたって長い列をつくりました。

ドイツからの入国を規制する国も

一方で周辺国のなかにはドイツからの入国を規制する国も出ていて、隣国のデンマークでは国境に近いドイツ北部の都市フレンスブルクでの変異ウイルスの感染拡大を受け、入国管理を厳格化する措置をとりました。

フレンスブルクではことしに入ってから変異ウイルスの感染が確認され、今では新たな感染者の半数以上を占めているということです。

フレンスブルクで新型コロナウイルスに感染し亡くなった人は去年1年間で7人でしたが、ことしは先月末までの2か月間で26人にのぼっていて、ジモーネ・ランゲ市長は「変異したウイルスの感染拡大がこれほど速く進むとは想定していなかった。死者数の急増は非常に深刻に受け止めなければならない」と述べて強い危機感を示しています。

「新規感染者数抑えないと万全の体制で迎え撃てない」

変異ウイルスの国内の状況について、感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は「神戸市では1週間に調べたウイルスのおよそ15%が変異株だったと発表している。イギリスやアメリカでは流行の中心が従来株から変異株に置き換わっていて、日本でもそうなる可能性が高い。変異株の本格的な流行を防ぐため、監視体制を国内の広い範囲で強化していく必要がある」と指摘しました。

首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言については「イギリスでは、かなり強い都市封鎖をすることで変異株の流行をなんとか切り抜けられた。日本でも、第3波の感染の水準をできるだけ下げておかないと、変異株の流行と重なりすぐに第4波となってしまう。東京都の1日の新規感染者数を100人ぐらいまで抑えられないと、万全の体制で変異株を迎え撃てないのではないか」と話していました。

そのうえで濱田教授は「去年の3月はじめ頃には国内で新型コロナウイルスはそれほど広がっていなかったが、花見や送別会など、夜に街に繰り出す人も多く、3月下旬に第1波が始まった。去年と同じ行動をとると、ことしも再び感染が拡大し、変異株の流行も起きてしまう。この状況を乗り切るため送別会や花見などの行事を控えるなどいっそう気を引き締めて対策に臨んでほしい」と訴えています。