ジェネリック医薬品大手「日医工」に業務停止命令 富山県

国が承認していない工程で製造した医薬品など75品目を自主回収した富山市のジェネリック医薬品大手「日医工」に対し、富山県は品質管理などに重大な問題があったとして業務停止命令を出しました。

これは富山県が3日、会見を開いて明らかにしました。それによりますと、富山県滑川市にある日医工の富山第一工場では、品質試験で「不適合」となった製品について国が承認していない方法で再加工や再試験を行い、「適合」扱いとして出荷していたことなどが確認されました。このため、品質管理や製造に重大な問題があったとして、3日付けで医薬品医療機器法に基づく業務停止命令を出したということです。

命令の期間は5日からで主力の富山第一工場での製造を32日間、全社での販売業務を24日間にわたって停止します。医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構と県が、去年2月に抜き打ちで工場に立ち入り調査を行ったのをきっかけに日医工が外部の弁護士に依頼して調査した結果、国が承認していない工程で製品を出荷していたことなどが判明したということです。

これを受け日医工は去年4月からことし1月にかけて花粉症などの抗アレルギー薬や胃腸薬、それに糖尿病の改善のために血糖値を抑える薬など合わせて75品目を自主回収しました。
日医工によりますと、これまでに健康被害は報告されていないということです。

県によりますと品質試験で「不適合」となった製品は通常、廃棄することになっていて、県の担当者は「生産する品目が多く、製造スケジュールが詰まっている中で、不適合になった製品を廃棄すると欠品になってしまうことを強く懸念する空気があった」と指摘しました。

不適切な製造方法は10年以上前から行われていたということで、富山第一工場の幹部や担当者の間で引き継がれていたということです。

日医工 田村社長「法律の軽視があった」

「日医工」の田村友一社長は、3日午後5時からオンライン上で記者会見を開き、「行政処分を受けたことを重く受け止め、患者や家族、医療関係者などにご迷惑と心配をおかけしたことを心よりおわび申し上げます」と陳謝しました。

「日医工」の品質管理の担当幹部は、少なくともおよそ10年前から、出荷試験で「不適合」となった製品について不適切な手法で再試験を行って「適合」扱いとし出荷するなど、製品の品質試験や安全性の試験に問題があったことを認めたうえで、「富山第一工場の担当者には製品の廃棄を回避するため最終的に承認規格に達していればいいという法律の軽視があった」と述べました。

また、田村社長は、「品質保証、量的供給、安定供給の優先順位のバランスが崩れていた。成長のスピードに、品質管理体制や人材育成、教育のスピードが対応できていなかった。社長として深く反省している」と述べました。

そのうえで、再発防止策として、適正製造基準の順守を強化するほか、新年度から「製剤技術本部」を新設し、各工場の能力に合わせた生産計画の検討や、安定供給体制の構築などを進めることを明らかにしました。

また、今回の問題の責任を取って役員の月額報酬をいずれも今月から3か月、田村社長が100%、副社長以下3人について50%から30%、減らすことも発表しました。

富山県 新田知事「信頼が揺らぎかねない」

富山県の新田知事は「富山県はジェネリック医薬品の製造拠点としてだけでなく大手医薬品企業の受託製造の拠点としても高い評価を得てきた」としたうえで、「その一翼を担う日医工が法令に違反したことは残念で、ジェネリック医薬品そのものへの信頼が揺らぎかねない」と懸念を示しました。

そして、「日医工には安全安心の医薬品を適切に製造する体制を整備して信頼回復に努めるよう通知するとともに、県内のほかの医薬品企業に対しても自己点検とコンプライアンスを徹底するよう通知した」と述べました。

また、日医工の医薬品の出荷がおよそ1か月間にわたって停止されることによる影響について、「必要な医薬品が確保できるよう現在、調整を行っており、大きな混乱はないと考えているので安心してもらいたい」と説明しました。

最後に新田知事は「監督者の県としても責任を感じている。薬のまち富山として再度、足固めを行い、信頼回復のために県としてもサポートしていきたい」と述べました。

業務停止命令受けた「日医工」とは

富山市に本社を置く医薬品メーカーの「日医工」は昭和40年に設立されました。

平成17年の法改正で医薬品の製造の外部委託が完全自由化されたことを受けて、積極的に設備投資を行って生産を拡大し平成22年には東証一部に上場しました。

その後もジェネリック市場の拡大にあわせるように売り上げを伸ばし、去年3月期の売り上げはおよそ1900億円にのぼりこの10年でおよそ3倍に急増しました。

また、先月イスラエルの企業と武田薬品工業が出資する会社のジェネリック事業を買収するなど平成12年に田村友一社長が就任して以降、9回にわたって買収や出資を繰り返し、製造と販売いずれも国内で業界トップクラスの規模となりました。

現在、国内には富山県滑川市にある主力の「富山第一工場」など8つの工場があるほか海外にも生産拠点があり、従業員の数は去年3月時点で1954人となっています。

ホームページで「超品質」とスローガン

日医工は東証1部に上場し、沢井製薬や東和薬品と並んでジェネリック医薬品業界では大手3社の1つに数えられています。

会社のホームページによりますと去年3月期の売り上げは1900億7600万円にのぼっています。

日医工はホームページで「超品質」というスローガンを掲げ、「患者様や医療関係者の方々に安心してご使用いただけるよう、優れた品質と高い安全性をもったジェネリック医薬品を安定してお届けすべく、日々さまざまな試験を行ってすべての製品とその製造工程を厳しくチェックし、より優れた製品をご提供できるよう常に目指しています」などとしています。

現役社員が告白「売り上げ第1主義というのはやはりあった」

日医工の現役社員の男性が匿名を条件にNHKのインタビューに応じました。

男性は今回の処分について「当然のことで、来るべきときが来たと思います。安定供給を優先して品質がおろそかになっていたということは社内でも共通の認識でした」と話しています。

また、会社の方針について「売り上げ第1主義というのはやはりあったと思います。売り上げ第1主義というのはやはりあったというのはすごく感じていました。『ことしは売り上げ何千億まで行く』というような目標が最初に出てくるような風土で『とにかく売れ』という印象が強いです」と証言しました。

品質管理の実態については「担当の社員からは『土日もすべて働かなければならず、品質をまともにチェックすると全く業務が回らない状態だった』と聞いています。承認書に沿って製造すると間に合わないようなスケジュールで、承認書通りに作らない状況が常態化していたそうです。品質管理の担当者のキャパシティーを超えた状態だったと思います」と話しています。

また、今回の問題には、ジェネリック医薬品の業界を取り巻く状況も影響しているのではないかと指摘しています。

社員の男性は「ジェネリック医薬品の使用割合を80%に引き上げるという国の目標の中で各社が競争してきましたが、薬価が下がり続けているのでその分、値引きの競争も激しくなっていました。今では、ほとんど利益が出ないような状態で、数量を作らないともうからない、『薄利多売』の状態になっていました」としています。

後発医薬品「ジェネリック医薬品」とは

ジェネリック医薬品は「後発医薬品」とも呼ばれ、先発医薬品の特許が切れたあとに製造販売されます。

先発医薬品と同じ有効成分を含んでいるため同様の効果が期待され、研究開発にかかる費用が抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が安くなっています。

このため、患者の負担の軽減だけでなく増え続ける医療費の削減にもつながるとして、国は、平成19年に利用の促進に向けた計画をまとめるなど普及を後押ししてきました。

使用割合を去年9月までに80%にするという目標も打ち出していて、日本ジェネリック製薬協会によりますと、去年7月から9月の第2四半期の速報値は78.9%となっています。

厚生労働省によりますと、ジェネリック医薬品の普及が進んだことで、おととしには1兆6000億円余りの医療費が軽減されたということです。

ジェネリック医薬品の薬価は下がり続けていて、今年度は先発医薬品の50%程度となっています。

製薬業界詳しい専門家「品ぞろえ優先の結果 無理生じたのでは」

製薬業界に詳しいいちよし経済研究所の吉田正夫主任研究員は「ジェネリック医薬品は差別化が難しく差別化を図るためには品揃えを豊富にして安定的に供給できるかがポイントになる」としたうえで今回の問題については「生産能力が限られる中で品ぞろえを優先して工場を稼働させ続けた結果、無理が生じたのではないか」と指摘しました。

また国内でおよそ190社がひしめく業界の現状について「同じ薬を多くのメーカーが作っていても効率が悪くなる。今回の問題を受けて品質面での管理の徹底が今まで以上に求められるのと同時に毎年の薬価改定で利幅が減っていくことも見込まれるので今後はある程度各社がすみ分けができるよう業界再編を進めていく必要がある」と述べました。

医薬品政策に詳しい専門家「市場全体に対する影響も懸念」

医薬品政策に詳しい神奈川県立保健福祉大学大学院の坂巻弘之教授は「日医工は多品目・少量生産が多いジェネリック医薬品で強く求められる工程や品質の管理を十分にできていなかった。市場全体に対する影響も懸念される」と指摘しました。

一方、業界で行政処分が相次いでいることについては「ジェネリック医薬品のメーカーの中でも非常に優れた製造プロセスを構築して安心できる供給体制を作っている会社も多い。ジェネリック医薬品全体の問題として考えるのではなく、日医工がなぜこういった問題を起こしたのかきちんと分析することが必要になる」と述べました。

そのうえで「ジェネリック医薬品は医療費を抑制できるというメリットとともに、節約できた医療費を非常に高額になる新医療技術などにまわすことで医療全体の効率性をあげられる」として日本の社会保障と医療制度の持続可能性を高めるためにも今回の問題で生じた不信感を払拭(ふっしょく)してジェネリック医薬品をさらに拡大していくことが重要だという見解を示しました。

富山県 医薬品を1兆円産業に成長の方針打ち出す

富山県では「売薬さん」と言われる薬売りが各家庭を回って売り歩く配置薬業が江戸時代から続く伝統産業でその歴史はいまも脈々と受け継がれています。

県によりますと、県内の医薬品メーカーは新薬開発やジェネリック、大衆薬などおよそ80社に上り、県の基幹産業になっています。

令和元年の医薬品生産金額は6900億円余りと全国トップクラス。

国が高齢化に伴って増え続ける医療費を抑制するため価格の安いジェネリック医薬品の普及を進める中、ジェネリックに強い富山県の企業も年々、売り上げを伸ばしてきました。

その一方で人口減少にともなってジェネリック医薬品の需要は伸びが鈍化しています。

このため県は、平成30年に産官学連携による共同事業体を設立し、将来的にジェネリック医薬品だけに依存しないよう世界水準の医薬品の研究開発や、グローバル化に対応した専門人材の育成などを進め、1兆円産業に成長させる方針を打ち出していました。