新型コロナ 変異ウイルスにもワクチンは効くの?

WHO=世界保健機関は、イギリスで見つかった変異ウイルスについては、ファイザー、モデルナ、それにアストラゼネカのワクチンの効果に大きな影響はないとしています。一方で、南アフリカとブラジルで見つかった変異ウイルスについては抗体の攻撃から逃れる変異があることから、ワクチンの効果が弱まるおそれが指摘されていて、各メーカーはワクチンの効果への影響を調査しています。

ファイザー「効果示す実験結果 得られた」

アメリカの製薬大手ファイザーは、イギリスと南アフリカで見つかった変異ウイルスについて、ワクチンの効果を示す実験結果が得られたと発表しています。

会社側はすでにワクチンを接種した人の抗体を使って細胞での実験を行っていて、イギリスで見つかった変異ウイルスに効果があることを示す実験結果が得られたとしました。

南アフリカで見つかった変異ウイルスについては、実験では抗体がウイルスを中和する効果が3分の1になったということですが、会社側はこの変異ウイルスがワクチンの攻撃を逃れる証拠はないとしていて、引き続き詳しい検証を行っていくとしています。

さらにこの変異ウイルスについてファイザーとビオンテックは2月25日、ワクチンの効果を確かめるため3回目の接種を行う臨床試験を始めると発表しました。

モデルナ 南ア型に対応のワクチン候補製造

アメリカの製薬会社モデルナも、自社で開発したワクチンについて同様の実験を行っています。

それによりますと、イギリスで見つかった変異ウイルスに対する効果に目立った変化はありませんでしたが、南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては抗体の働きを示す値がおよそ6分の1に減少したとしています。

ただ会社では、いずれの変異ウイルスに対しても抗体の働きはワクチンとして必要なレベルは上回っていたとしています。

モデルナは今月24日、南アフリカで見つかった変異ウイルスに対応したワクチンの候補を製造し、臨床試験を行うためアメリカの国立衛生研究所に出荷したと発表しました。

従来のワクチンを使って3回目の接種を行うことで、効果を高める方法なども検討するとしています。

アストラゼネカ「重症化防ぐ効果あると確信」

イギリスの製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンについては、オックスフォード大学などのグループが、イギリスで見つかった変異ウイルスに対しては変わらない効果が見られたという調査結果を公表しています。

南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては、初期の臨床試験の結果、軽度から中程度の症状を防ぐ効果が著しく下がったという情報がある一方で、会社側は「重症化を防ぐ効果があると確信している」としています。
いずれのワクチンも、変異ウイルスに対する効果は実験室での実験や少人数の臨床試験だけでは分からないことも多く、WHOはより多くのデータで詳しく分析する必要があるという認識を示しています。

新型コロナウイルス 「変異」とは?

多くのウイルスは感染を繰り返すうちに遺伝情報にごく小さな変異が起こります。

新型コロナウイルスでは2週間に1か所ほどのペースで小さな変異が起こることがこれまでの研究で分かっていて、ほとんどの場合こうした変異はウイルスの性質には影響がありません。

しかしイギリスで確認された変異ウイルスと南アフリカで広がった変異ウイルス、ブラジルから日本に到着した人から見つかった変異ウイルスは、いずれも変異によってウイルスの性質が変化していると考えられています。

変異でリスク上昇の可能性 指摘する研究も

この3つに共通しているのは、新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際の足場となる「スパイクたんぱく質」の遺伝情報に「N501Y」と呼ばれる変異が起こり、アミノ酸が変化していることです。

国立感染症研究所によりますと、このうちイギリスで確認された変異ウイルスでは感染のしやすさが最大で70%程度高くなっているおそれがあるということです。

イギリスからの報告では通常のウイルスと比べて入院率や死亡率に差は見られなかったとされていますが、死亡リスクの上昇と関連している可能性を指摘する研究もあるということです。

さらなる変異も

これとは別の変異も最近注目されています。

南アフリカで確認された変異ウイルスとブラジルで広がった変異ウイルスでは「N501Y」の変異に加えて「E484K」と呼ばれる変異が確認されています。

この「E484K」の変異があると、ウイルスが抗体の攻撃から逃れやすくなると考えられていて、細胞を使った実験でも抗体の効果が弱まったという報告があります。

さらに最近になって国内で「N501Y」の変異はなく「E484K」の変異がある新たな変異ウイルスも確認されていて、海外から入ってきたとみられていますが詳しい起源は分かっていません。

変異ウイルスを巡っては、現在使われているワクチンの効果に影響が出ないかや、1度感染した人が再び感染するおそれがあるのではないかといった懸念が出ていますが、まだ詳しくは分かっていません。

影響については、現在、詳しい調査や研究が進められています。