新型コロナ 国内でも広がる変異ウイルス 監視体制強化へ

変異した新型コロナウイルスへの感染が各地で確認される中、政府は来月から全国の地方衛生研究所で変異ウイルスを短時間で検出する検査を実施するなど、国内の監視体制の強化を図ることにしています。

変異した新型コロナウイルスに国内で感染が確認された人は、イギリスで報告された変異ウイルスを中心に、今月25日までの時点で、空港検疫で見つかった分も含めて202人となっています。

このうち日本でも見つかっている「E484K」と呼ばれる変異が確認されたウイルスはワクチンの効果が低くなる可能性が指摘されていて、専門家からは対策の強化を求める声が出ています。

菅総理大臣は26日、政府の対策本部で「来月から変異株を短時間で検出できる新たな方法の検査をすべての都道府県で実施し、国内の監視態勢を強化して引き続き十分に警戒していく」と述べました。

政府は変異ウイルスの遺伝情報を調べる「ゲノム解析」について、国立感染症研究所の人員を増やすなどして1週間当たり最大800件程度にまで解析能力を高めています。

さらに来月からは全国の地方衛生研究所で変異ウイルスを短時間で検出するPCR検査を実施できるよう態勢の整備を進めるなど、国内の監視体制の強化を図ることにしています。

日本国内での広がりは

新型コロナウイルスの変異ウイルスは、日本では去年の12月に空港検疫で初めて確認され、その後国内で広がりをみせています。

厚生労働省によりますと、各地で見つかった感染者は、今月25日の時点で200人を上回っています。

変異ウイルスは日本では去年12月25日に空港の検疫で初めて確認されました。

厚生労働省によりますと、今月25日の時点で国内で153人、空港検疫で49人の合わせて202人の感染が確認されているということです。

厚生労働省に助言する専門家会合で示された資料によりますと、変異ウイルスの種類については、今月22日までに空港検疫を除くと17都府県で合わせて135人の感染が確認され、このうちイギリスで広がったタイプが129人とほとんどを占めていたということです。

南アフリカで確認された変異ウイルスへの感染は4人、ブラジルで広がった変異ウイルスへの感染は2人にとどまりました。

海外の滞在歴がない人たちの感染も相次いで確認されていて、埼玉県や兵庫県などでは感染者の集団=クラスターも発生しています。

専門家 “再拡大を防ぐため監視体制の強化必要 ”

首都圏を除く6つの府県で緊急事態宣言が解除されるなど国内の新規感染者数は減少傾向となっている一方で、感染の再拡大を防ぐために変異ウイルスへの対応が重要なポイントとなっています。

26日に開かれた感染症の専門家などでつくる諮問委員会では、緊急事態宣言が解除される地域では感染を再び拡大させないために変異ウイルスの監視体制の強化が必要だと強調されました。

会合のあとの会見で諮問委員会の尾身茂会長は「最も大きな懸念は、感染力が強い可能性のある変異ウイルスが、国内でもほぼ間違いなく従来のウイルスから置き換わるプロセスが始まっているということだ」と指摘しました。

厚生労働省の専門家会合では、民間の検査機関や大学などとも連携して監視体制を強化したうえで、変異ウイルスが見つかった場合には保健所が感染経路を特定して速やかに対策をとる必要があると指摘しています。

政府の分科会も今月25日にまとめた提言で、変異ウイルスかどうかを調べる検査体制について、国に対し、行政検査で見つかったウイルスだけでなく自費検査を行っている民間の検査施設に対しても検体を提出してもらうよう要請することや、検査を担っている国立感染症研究所などへの人的支援を行うことなどを求めています。