山火事の恐怖 火の手は今日もどこかで…

山火事の恐怖 火の手は今日もどこかで…
栃木県足利市で発生した山火事は、懸命な消火活動にもかかわらず、広大な山林が延焼。大きな被害が出ています。こうした山火事は全国で1日平均3件以上発生し、私たちの身近な恐怖でもあるんです。山火事の実態と危険に迫ります。
(ネットワーク報道部 記者 井手上洋子/玉木香代子/高杉北斗)

広がる山火事

今月21日、足利市で発生した山火事は空気が乾燥する中、延焼が続き、火の手は住宅街にも迫っています。

発生から5日目の26日午後3時の時点で、100ヘクタール余りが焼けました。東京ドーム20個分以上の面積になります。
地上からに加え、自衛隊がヘリコプターで上空から消火活動を行っていますが難航。山中にある木造の神社が全焼したほか、住宅にも危険が迫り、26日までに300世帯以上に避難勧告が出されました。

難しい“消火活動”

足利市で山火事が発生しているのと同じ頃、東京 青梅市や、群馬県桐生市、愛媛県砥部町など、各地で山火事が起きました。

こうした山火事は、市街地の住宅火災と異なり、消火栓や防火水槽へのアクセスが悪く、地上からの消火手段がかぎられるため、消火が難航することが多いということです。

上空からの放水も、風が強い中では水が広がって直接火を消す効果が弱まる場合があり、すぐに火を消し止めにくいということです。

山火事 海外でも

大規模な山火事というと海外のケースを思い浮かべる方も多いかもしれません。

アメリカ西部では、去年の夏以降カリフォルニア州やオレゴン州などの各地で山火事が相次ぎました。
カリフォルニア州では、消失面積が東京都のおよそ7倍の145万ヘクタール余りとなり、史上最悪の規模といわれています。

少なくとも36人が亡くなり、瞬く間に迫る火の手に逃げ遅れる人が相次ぎました。
オーストラリアでもおととしから、空気の乾燥もあって南東部を中心に森林火災が相次ぎました。

野生動物のコアラも犠牲になり、山火事は自然環境に甚大な影響を与えました。

毎日3件以上が発生

林野庁によりますと、おととし日本全国では1391件の山火事が発生しました。
過去5年間の平均ではおよそ1200件。
毎日全国のどこかで3件以上の山火事が起きている計算になり、決してひと事ではないことがわかります。

出火原因は…

山火事の出火原因をみてみます。
▽「たき火」が373件と最も多く全体の30.2%、
次いで
▽野焼きなどの「火入れ」が216件で17.5%、
▽疑いも含む「放火」が104件で8.4%、
▽「たばこ」が63件で5.1%と、
全体の6割余りが人為的なものとなっています。

発生時期にも特徴が

山火事は全体の7割が1月から5月にかけて発生しています。

この時期には山の中に枯れ葉が積もっていて燃えやすい状態になっていることに加え、風が強く、空気が乾燥しているといった自然条件が重なることが原因だということです。

また、春にかけて山菜採りやハイキングなどで山に入る人が増えることで、たばこの火の不始末のリスクも高まるということです。

ちょっと目を離した隙に…

このように人為的な山火事が多い中、私たちも当事者にならないよう気をつけなければなりません。

SNS上にも屋外で火を使っていたところ意図せず火が燃え広がり、危ない目に遭ったという投稿がありました。
「野焼きしてたら、ちょっと目を離した隙に大炎上してた」
「畑にまで火が広がってきて焦った」
「母の実家で野焼きしていたら火事になりかけた。火は難しい」

キャンプでヒヤリ

このコロナ禍でキャンプにも人気が集まっていますが、日本キャンプ協会の高橋宏斗さんも、以前、屋外の火でヒヤッとする経験をしました。

キャンプをした日の深夜、炭捨て場に捨てられた炭の山でじわじわと火が広がり、炎が上がったのです。

居合わせた人たちでバケツリレーをして消火し、大事にはなりませんでしたが、肝を冷やしたそうです。
夕方の炊事のあと、完全に火が消えない状態の炭を炭捨て場に捨ててしまったのが原因でした。

炭の火が消えたと思って捨てたら、実は完全に消えておらず、5時間後にメラメラと燃えていたということです。

本来、捨てるべき所の炭捨て場でさえ危険が潜んでいたのです。

しっかりと消火を確認しなければならないことを再確認したと言います。
日本キャンプ協会 高橋宏斗さん
「炭捨て場はレンガで囲われていたものの、近くの立ち木に引火すれば危うく火事になるところでした。炭は見た目で火がついていないように見えても熱を出し続けます。バケツの水に入れて完全に消えたことを見守ることが大事です。特に乾燥する季節なので、火を使う際には十分気をつけてほしいです」
たばこの投げ捨てをしないのは言うまでもなく、屋外で火を使う際は、自治体などが定めたルールを守り、強風や周りに燃えやすい物がないかをしっかり確認し、消火の態勢を万全にすることが重要です。

山火事の損失は大きい

森林は地球温暖化の主な原因の二酸化炭素を吸収し、酸素を供給する貴重な資源です。

しかし山火事によって一度焼失してしまうと、回復させるには長い年月や多くの労力がかかります。
さらに、火事によって被害を受けた森林は保水力を失うため、大雨の際には土砂崩れなどの自然災害が発生し大きな被害につながる恐れもあるということです。

山火事は、発生時の被害はもちろん、その後の損失も大きいのです。

一人ひとりが注意を

林野庁と消防庁は、例年最も山火事が多い3月の1日から1週間「全国山火事予防運動」を行い、火の取り扱いに注意するよう呼びかけています。
林野庁の担当者
「山火事のほとんどは、私たちの不注意によって起きています。一人ひとりが火の取り扱いを注意すれば、山火事を防ぐことができるということでもあります。大きな被害を出さないため、大切な資源を守るために、屋外で火を使う際には、消火用の水を用意するとかその場から離れないといった基本的な注意点を守ってください」
山火事は、一度燃え広がると、消すことは非常に困難です。

やむをえず屋外で火を使うときにはしっかり周りの状況を確認し、火の取り扱いに十分注意しましょう。