緊急事態宣言 首都圏除く6府県2月末で解除の方針 諮問委が了承

緊急事態宣言について感染症の専門家などでつくる諮問委員会が開かれ、対象地域の10都府県のうち首都圏を除く6つの府県で、今月末の28日で解除する方針が了承されました。政府は26日夜、対策本部を開いて決定することにしています。

新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言について、政府は感染状況や医療提供体制などを踏まえ、対象地域の10都府県のうち、大阪、兵庫、京都の関西3府県と、愛知県、岐阜県、それに福岡県の6つの府県で、今月末の28日で解除する方針を固め、感染症の専門家などでつくる諮問委員会に諮りました。

この中で西村経済再生担当大臣は、6府県について「新規陽性者数は減少が続き『ステージ2』相当になっており、医療提供体制の負荷の軽減も見られる」と述べました。

一方、首都圏の1都3県については「感染状況や医療提供体制への負荷の状況を見ると、いまだ『ステージ4』の指標を示しているところもある。引き続き感染防止策のさらなる徹底を図っていく」と述べ、宣言を継続する考えを示しました。

そして「関西圏、中京圏、福岡県は、解除をお諮りするが、『これで大丈夫』ということではない。今後も流行の波は起こりうるが、大きな波にしないよう感染再拡大を防止する策を徹底することが大事だ」と述べました。

一方、田村大臣は「解除した場合、リバウンドを誘発することへの懸念に留意する必要があり、各府県から要望が来る中で、国と連携して、各府県が覚悟を持ってしっかりと感染拡大を止めるための対応をお願いしたい」と述べました。

諮問委員会は先ほど終了し、政府の方針が了承されました。

これを受けて政府は国会での報告と質疑を経て、26日夜6時すぎから対策本部を開いて、6つの府県の宣言の解除を決定することにしています。

政府“宣言解除後も入国制限措置当面継続の方針”

政府は、緊急事態宣言がすべての地域で解除されたあとも、外国人の入国制限措置を当面続ける方針で、感染状況などを注視しながら、ビジネス関係者らの往来などを緩和できるかどうか慎重に検討を進めることにしています。

宣言が解除された際の水際対策への対応について、茂木外務大臣は、閣議のあとの記者会見で「先にビジネス関係者の往来などの停止を発表した際、国民の不安を予防的に取り除く観点も踏まえ講じた措置だと説明した。今後宣言が解除される場合の水際対策については、内外の状況も踏まえつつ判断をすることになる」と述べました。

尾身会長「了承するが医療提供体制強化を」

諮問委員会の尾身茂会長が会議のあと報道陣の取材に応え、6つの府県で、緊急事態宣言の解除が提案されたことについて「感染がリバウンドすることへの強い危機感から会議で懸念が示され、解除は1週間、延ばすべきではないかという意見もあった。結論としては6府県での宣言の解除は了承するが、条件として解除となった地域では▽変異株の監視や▽隠れた感染源を深掘りするための調査、▽医療提供体制を強化することなどをやっていただきたい」と述べました。

岡部会長代理「相当 懸念事項ある」

諮問委員会の会長代理を務める川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、記者団に対し「相当、懸念事項もあり、政府にやってもらいたいこともあるが、全体としては数字上の条件は満たしたので、方針は了承した。今後、ワクチン接種が大々的に行われる中で、軽症であっても新規感染者がまた爆発的に増えることが心配で、変異株に対しても引き続き慎重なフォローが必要だ」と述べました。

日本医師会 釜萢常任理事「適切な対応 条件で了承」

日本医師会の釜萢敏 常任理事は記者団に対し「前倒し解除が本当によいかは、慎重に検討すべきだと申し上げた。解除という強いメッセージが伝わるので、日本全体に悪い影響が出てはならない。今後、適切な対応をするという条件を付けて、今回の解除を了承したと理解している」と述べました。

一方、首都圏の1都3県への対応について「まだ、かなり懸念が多いので、宣言の解除を1週間後にできるとは、私自身はとても思わない」と述べました。

竹森委員「手綱を緩めることが許される段階にはない」

経済の専門家の立場で諮問委員会の委員を務める、慶應義塾大学の竹森俊平教授は記者団に対し「『これで感染は鎮圧した』ということではない。宣言の解除が、歓送迎会や花見を行うなどの心理的な解放につながらないように、厳しいメッセージを発信することが大事だ。手綱を緩めることが許される段階にはない」と述べました。

西村経済再生相「いわば条件付きの解除」

西村経済再生担当大臣は、諮問委員会のあと記者団に対し「関西圏、中京圏、福岡県は、緊急事態宣言の解除ということで、了解をいただいたが、さまざまな懸念も示された」と述べました。

そのうえで、▽変異したウイルスにしっかり対応することや、▽確保している病床を直ちに解除しないこと、▽クラスター対策を講じられるよう保健所の体制を強化することなどについて、宣言が解除される地域の知事に文書で示し、国と一体となって感染の再拡大の防止に取り組むことを前提に了承を得たと説明しました。

そして「宣言の解除が心理的な影響を与える可能性があるので、若い世代に感染防止策を引き続き徹底するようメッセージを発信してほしいという話もあった。いわば条件付きの解除であり、国としても都道府県と連携しながら感染の再拡大を防いでいきたい」と述べました。

田村厚労相「全体として条件付き」

田村厚生労働大臣は、諮問委員会のあと記者団に対し「最終的に了解はいただいたが、医療機関の体制が十分なのかや、解除による緩みでリバウンドが起こる可能性があること、変異株への懸念などから解除すること自体、消極的な意見が多くあった。全体として条件付きなので、解除後もしっかりと危機意識を持ったうえで、年度末などにいろいろなイベントがあると思うが、感染拡大をしないような対応をしてほしい」と述べました。

加藤官房長官「1都3県は引き続き対策徹底図る」

加藤官房長官は、午後の記者会見で「東京、埼玉、千葉、神奈川については、引き続き、感染状況や医療提供体制、公衆衛生体制に対する負荷が、いまだ『ステージ4』の指標を示しているところもあり、緊急事態措置を実施すべき期間の終期である来月7日に向けて、引き続き、感染防止策のさらなる徹底を図っていく」と述べました。

そのうえで「宣言解除の要否については、感染状況や医療提供体制の状況などを踏まえ、自治体とも緊密に連携しながら政府内で検討し、諮問委員会の意見も十分踏まえて、総合的に判断していく。いずれにしても、高い緊張感を持って、1都3県の状況を注視し、専門家の意見を踏まえながら、状況をよく見て判断していきたい」と述べました。

立民 枝野代表「菅首相会見せずは責任放棄」

立憲民主党の枝野代表は、記者会見で「解除自体は歓迎すべきことなのかもしれないが、厳しい状況が抜本的に変わるわけではなく、普通の生活に戻っていいという間違ったメッセージが国民に伝わるリスクを背負っている。当然、菅総理大臣みずからが記者会見し、丁寧に強いアピールをしないといけない局面なのに行わないのは信じられず、責任放棄だ」と批判しました。

また、記者団が、菅総理大臣の長男らから接待を受けていた山田内閣広報官が記者会見の司会を務めることから「山田広報官隠し」ではないかという指摘もあると質問したのに対し「そのようなことを指摘されること自体、広報官としていかがなものか。職務を果たし得ない状況になっていることは明確だ」と述べました。