とにかくゴミを減らしたい

とにかくゴミを減らしたい
スーパーで食料品を買う時。いつものパッケージ入りではなく、自分で容器を持ち込んで必要な量だけ買えるとしたら、便利だと思いますか?それとも、いちいち容器を持っていくのは不便?

新型コロナによる生活スタイルの変化で、弁当容器などのプラゴミ=プラスチックゴミが急増する今、“売る側”の企業は、あの手この手で対策をひねり出していますが、本当にゴミは減っていくのでしょうか。(経済部記者 吉田稔)

コロナ禍で増えるプラゴミ

東京・港区内で収集されたプラゴミが分別・リサイクルされる「みなとリサイクル清掃事務所」。2月のある日、積み上がったプラゴミの量は、10トンにものぼっていました。コロナ禍を背景に、その量がどんどん増えているというんです。

去年4月の緊急事態宣言の際は、前年同期比で15%以上増加。感染がやや落ち着いた7月以降も増加傾向は続き、年間で8%も増えました。
在宅勤務の広がりや、外食を控えて自宅での食事が増えたことがその要因とみられています。

カップめんの容器だけでなく、最近増えているレストランのテイクアウトや宅配で使われる容器も多く見られました。コロナによるライフスタイルの変化が、実はゴミ問題ではマイナスに影響しているんです。

リサイクル業者などでつくる「日本容器リサイクル協会」によりますと、契約している全国の自治体からのプラゴミの引き受け量は、2020年度、この10年でも最多水準で推移しているのです。

“量り売り”で、減らす

放っておけば、増え続けかねないプラゴミ。その削減に、本気で取り組もうという企業の動きも広がっています。

無印良品のブランドで知られる日用品チェーン大手の良品計画が始めたのが、「量り売り」です。東京・有明に去年12月オープンしたばかりの関東圏最大という店舗の一角にそれはありました。
透明のケースに入れられて並んでいるのは、パスタやコメ、ナッツやドライフルーツなど60種類の食品。20グラム以上なら1グラム単位で購入できます。持ち帰りに使うのは紙袋。必要な商品を、必要な量だけ購入してもらうことで、むだな買い物、不必要なゴミを減らそうという提案です。

そういえば私が子どもの頃、近所の駄菓子屋さんで、口の広い容器に入ったアメやチョコレートが売られていたのを思い出して、ちょっと懐かしくなりました。
ただ、担当の榊かおるさんによると、「量り売り」は見た目ほど簡単ではないそうです。

従来、プラスチック製の袋に密封されていたものを透明のケースに移し替えたことで、空気に触れやすい形で売ることになり、湿気や酸化による味の変化や商品の劣化が進みやすくなります。このため、毎日品質をチェックする必要があり、店頭での管理の手間暇は従来とは比べ物にならないそうです。

また、商品も数百種類の候補の中から、管理に適したものを厳選しています。今並んでいる60種類は榊さんのことばを借りると「量り売りのエリート」。どんなものでも量り売りができるというわけではないのです。

それでも、この量り売り、まだ始まって3か月ほどですが、消費者からは「環境問題に取り組んでいる意識を持てる」と好評だそうです。
榊さんも「企業としてプラゴミの削減に取り組むことはもちろん『小売り』という業態としては、お客様にプラゴミ削減の場を提供し、買い物を通して環境への意識高めてもらう機会を提供することが大事なんです」と話していました。

“無限リサイクル”で、減らす

ペットボトルの削減と言えば思い浮かぶのが「マイボトル」。水やコーヒーを入れて持ち歩いている方も多いと思います。

しかし炭酸飲料などは、まだまだペットボトルが中心。飲料業界は、長年、回収したボトルのリサイクルに力を入れてきました。
「PETボトルリサイクル推進協議会」によると、国内でのペットボトルのリサイクル率は85.8%に達しています。食品用のトレーや衣類などさまざまな形で再生されています。

ただ、ボトルとしてリサイクルしている割合は24%余り。実は、回収されたボトルを溶解し、不純物を取り除いたうえで、再びボトルに再生しても、不純物を100%取り除くのは難しく、若干黒ずんでしまう難点があるんです。
このため今の技術では、ボトルからボトルへの再生は数回程度しかできません。

回収されたあと、ボトル以外の食品トレーなどにリサイクルされると、最終的には焼却処分にまわることになります。

ボトルへとリサイクルを続けていけば、結果として廃棄されるプラゴミの削減につながりますが、回収→溶解→再生の過程で出る不純物をどう取り除くのかが、まさに「ボトルネック」となっているわけです。

ボトルをボトルとして再生し続ける、いわば「無限リサイクル」をどう実現するのか。その難題を克服する技術に今、飲料大手のキリンと化学品大手の三菱ケミカルが取り組んでいます。
両社がリサイクル工程に導入するのが「化学分解」と「精製」という工程。「化学分解」では、ペットボトルを原料レベルにまで分解します。そして、「精製」は分解した原料だけを取り出す過程です。

ほぼ純粋にペットボトルの原料となる部分だけを使ってボトルを再生するわけですから、原料からボトルを作ることと品質的には差がないそうです。
キリンパッケージイノベーション研究所の石田英克所長は、従来のリサイクルは「氷をいったん水に溶かしたうえで、再度凍らせる作業」、新たなリサイクル技術は「氷を溶かしたうえで、蒸発させて水蒸気だけを取り出し、再び凍らせる作業」と例えています。その純度がおわかりいただけると思います。

ただ、この技術は、やはり従来工程に比べれば手間とコストがよけいにかかります。キリンと三菱ケミカルは数年内に実用化にこぎ着けようと、今も研究を重ねています。

消費者も問われる本気度

新型コロナウイルスが猛威を振るう中ではありますが、積もり積もった社会的な課題は並行して進行しています。ゴミの問題も「コロナで大変だから、そっちはちょっと待って」とはいかないのが実情、というよりも、むしろ状況は待ったなしになっています。

プラスチック製品を売る側の立場にいる良品計画の榊さんは、「消費者が考えるきっかけを作るのが小売りの責任」と言っていました。私たち消費者の側も、一人一人何ができるのか、考えて行動していくことが必要なのではないでしょうか。
経済部記者
吉田 稔
平成12年入局
北九州局、中国総局などを経て流通・食品業界の取材を担当