コロナ対策で着ぐるみ 婚活 五輪… いったいなぜ?

コロナ対策で着ぐるみ 婚活 五輪… いったいなぜ?
自治体のマスコットキャラクターの着ぐるみ製作に婚活、そして東京オリンピックの機運醸成。一見、何のつながりもないようにみえますが、実はいずれも新型コロナウイルス対策の交付金が使われています。どう関係があるのか聞いてみました。
(函館放送局 記者 渡邉健/ネットワーク報道部 記者 成田大輔・加藤陽平)

交付金の使いみち調べられます

新型コロナ対策のための交付金は「地方創生臨時交付金」といいます。国はこれまでに4兆5000億円を予算に計上し、地方自治体に活用を呼びかけています。

対策の最前線にある自治体には必要な資金ですが、実際どう使われているのでしょうか。

あるウェブサイトを手がかりに調べてみました。
サイトの名前は「地方創生図鑑」。去年11月に内閣府が開設しました。
新型コロナ対策の交付金の情報が誰でも簡単に調べられるようになっていて、例えばキーワード検索で「マスク」や「PCR」と入力してみると、マスクの購入やPCR検査施設の開設、ドライブスルー方式の検査の実施など、まさに感染防止に必要な事業がずらっと並びます。

主な使いみちは、2次補正予算までの時点でこうしたマスクや消毒液の確保、医療体制の強化などに合わせておよそ6500億円。企業の資金繰り対策や事業継続に困っている事業者への支援などに1兆6000億円余りなどとなっています。(内閣府まとめ)

いま注目のあのワードも

ほかにどのような事業があるのか。注目度が高いこんな単語で調べてみました。

「オリンピック」。
すると数は多くありませんが、東京オリンピック・パラリンピックの「機運を醸成する」という事業や「聖火の展示」「ホストタウン推進」といった事業が出てきます。

交付金を申請した理由を自治体に聞いてみると、こんな回答でした。
「新型コロナのせいで延期になってしまった大会の機運醸成のためなので交付金を充てるのは適当だと考える」
「コロナの影響でスポーツ業界が落ち込んでいる部分があり、盛り上げるために交付金を申請した」

まだまだあった意外な使いみち

そういえば、結婚式を延期せざるをえなかった人も多かったはず。試しに「結婚」と検索してみると17件がヒット。

もっとも多かったのは結婚式ではなく、これから結婚する人の“婚活”を支援する事業で6件ありました。
このうち秋田県は、去年10月からオンラインでの婚活サイトを立ち上げていました。
これまでに27回セミナーやイベントを開き、およそ200人が参加。国からの交付金は1153万円でした。

コロナ対策と、どのような関係があるのかたずねてみると…
秋田県の担当者
「対面の婚活イベントはできなくなったが、コロナ禍でも人と出会いたい、結婚したいというニーズはある。そこに応えたい」
一方、福岡県は対面型の婚活イベントにも交付金を充てていました。
その額は7290万円。
会場に設置するアクリル板やポスターなどの費用をイベントの主催団体に助成しているそうです。
福岡県の担当者
「対面の婚活イベントでも飲食タイムとトークタイムを分け、話をするときも距離を取ってマスクをつけています」
福岡県では1月13日から緊急事態宣言が出され、不要不急の外出の自粛が呼びかけられていますが…。
福岡県の担当者
「宣言が出てからはオンラインで行うよう呼びかけているが、それ以前から企画している対面イベントの開催については主催者の判断に任せている。イベント会場の結婚式場や飲食店を支援している面もあり、会場に集まってからオンラインという形式もある。イベントを一律で禁止しているわけではなく、その代わり感染対策は徹底してもらっている」

キャラクターも“増員”

交付金は、こんなものにも使われていました。
自治体のイメージキャラクターの着ぐるみの製作です。合わせて3つの自治体が作っていました。

いったい、なぜ?

市の公式キャラクター、ツルをかたどった「じょうづるさん」を製作した茨城県常陸太田市の担当者に聞いてみました。
夢を奪うような話で恐縮ですが、着ぐるみの中には市の職員などが交代で入っているそうです。

しかし、同じ着ぐるみを着回すと、中に入る職員の感染リスクが高まると考え、交付金82万円を使って2体目を作ることにしたそうです。

また、着ぐるみは子どもたちが近寄ってくるので、感染予防に力を入れる必要があると考えたといいます。

交付金の申請を出したのは去年の夏。Go Toキャンペーンに注目が集まり、観光業界を盛り上げようという時期でした。

しかし着ぐるみが完成した10月以降、新型コロナの感染状況は次第に悪化。新しい「じょうづるさん」はまだデビューできていないそうです。
常陸太田市の担当者
「どうしても人の集まるところで使うので感染対策に気をつかいます。交付金を申請した時点ではまさかこんな状況になるとは思っていませんでしたが、今のこの状況ではなかなか難しいですね」

「自由度高く活用できる」

新型コロナ対策の交付金、そもそもの目的は何なのでしょうか。

所管する内閣府に聞くと大きく2つだということです。
▽新型コロナウイルスの感染拡大の防止。
▽感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活の支援、経済構造の転換・好循環の実現を通じた地方創生。
自治体は事業内容や費用を提出し、それを受けて国が交付を決めるという流れですが、自由度が高く活用できるように事業内容は細かく限定していないということです。

「使える交付金」最多、北海道へ!

「自由度が高く活用できる」この交付金、感染状況や人口、財政力などをもとに自治体が申請できる金額に限度額が定められています。

では最も多く使える自治体はどこなのか。都道府県に配分される額と市町村分を足し合わせてみると……北海道でした。

私たちは北海道の自治体に直接、疑問をぶつけてみることにしました。
訪れたのは北海道黒松内町。交付金を使って6台の公用車を買っていました。
どんな車なのか町に問い合わせると、実物を見せてくれました。

「こちらです」
町の担当者が見せてくれたのはシルバーのワンボックス車です。

車いすをそのまま積み込むことができ、高齢者や介護が必要な人を病院などに送迎する車両だそうです。

このほか図書館の本を配送するための車や、町内のイベントなどで使うことを想定したマイクロバス、学校給食の配送用の車両など、使った交付金は合わせて3000万円余り。

コロナ対策とどんな関係があるのでしょうか。
黒松内町企画環境課 松原淳課長
「同時に複数人が乗って密になることを防ぐため、もともとあった車の台数を増やすなどの目的で購入しています。公共交通機関が少ないので、町民送迎用にさまざまな車が必要で、公用車の数が多くなっているのは確かです。町議会での慎重な審議も経て計画を実施しているので特に問題はないと考えています」
購入費は交付金でまかなえますが、車は維持費もかかります。
町民にも意見を聞きました。
「必要だから買ったのかもしれないけどねえ。介護のために使うならいいけど図書館の車は関係ないような気がする…」
「コロナ禍が終わったらじゃあ買った車を返すのか、という話にもならないだろうしなんとも言えないね」

取材を申し込むと“使いみち見直し”の連絡が

一方、江差町では町内の観光名所「かもめ島」にある老朽化した建物の撤去費用に交付金を充てるという事業計画を国に申請していました。
公表されている町の計画では「厳しい経済状況にある建設業を支援するため」とあります。

話を聞こうと何度か町に問い合わせたところ「交付金の対象事業から外すことを決めた」との回答が。いつ決めたのか、どのような議論があったのか詳しい説明はありませんでしたが「新型コロナ対策としては優先順位が高くない」と判断したというのです。

こうした自治体はほかにも。東神楽町では、ことし小学1年生になる児童にランドセルを配りました。町は当初この事業に交付金を充てることにしていましたが「よりふさわしい事業がある」として、財源を見直したということです。

国はチェックしないのか

内閣府は第3次補正予算の成立を受けて2月2日、都道府県への事務連絡でこう呼びかけました。
(内閣府の呼びかけ)
「一部その使途について議論もあることから、効率的・効果的な事業に活用するとともに、説明責任をしっかり果たしていただくよう改めてお願いします」
「説明責任」とは何なのか。
担当者に聞くと、「各自治体のホームページなどで、交付金申請をした事業の実施状況や効果について公表してほしい」ということだそうです。

では国が内容を精査することはないのでしょうか。
「今後のことはお答えできない」としたうえで、「現時点では細かいチェックをする性格のものではない。ただ事業が終われば2021年度中のどこかで効果を検証する予定だ」と話しました。

専門家「住民のチェックが重要」

公共政策に詳しい北海道大学大学院の宮脇淳教授に話を聞きました。
宮脇淳教授
「地方自治の観点からみれば、地方の自主性に委ねるのが基本となります。ただし巨額の交付金が形式的な文書審査をベースに配布されている実態は、財政規律の面から問題があることは否定できない。今回の交付金の場合、使いみちの間口を最大限に広げて限定化すべき領域とそうでない領域を区別していない点や、住民の視点からのチェックがどれだけ組み込まれているのかは大きな課題です。国が直接チェックするのは限界がありますが、住民が使いみちをチェックできるように実施事業を羅列するだけでなく、自分の住む自治体と全国の他の自治体の使いみちを比較できるような情報提供の仕組みが必要だと考えます」

調べよう!交付金の使いみち

幅広く活用できる新型コロナウイルス対策の交付金。

自分の住んでいる自治体はどんな分野に私たちの税金を投じているのか。自分たちの意見はきちんと反映されているのか。

まずはインターネットで検索するところからはじめてみませんか。