厚労省 専門家会合「感染者の減少スピード鈍化 下げ止まりも」

新型コロナウイルス対策について助言を行う厚生労働省の専門家会合が開かれ、現在の感染状況について2月中旬以降、感染者の減少のスピードが鈍化していて、下げ止まる可能性があると分析しました。

各地の知事が、緊急事態宣言の期限を前倒しして解除するよう要請していますが、歓送迎会や花見などの季節を迎える中、解除されても感染が再拡大しないよう、引き続き飲食の場面などを通じた感染を防ぐ対策が必要だとしています。

24日に開かれた会合では、緊急事態宣言の対象になっている10の都府県の状況を中心に分析が行われました。

報告されたデータを見ると、新規感染者数は23日までの1週間の平均を前の週と比べると、全国では0.85倍に、前倒しでの緊急事態宣言解除を要請している大阪府は0.82倍、兵庫県は0.72倍、京都府は0.65倍、愛知県は0.70倍、福岡県は0.76倍となっています。

また、岐阜県は0.53倍と、緊急事態宣言が出されている地域で減少幅が最も大きくなっています。

一方で首都圏では、東京都で0.86倍、神奈川県で0.88倍、埼玉県で0.92倍と減少していますが、千葉県では1.03倍と増加に転じています。

また、感染者の集団=クラスターの発生は、医療機関や福祉施設、家庭内などが中心だが、地域によって飲食店でも引き続き発生し、各地で若年層の感染者の下げ止まりの傾向も見られるとしています。

こうしたことから、専門家会合は感染状況について「新規感染者の数は減少が継続しているが、今月中旬以降、減少スピードが鈍化していて下げ止まる可能性もある」と分析し、注意が必要だとしています。

また、入院者や重症者、そして亡くなる人の数についても減少が継続し、医療機関や保健所の負荷は軽減してきたものの、業務への影響はすぐには解消されていないとしています。

そして、専門家会合は、緊急事態宣言が解除されても、ステージ2の水準以下を目指すことが必要で、感染が再拡大しないよう歓送迎会や花見などの季節を迎える中で宴会を控えてもらうことなど、引き続き、飲食の場面などを通じた感染を防ぐ対策や、感染源を見つけ出すための積極的な検査や疫学調査の強化が求められるとしています。

このほか、専門家会合は感染力が高いとされる変異ウイルスや、抗体の攻撃から逃れやすくなっていると考えられる変異ウイルスについて、国内での感染によるとみられるケースが継続して起きているとして、民間の検査機関や大学などとも連携して検査体制を早急に強化して拡大を防ぐことが必要だと指摘しています。

専門家会合 脇田隆字座長「再び感染拡大しないか注意が必要」

専門家会合の脇田隆字座長は、会合のあとの記者会見で「医療現場の負荷は確実に減ってはいるものの、東京都を中心に引き続き病床使用率は高く、医療体制が厳しい状態が続いている。千葉県など一部ではここ数日、感染者数が増加に転じる傾向も見られるため、再び感染が拡大しないか注意が必要だ。今後、緊急事態宣言の解除などで気が緩み、飲食の場などで再び感染が広がらないよう、積極的なクラスター対策や検査体制を再度強化するなど感染対策を進めることが重要だ」と述べました。

また、変異ウイルスについて「市中に感染がすごく広がっている状況ではないと考えているが、今後影響が大きくなってくることが考えられるので、国内の監視体制の強化や、早期発見、感染力や病原性を評価・分析する体制を整える必要がある」と話しています。

各地の状況

厚生労働省の専門家会合が示した各地の状況です。

首都圏

東京都では、新たな感染者数は減少が続いています。

ただ、新規患者数の1週間の合計は人口10万当たりおよそ16人で、「ステージ3」の指標となっている15人を上回っています。

また、感染者数の減少スピードも鈍化しつつあるとしました。

神奈川県、埼玉県、それに千葉県でも感染者数は減少傾向が続いています。

新規患者数の1週間の合計は人口10万当たりで
▽神奈川県がおよそ9人、
▽埼玉県がおよそ12人、
▽千葉県がおよそ14人と、いずれも15人を下回りました。

ただ、千葉ではここ数日、感染者数が増加に転じる動きもあるということで、リバウンドに注意が必要だとしました。

また、医療の状況については東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県のいずれも感染者状況の改善に伴って、負荷の軽減が見られるとしましたが、病床の使用率は依然として高く、医療提供体制には厳しさが見られるとしています。

関西圏

大阪府では、新たな感染者数の減少が続いていて、新規患者数の1週間の合計は人口10万当たり、およそ7人と15人を下回っています。

また、
▽兵庫県では人口10万当たりおよそ5人、
▽京都府も人口10万当たりおよそ4人で、いずれも減少傾向となっています。

3府県ともに医療提供体制は厳しさがみられるものの、感染状況の改善に伴って、負荷の軽減が見られるとしました。

一方、大阪府では高齢者施設でのクラスターが継続しているとしたほか、いずれも、高齢者では感染者数の減少傾向に鈍化がみられることや入院が増えていることに注意が必要としました。

中京圏

▽愛知県では、新規患者数の1週間の合計は人口10万当たり、およそ5人と15人を下回り、
▽岐阜県でも人口10万当たり、およそ4人まで減少しています。

いずれの県でも医療提供体制に厳しさは見られるものの、感染状況の改善で負荷の軽減がみられるとしました。

ただ、高齢者では、感染者数の減少傾向に鈍化がみられるとともに、入院が増えていることにも注意が必要としました。

九州

福岡県では、新規患者数の1週間の合計は人口10万当たり、およそ8人と15人を下回りました。

医療提供体制に厳しさはみられるものの、感染状況の改善で負荷の軽減がみられるとしました。

そのほかの地域

これら以外の地域ではおおむね新規感染者数の減少傾向が続いているとしています。

経済再生相 宣言の取り扱い「分析踏まえ判断」

西村経済再生担当大臣は記者会見で、緊急事態宣言が出されている10都府県について、感染状況は改善傾向にあるものの新規感染者数の減少の鈍化や人出の増加が見られるほか、関西圏や中京圏では、依然として「ステージ4」に近い数値もあると指摘しました。

そのうえで、緊急事態宣言の取り扱いについて「それぞれの知事の意見も伺っている。感染や病床の状況をしっかりと精査し、専門家の意見を聴きながら、きょうの厚生労働省の専門家会合の分析も踏まえ適切に判断したい」と述べました。