愛知署名問題 「自分の名前 勝手に使われた」訴え相次ぐ

愛知県の大村知事のリコール・解職請求の署名をめぐっては、署名した覚えがないのに自分の名前が勝手に使われていたと訴える人が相次いでいます。

このうち大学や専門学校で学生などに法律の科目を教えている、愛知県みよし市の山上博信さん(54)は今回、提出された署名の大半が有効と認められなかったと知り、自分の名前が勝手に使われていないか今月上旬、市の選挙管理委員会に個人情報の開示を請求しました。

市からは翌日、署名簿に名前があったと連絡があり山上さんに関する部分が開示されました。
コピーを確認すると住所の欄に「みよし市」の文字が印刷されていて、そのあとには自分が住む町名や番地それに自分の名前が手書きで書かれていました。
この筆跡と、山上さんが以前から使っている「六法」の余白のページや開示請求の申請書類にみずから書いたという名前や住所の筆跡と比べると、別人のもののように見えます。

また、名前の横には印鑑の代わりに「ぼ印」が押されていましたが、山上さんは押した覚えはないといいます。

さらに署名の日付は去年の10月8日となっていましたが、山上さんはこの日は専門学校での授業のあと病院を受診していて署名については全く心当たりがないということです。

山上さんは「自分の名前で生年月日もあっていて、ぼ印まで押してある。『偽物の自分』がいるような感じがして大きな衝撃を受けました」と話しました。

そのうえで山上さんは法律を教える立場から、リコールなどの直接請求制度で不正があったとみられることについて「直接請求制度は選挙で選ばれた知事や議会でなされた結果をひっくり返す『住民に最後に残された手段』です。偽物の署名を集めるというのは悪質性が高く正常な行政に対する重大な脅威であり愛知県民に対する挑戦だと思う。こうして悪用されれば国民誰もが被害者になりうる」と話しました。

愛知県 大村知事のリコール署名問題の経緯は

愛知県の大村知事のリコール・解職請求の署名活動が始まったのは去年8月25日でした。

きっかけは愛知県内で、おととし開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」です。

美容整形外科「高須クリニック」の高須克弥院長らは、「表現の不自由」をテーマにしたコーナーの展示内容をめぐり芸術祭の実行委員会の会長を務めた大村知事の責任を問いたいなどとして署名活動を始めました。

名古屋市の河村市長も活動を支援しました。

2か月の署名期間を経て11月4日に愛知県内の市町村の選挙管理委員会に提出された署名の数は49市町村で集めたおよそ43万5000人分で、リコールに必要な署名数の86万6000余りには届きませんでした。

それから1か月半後の12月下旬、愛知県選挙管理委員会は提出された署名に不正なものが多数あるという指摘が寄せられたなどとして、署名簿を調査することを決定。

今月1日には提出された署名のうち、有効と認められない署名が全体の83%にあたる36万2000余りあったという調査結果を発表しました。

有効と認められなかった署名のうち、
同一人物によって書かれたと疑われる署名がおよそ90%、
選挙人名簿に登録されていない人の署名がおよそ48%あったということです。

この調査結果を受けて県選挙管理委員会は今月15日、署名の中に偽造されたものが大量に含まれている疑いがあるとして、容疑者不詳のまま地方自治法違反の疑いで警察に告発しました。

その翌日、名古屋市の会社が人材紹介会社を通じて集めた多数のアルバイトが県民の名前や住所が書かれた名簿を署名簿に書き写したのではないかという疑惑が浮上しました。

高須院長や団体の事務局長は“関与否定”

署名活動を行った団体の会長を務める高須院長や田中孝博事務局長などは記者会見を開き、関与を否定したうえで現在、調査を進めていると説明しました。

高須院長は何者かが無効な書類を紛れ込ませたとして名古屋地方検察庁に告発状を送ったとしています。

この問題を巡って告発を受けた警察は24日、各自治体に保管されている署名簿の差し押さえを始めるなど捜査を進めています。