ワクチン接種1週間 副反応疑い3例 “ストレス関連反応”も注意

新型コロナウイルスのワクチンの先行接種が、およそ4万人の医療従事者を対象に2月17日から始まり、1週間がたちました。

厚生労働省のまとめでは、22日までにおよそ1万2000人に対して接種が行われ、このうち、副反応の疑いがあるとして、じんましんや寒気、手足が上がらないなどしたケースが3例報告されています。

専門家は、副反応のほかにも、ワクチン接種自体への不安やストレスが要因となって、接種の前後に息切れやめまい、過呼吸などが起きる「予防接種ストレス関連反応」と呼ばれる反応が出ることもあるとして、相談体制を整える必要があると指摘しています。

副反応の疑い3例

アメリカの製薬大手ファイザーのワクチンについて、厚生労働省は、今月17日に医療従事者への先行接種を始めて以降、接種と関連が否定できない副反応が疑われる重篤な症状があれば報告するよう医療機関などに求めています。

厚生労働省によりまりますと、20日午後5時までに接種を受けた2人に、それぞれ▽じんましんと▽寒気などの症状が確認されたということです。

このうち寒気などを訴えた人の症状は、当初、重いアレルギー反応の「アナフィラキシー」として報告されましたが、その後、医療機関が訂正したということです。

また、接種を受けた1人について、▽手足が上がらない「脱力」や
▽「発熱」の症状が確認されたと22日報告が寄せられたということです。

症状が確認された人の年代や性別、詳しい症状の程度は明らかにしていません。

22日午後5時までに接種を受けた1万1934人の医療従事者のうち、副反応の疑いがある症状が報告されたのは3人で、厚生労働省は、接種との関連があるか専門家会議で検証することにしています。

専門家「過度に心配しないで」

ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「じんましんは、インフルエンザのワクチンなどワクチン全般にみられる軽度の副反応なので、過度に心配する必要はない。現在、接種しているワクチンに含まれる『ポリエチレングリコール』という物質はこうした副反応が出る可能性が知られていて、仮に副反応だったとしても特別異常なケースではないと考えられる」と話しています。

そのうえで「副反応が重いか軽いかを判断するためにも、接種後に体調の変化を確認することは非常に重要で、接種会場には最低15分は待機できる場所を設ける必要がある。アナフィラキシーのような激しいアレルギー反応が出る可能性もあり、接種を進める側は安全に確実に接種できるような環境を整えることが大事だ」と話しています。

副反応とは別に “ストレス関連反応”も見過ごさないで

接種に際してはこうしたケースとは別に、▽注射針への恐怖や▽針が刺されたときの痛み、▽ワクチンへの懸念など接種自体への不安やストレスが要因となって、接種の前後に息切れやめまい、過呼吸などが起きる「予防接種ストレス関連反応」と呼ばれる反応が出ることがあり、WHO=世界保健機関は2019年にマニュアルを出して医療従事者などが見過ごさないよう呼びかけています。
特に、集団接種では不安が広がることで症状が強まるおそれもあり、WHOのマニュアルによりますとたとえば、2009年に流行した当時の新型インフルエンザのワクチンの集団接種では▼台湾の学校で12歳から15歳の9115人のうち、およそ4%にあたる350人に▼アメリカで軍の予備役の20歳以上の201人のうち、およそ7%にあたる14人に不安やストレスで引き起こされたと見られる症状が出たとしています。
このため、マニュアルでは▼医療従事者が接種を受けた人とコミュニケーションをとって不安を軽減することや、▼静かな場所で安静にして深呼吸をしてもらうといった対応が重要だとしています。

さらに今回は、かつてない規模での集団接種になることから、政府の分科会メンバーで川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「ワクチンの安全性は成分だけでなく接種がどう行われるかにも影響される。落ち着いた雰囲気で接種が進められる環境を整備することが重要だ」と話し丁寧に説明し、不安を感じたときには相談できる体制を整える必要性を指摘しています。

田村厚労相 「ワクチンは2回接種で対応」

ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチン接種について、田村厚生労働大臣は、1人につき1回だけでは発症の予防効果が一定程度落ちる可能性があるなどとして、従来の方針通り2回の接種で対応する考えを示しました。

ファイザーなどが開発したワクチンの接種は、3週間間隔で2回行われることになっていますが、1回でも一定の効果があるというイスラエルの研究データが発表されています。

田村厚生労働大臣は記者会見で「日本では2回接種で薬事承認されており、1回だけの接種で対応することは制度上難しい。1回だけでは、発症を予防する効果は一定程度落ち、抗体の値が持続する期間も短くなると思われる」と述べました。

そのうえで「データが出てきて、1回の接種でも国民の理解が得られるのであれば、あり得るかもしれないが、持ち合わせておらず、今のところ1回だけで対応することは考えていない」と述べました。

また、田村大臣は、ファイザーが一般的な医療用冷凍庫でも、ワクチンを2週間保存できるとするデータが得られたと発表したことについて「今までよりはいろいろな対応ができるが、小分けにした場合どうなるか情報収集しながら、自治体に伝えていきたい」と述べました。

自民 下村政調会長「ワクチン接種1回も検討すべき」

ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチン接種について、自民党の下村政務調査会長は、ワクチンが予定通りに日本へ供給されない場合には、多くの人が受けられるよう、1人につき1回の接種とすることも検討すべきだという認識を示しました。

自民党の下村政務調査会長は、24日の記者会見で、ファイザーなどが開発したワクチンについて「各国が競い合うように求めている一方、1回の接種でも高い効果が得られているという海外の事例もある」と指摘しました。

その上で、下村氏は「もし予定通りに日本へ入らない場合には、限られた人に2回接種するのがよいのか、幅広い人がまずは1回受けるようにした方がよいのか、科学的・医学的根拠のもとで判断する必要がある」と述べ、1人につき1回の接種とすることも検討すべきだという認識を示しました。

そして、ワクチンの供給状況を見ながら、党の作業チームで議論する考えを示しました。

河野規制改革相 “ワクチン接種証明”については

ワクチン接種を担当する河野規制改革担当大臣は、衆議院内閣委員会で「現時点で、薬事承認は『2回接種』ということなので私のところでは、2回接種を前提に準備を進めている」と述べました。

また、自治体への供給について「感染が拡大している都道府県を優先するのではなく、おそらく人口に応じてということで、今週中にどうスタートするか調整する。そのあとは、自治体の接種のスピードに応じて、供給が途切れないようにしていきたい」と述べました。

また、ワクチンの接種証明について「国内で、証明する書類を使うことは想定されにくい。アレルギーなどで打てない人がいる中で、答えたくないのに答えなければいけない状況になるのは望ましくない。国際的に証明書が求められたときには、対応できるが、少なくともG7などではそうはなっていないのが現実だと思う」と述べました。

世界では“接種証明書”発行するところも

世界でも速いペースで新型コロナウイルスのワクチン接種が進むイスラエルでは、接種したことを示す証明書、「グリーン・パスポート」を発行し、スポーツジムやイベント会場などでの提示を義務づけ、接種率のさらなる向上を目指しています。

イスラエルでは、去年12月中旬から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、これまでに人口の4割を超える437万人が1回目の接種を受け、このうちおよそ7割にあたる299万人が2回目の接種を終え、世界でも速いペースで接種が進んでいます。

1日の新規感染者数も1月中旬以降、減少傾向にあることから、2月21日から外出制限が一部緩和され、ショッピングモールなどが再開しました。
さらにイスラエルは、接種を2回受けてから1週間以上経過したことを示す証明書、「グリーン・パスポート」を発行し、スポーツジムやイベント会場などでの提示を義務づけました。

ジムを訪れた女性は「戻ることができてうれしい。ワクチンを接種しても、感染する可能性もあるし、誰かに感染させてしまうかもしれないので、これまでと同じように対策をとりたいです」と話していました。

また、ジムを経営するリア・エルバスフィンケルバーグさんは「5か月にわたって、ジムを開くことができませんでした。感染のリスクがないわけではないので、マスク着用や、利用者どうしの距離に気をつけながら、運営します」と話しています。

イスラエルは3月末までに16歳以上のすべての国民にワクチンを接種することを目標に、今後、グリーン・パスポートを普及させて、接種率のさらなる向上を目指しています。