震度6強の地震から1週間 支援必要な人の情報共有などに課題も

1週間前の地震で被災地では、10年前の東日本大震災の教訓を生かして高齢者など避難に手助けが必要な「避難行動要支援者」の安否確認を迅速に行った地域があった一方で、支援が必要な人の情報の共有などに課題が残った地域もありました。

今回の地震で震度6弱の揺れを観測した福島県郡山市の久留米地区では、およそ8000人の住民のうち事前に同意を得られた「要支援者」324人について、市から関係機関に情報提供していました。

しかし、その情報だけでは支援を必要としている程度が分からないため、このうち特に支援が必要と見られる75歳以上の1人暮らしの高齢者や、高齢者だけの世帯、それに障害者がいる世帯などを6つのグループごとに色分けして地区上に示し、どのような「要支援者」がどこに住んでいるのか一目で分かる地図を整備していました。

地域の事情に詳しい銀行員や郵便配達員の協力を得て対象者を絞り込み、さらに年2回会議を開いて情報を更新してきたということで、今回の地震では地震発生の翌朝までに特に支援が必要な109人の安否確認を終えたということです。

民生委員の須藤智子さんは、地震直後に担当の「要支援者」に安否確認の電話をかけ、つながらなかった人については翌朝明るくなってから直接自宅を訪ねて無事を確認したということで「要支援者の情報を記した地図があることで、どこに誰がいるかが頭に入り、連絡先も把握できていたので、すぐに安否確認できました」と話していました。

地震のあと須藤さんが訪問して安否を確認した92歳で1人暮らしの中山シツ子さんは「地震の時は何が起きたのか分かりませんでしたが、須藤さんが来てくれてとても安心できました」と話していました。

久留米地区自主防災会の國分晴朗会長は「東日本大震災の時は事前の備えが十分ではなかったので、安否確認や避難に時間がかかってしまった。あれほど大きな地震は二度と来ないだろうと思っていたが、もしもに備えて地図を作っていました。地図がなければ1人暮らしの高齢者など特に支援を必要としている人がどこにいるか分からず助けようがないので、準備しておいてよかったです」と話していました。

平成26年から避難の手助け必要な「要支援者」名簿義務化

10年前の東日本大震災では、死亡した人のおよそ6割が65歳以上の高齢者でした。

このため国は、災害対策基本法を改正し、平成26年から各自治体にお年寄りや障害者など避難に手助けが必要な「避難行動要支援者」の名前や住所などをまとめた名簿の作成を義務づけています。

この名簿は、災害が起きると民生委員や自主防災組織、社会福祉協議会、それに消防や警察などに提供され、プライバシー保護の対策を取ったうえで、迅速な安否確認や避難支援に役立てることになっています。
総務省消防庁のまとめによりますと、おととし6月1日の時点で、全国の99%に当たる1720の市区町村で「要支援者」の名簿が整備され、合わせて784万人余りが登録されていますが、要支援者の情報の事前提供には本人の同意が必要で、事前提供が行われているのは、322万6000人余りと登録者数全体の41%にとどまっています。

安否確認なく不安感じた高齢者も

今回の地震で震度6強の揺れを観測した福島県相馬市では、名簿作成が義務化された2年後(平成28年)には名簿作りと同意の取りまとめを終え、3年前(平成30年)には同意が得られた「要支援者」の情報を関係機関に提供していました。

しかし、相馬市尾浜の沿岸で1人で暮らしている佐藤光代さん(84)のもとには今月13日の地震発生から5日余り、民生委員などからの安否確認がありませんでした。

佐藤さんは、東日本大震災で自宅が津波の被害を受けて半壊し、最新の津波ハザードマップでも最大3メートルから5メートルの浸水が想定されていることから、1週間前の地震の直後、津波に襲われる恐怖を強く感じました。

幸い電話が使えたためすぐに親族と連絡を取ることができ、まもなくテレビで津波の心配はないと伝えられたことから、室内に散乱したものを片づけるなどしながら一夜を過ごしました。

ただ、東日本大震災の時のように電話が使えなくなり、もしけがをして動けなくなっていたら誰にも助けてもらえないのではないかと感じたといいます。

相馬市とこの地区を担当する民生委員によりますと、当初提供された要支援者の情報には何らかの理由で佐藤さんの情報は含まれておらず、その後、去年の秋には佐藤さんの事前提供の希望を把握していましたが、年度末までに新たな名簿を作る予定だったため、まだ反映されていなかったということです。

佐藤さんは「津波のおそれがあって避難しなければならなかったとしても、10年前より体力も落ちていて夜間に1人で歩いて避難することはできませんでした。地域の人たちも被災しているだろうから避難する時に付き添ってほしいとは、自分からは言いだしづらいです。翌日にでも誰かが『大丈夫でしたか』と見回りに来てくれたら気にかけてくれているんだと安心できたと思います」と話していました。

制度を知らない高齢者も

震度6弱の揺れを観測した郡山市には、そもそも「避難行動要支援者」の制度を知らないという高齢者もいました。

郡山市では、1週間前の地震で最大29人が避難所に身を寄せ、その多くが自力で避難するのが難しい高齢者でした。

地震の揺れで大きな被害を受けた市内のマンションから避難している高橋勝善さん(78)は、足が悪く、車もないため、すぐに避難できませんでした。

マンションの前の公園で水が入ったペットボトルを抱えて妻の美津子さん(78)と途方に暮れていたところ、同じマンションに住む男性に声をかけられ、車で避難所に連れて来てもらったということです。

郡山市は、年に1度「避難行動要支援者」に該当する市民に書類を送って、関係機関への事前の情報提供に同意するよう呼びかけていましたが、タカ橋さん夫妻はこうした書類を目にした記憶はなく、制度のことも知らなかったと言います。

郡山市によりますと、18日現在で、3万1254人の市民が「避難行動要支援者」の名簿に登録されていますが、情報の事前提供の同意を得られているのは、55%に当たる1万7102人にとどまっているということです。