コロナワクチンの大半を日本国内で製造へ アストラゼネカ

製薬大手アストラゼネカが、厚生労働省に承認申請を行っている新型コロナウイルスのワクチンについて、日本法人のワクチンの責任者がNHKの取材に応じ、承認され次第、日本国内で大半のワクチンを製造し、速やかに供給していく考えを示しました。

イギリスの製薬大手アストラゼネカは、オックスフォード大学と共同で新型コロナウイルスのワクチンを開発し、今月5日に日本国内での使用に向け、厚生労働省に承認を求める申請を行っています。

これについて、大阪に拠点があるアストラゼネカの日本法人でワクチンの責任者を務める田中倫夫執行役員が、NHKの取材に応じました。

このなかで、田中執行役員は、日本政府と供給契約を結ぶ6000万人分のワクチンについて、承認されれば、4000万人分以上を兵庫県芦屋市に本社がある製薬メーカー「JCRファーマ」の工場で生産し、速やかに供給していく考えを示しました。

そして、国内で接種が始まっている「mRNAワクチン」というタイプのワクチンは、長期間の保管には、マイナス75度前後の超低温の冷凍庫が必要なのに対し、アストラゼネカ製のワクチンは、2度から8度と冷蔵で輸送や保存が可能だとして「接種できる人の数を増やすことにつながる」と述べました。

一方、南アフリカで確認された変異ウイルスに対しては効果が限定的だという見方が出ていることに対し、田中執行役員は「まだデータがそろっていないため、評価は難しい。ただ、ことしの秋冬を目指して、変異ウイルスにも対応できる新しいワクチンの準備を進める状況だ」と説明しました。

原液は兵庫県で製造

アストラゼネカは、承認されれば、新型コロナウイルスのワクチンを、国内の製薬会社に委託して4000万人分以上を製造することにしています。

このうち原液は、兵庫県芦屋市に本社がある製薬メーカー「JCRファーマ」が担当し、神戸市内の工場で製造します。

工場では、専用の部屋に、新型コロナウイルスの遺伝子が組み込まれた、ワクチンのもととなる溶液が運び込まれ、培養を進めます。

一定の量まで増えると「バイオリアクター」と呼ばれる、高さ3メートルほどのタンクに移されます。

この装置の中には、樹脂製の特殊な袋があり、溶液を温めたり、かき混ぜたりしてワクチンを完成させていくといいます。

この袋を使うことで、製造後の洗浄の手間を省くことができ、生産効率性が高まるとしています。

JCRファーマの本多裕上席執行役員は、ワクチンの国内生産について「遺伝子治療の研究をしているチームが社内にあり、技術をワクチンや原液製造にいかせるところが、技術的には大きなポイントだと思う。国内でスムーズに生産していきたい」と話していました。