島根知事 “五輪開催すべきでない 聖火リレーへの協力難しい”

島根県の丸山知事は政府や東京都が新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めていない中、東京オリンピックを開催すべきではないとして、ことし5月に島根県内で行われる聖火リレーについてもこのままの状況が続くのであれば中止せざるをえないという考えを表明しました。

島根県の丸山知事は17日正午から開かれた聖火リレーの県の臨時の実行委員会に出席し、東京都などの新型コロナウイルスへの対応について「保健所の業務がひっ迫し、濃厚接触者の調査が行われていないなど不十分なものになっている」などと指摘しました。

そのうえで「このような対応能力でオリンピックを開催することができるのか。オリンピック期間中に感染拡大局面を迎えたときに第3波と同じことが回避できるのか疑念がぬぐえない」と述べ、状況が改善されないかぎり、オリンピックを開催すべきではないという考えを示しました。

そして、島根県内で5月15日と16日の2日間、行われる予定の聖火リレーについて「開催を賛成できないオリンピックのプレイベントに島根県の財源や人員を充てるということはできない。今の時点で聖火リレー中止をお願いするわけではないが、1か月程度状況をみて改めて判断させていただきたい」と述べ、このままの状況が続くのであれば聖火リレーについては中止せざるをえないという考えを表明しました。

島根県によりますと県と大会組織委員会は聖火リレーの実施にあたり協定を結んでいて、この中で「天変地異や不測の事故等が起きた場合」が中止できる要件として定められています。

ただ、県によりますと基本的には都道府県側の意思での中止は想定されていないということです。
会議の後、丸山知事は「聖火リレーを楽しみにしていた県民には申し訳ない気持ちでいっぱいだが、県内の飲食業などの厳しい現状を少しでも解決していくために第3波と同じようなことが起こらないようにするのが私がやるべきことだ」と話していました。

島根県の聖火リレーは

島根県の聖火リレーはことし5月15日・土曜日と16日・日曜日の2日間で行われ、合わせて14の自治体をめぐる予定です。

1日目は島根県西部の津和野町を出発し、7つの市町村を回って邑南町に向かいます。

2日目は大田市を出発し、7つの市と町を回って松江市に到着して県内の聖火リレーを終えます。

聖火リレーは県の実行委員会が選んだ53人のランナーと大会スポンサーが選んだランナーの合わせて170人が走ることになっています。

島根の聖火ランナーは

聖火ランナーの1人として島根県雲南市を走る予定の村松憲さん(73)は、定期的に10キロ程度走り込み体力作りをしてきました。

村松さんは飲食店を経営していて新型コロナウイルスの影響で売り上げは8割ほど落ち込む月もあるということです。

村松さんは「飲食店の経営は苦しい中ですが知事の考えは正しいのではないかと思います。中止になると聞くと落ち込みますが人の命が何よりも大切です。世界のコロナ感染がゼロになることを願いたいです」と話していました。
また、島根県安来市の聖火ランナー、板持浩二さん(57)は「聖火リレーまで残り3か月を切った時点でこういった発表をされるのはとても残念でならないです。島根県の感染者の数は全国的にみて少ないので開催に前向きであってほしいです。聖火リレーを開催できる方法はいくらでもあると思うので、知恵を絞って開催できるよう努力してほしいです」と複雑な胸の内を明かしました。

大会組織委「県の意向確認し最終的に判断」

大会組織委員会の担当者は「まだ島根県側から中止の要望をうけておらず、報道で初めて今回のことを知り状況を確認している。現段階では新型コロナウイルスの感染予防に努めながら聖火リレーを行いたいと考えている。聖火リレーは各都道府県と組織委員会の共催事業なので担当者と協議し、県の意向を確認したうえで組織委員会として最終的に判断したい」としています。

東京都 小池知事「しっかり連携してやっていく」

東京都の小池知事は記者団に対し「確認したが島根県から何か問い合わせがあったということはないようだ。東京都としてはしっかり対応している」と述べました。

そのうえで「これからは大会に向けて盛り上げる必要があるので、47都道府県がしっかりと連携しながらやっていくことがこれからの一歩につながる」と述べました。

鳥取県 平井知事「心情理解できる 真意はわからない」

島根県の丸山知事の一連の発言について、鳥取県の平井知事は「大都市圏で積極的な疫学調査をしていない現状について丸山知事は強い不満を持っているし、私も全国知事会で政府に強く申し上げてきた。大都市の状況に不安を感じる丸山さんの心情は理解できる」と述べました。

ただ、平井知事は「丸山さんとは話していないので、ニュースを見てびっくりした。真意はわからない」としています。

その一方、鳥取県内で行われる聖火リレーについて現在、契約や事務作業を停止していることを明らかにしたうえで、平井知事は「オリンピックがどうなるか見極めなければならないし、感染状況がどうなっていくのか注意深く考えていかなければならない。そのためにも世界や国全体の動きをフォローアップしていく」と述べました。

官房長官「島根県の実行委で結論が出たわけでもない」

加藤官房長官は午前の記者会見で「来月25日に福島県から開始する予定の聖火リレーについては現在、大会組織委員会において都道府県実行委員会と協議しつつ中間整理に基づいて感染防止策の検討を進めていると承知している。政府としては安心・安全な大会の開催に向けてしっかりと対応していきたい」と述べました。

そのうえで「島根県において、実行委員会で結論が出たわけでもないと思う。今、この段階で何かコメントするのは適切ではない」と述べました。