【詳細】副反応は? 接種したほうがいい? ワクチン最新情報

新型コロナウイルスのワクチン接種が17日から、およそ4万人の医療従事者を対象に先行して始まります。
効果はあるの?副反応は?結局、接種したほうがいい?
ワクチンをめぐるさまざまな不安や疑問について、最新の情報をまとめました。
(2月16日時点)

Q. 感染を防ぐ?重症化を防ぐ?

新型コロナウイルスのワクチンは、感染を防ぐものではなく発症や重症化を防ぐものだと考えられています。
ワクチンに期待される効果には、
▽感染そのものを防ぐ「感染予防の効果」
▽感染しても症状が出るのを抑える「発症予防の効果」
▽症状が出ても重症にならないようにする「重症化予防の効果」
▽多くの人がウイルスへの抗体を持つことで社会全体が守られる「集団免疫の効果」があるとされています。

このうち感染を予防する効果は感染しても発症しない人が多くいることや、ウイルスが人の細胞に入り込んでいないか詳しく調べないといけないことなどから実証することが難しく、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験ではワクチンを接種した人のグループと偽薬=プラセボを投与した人のグループで発症した人の数を比較していて、主に発症を予防する効果について調べています。

日本国内で医薬品を審査するPMDA=医薬品医療機器総合機構は、新型コロナウイルスのワクチンを審査する際の考え方として、原則として発症を予防する効果を評価する臨床試験が必要だとしています。

欧米のワクチンの臨床試験では、発症を予防する効果に次いで重症化をどの程度防ぐことができたかも示していて、PMDAも評価の際の重要な項目の1つとして重症化を防ぐ効果を挙げています。

さらに、ワクチンの接種が広がることで集団免疫の効果も期待されています。

集団免疫とは、国や地域などの集団の中でほとんどの人がワクチンを接種するなどして免疫を持つことで、一部の人が免疫を持っていなくても感染が広がらない状態になることをいいます。

WHO=世界保健機関は集団免疫の状態となる条件について正確には分からないものの世界の人口の70%以上がワクチンを接種する必要があるとして、ことし中に世界が集団免疫の状態になるのは難しいという認識を示しています。

Q. 副反応は?

予防接種の実施に関するアメリカの諮問委員会によりますと、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを接種したおよそ99万7000人のうち1回目の接種では
▽接種部位の痛みを訴えた人が67.7%、
▽疲労が28.6%、
▽頭痛が25.6%、
▽筋肉痛が17.2%、
▽発熱が7.4%、
▽関節の痛みが7.1%、
▽悪寒と吐き気がそれぞれ7%、
▽腫れが6.8%で報告されました。
また、重いアレルギー反応も報告されています。

接種が始まってから1月18日までにアメリカで行われた994万3247回の接種について調べた結果、50件で「アナフィラキシー」と呼ばれる重いアレルギー反応が確認されたということです。

20万回の接種につき1.0057件の割合で確認された計算になります。

▽症状が出た人の年齢は26歳から63歳で中央値は38.5歳、
▽94%が女性でした。

また、
▽74%が接種から15分以内に、
▽90%が30分以内に症状が出たとしています。

80%は、過去に薬や食べ物などでアレルギー反応が出た経験があったということです。

Q. これまでに感染・回復した人も接種したほうがいい?

アメリカのCDC=疾病対策センターは新型コロナウイルスに感染して回復したあとでもワクチンを接種するように呼びかけています。

ワクチンの安全性について、CDCはウェブサイトでアメリカで接種が行われている「ファイザー」や「モデルナ」のmRNAワクチンを念頭に、臨床試験のデータから、過去に感染した人にも安全に接種できることが示されていると説明しています。

また、感染し回復した人にもワクチンを接種するよう呼びかけていて、その理由として、感染して回復したあとで免疫の働きによってどの程度の期間、再び発症を防げるか分かっていないことや、感染したことで得られる「自然免疫」にどの程度の効果があるか人によって異なることを挙げています。

一方で、CDCは回復した人からの血しょうを投与する治療や、人工的に作った抗体の薬を使う治療を受けた場合は90日間待つ必要があるとして医師に相談するよう呼びかけています。

Q. 妊婦の接種は?

厚生労働省は、妊婦への接種については接種を受けるように努める「努力義務」は課さず本人に慎重に判断してもらうとしています。
これについて、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」の村島温子センター長は「海外では1万人規模の妊婦に接種しているが、赤ちゃんや妊娠結果への影響は報告されていない。妊婦だからやめなさいということにはつながらないと思う。特に基礎疾患があるなど感染した場合のリスクが高い人は妊婦も含めてちゅうちょなく接種してほしい」と話しました。

また、妊娠中の接種でアナフィラキシーなどの副反応が多いという情報は無いということですが「ワクチンを接種する場合は万が一、アナフィラキシーなどの症状が出た場合に備え、妊婦を診られる医療機関で受けてほしい」と指摘しました。

そのうえで村島センター長は「ワクチンの接種を受ける際にはしっかりと説明を聞いて納得してから接種することが重要だ」と話していました。

一方、授乳中の女性については「ワクチンの影響で、母乳やそれを飲んだ赤ちゃんに影響が出る可能性は非常に低く、影響はないと考えている」と話していました。

Q. 子どもへの接種は?

子どものワクチン接種についてはこれまでの臨床試験で十分なデータがなく、総理大臣官邸のウェブサイトでは「子どもが接種の対象となるかどうかなどは安全性や有効性の情報などをみながら検討されます」としています。

厚生労働省が契約し国内で接種が始まる予定の3社のワクチンは臨床試験で効果を分析した対象が、ファイザーのワクチンで16歳以上、モデルナとアストラゼネカのワクチンは18歳以上になっていて、それ以下の年代のデータは示されていません。

武田薬品が日本国内向けに供給するとしているアメリカの製薬会社ノバックスのワクチンも18歳以上を対象に臨床試験が行われました。

このうち、ファイザーのワクチンの臨床試験には12歳から15歳の人も2259人が参加していて、ファイザーは去年12月の発表の中で子どものデータについて今後数か月かけて収集するとしています。

Q. ワクチンの効果は?

新型コロナウイルスのワクチンを開発している製薬会社などの多くは、ワクチンの効果について臨床試験の結果を公表しています。

ワクチンの効果はワクチンを接種したグループと、プラセボと呼ばれるワクチンに似せた偽の薬の投与を受けたグループを比較して評価します。

発症した人の割合がワクチンの接種を受けたグループでプラセボの投与を受けたグループより少なければ、発症を予防する効果があったものと判断できます。

厚生労働省が契約したワクチンのうち、アメリカの製薬大手「ファイザー」とドイツのバイオ企業「ビオンテック」が開発したワクチンと、アメリカの製薬会社「モデルナ」のワクチンでは、数万人を対象にした臨床試験で発症を予防する効果が90%を超えていたとする結果が出されています。

ワクチンではないプラセボを投与された人のうち、一定の時間がたった段階で発症した人の割合を100とすると、ワクチンを接種した人のうち発症した人の割合は10未満で、これを比較して発症が90%以上抑えられたということを示しています。

ただ、ワクチンを接種しても感染することはあるため、ワクチンの接種が始まったとしてもマスクの着用や「3密」を避けるといった感染対策は引き続き必要です。

Q. 結局、接種はしたほうがいいの?

新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては多くの情報が飛び交っていて、接種すべきかどうか迷う人もいます。ワクチンや感染症に詳しい専門家の指摘をまとめました。
●東京大学医科学研究所 石井健教授(ワクチン研究の第一人者)

「いずれも透明性のあるデータで有効性と安全性が裏付けられていて、おそらく問題のない水準だ。あまりにも開発スピードが速いため心配していた面もあるが、臨床試験では参加した人数や精度も全く問題ない」

「長期にわたる副作用がないとは言い切れず数年たって出てくる影響はまだ分かっていないが、時間がたってからしか分からないもの以外はすべて明らかになっている。新型コロナウイルスに感染したり重症化したりするリスクを考えると、ワクチンを接種してそのリスクを下げるほうが大切だ」

「今はワクチンを前にして『あなたはどうしますか』と個人や社会に突きつけられている。科学的に申し上げるとリスクが高い人、具体的には65歳以上の人はワクチンを打ってほしい。また、高齢者や基礎疾患のある人などの家族も接種してリスクの高い人を守れるようにしてほしい。ワクチンを接種しなければ感染のリスクはそのままだ。自分だけでなく家族や周囲への影響も考えて自分自身で判断してほしい」
●川崎市健康安全研究所 岡部信彦所長(政府の分科会のメンバー)

「各国のワクチンの治験のデータやすでに接種が始まっている国々からの情報を見るかぎり、少なくとも非常に心配しなければならないような副反応というのは見られないと思う。インフルエンザのワクチンなどに比べて接種時に痛みがあったり腫れが引きにくかったりすることはあるかもしれないが、ほとんどの場合は時間の経過とともに消えてしまうと言うのが今までのデータから見えている。ただ、接種に際して心配になった場合に相談できたり診療を受けられたりする体制を整えることは必要だと考えている」

「私が接種を受けるかどうか聞かれれば、やはり『受ける』と答える。感染してしまうと軽症で済む場合もあるが中には重症になってしまう人もいる。その割合とワクチンで重い副反応が出るリスクを比べると、ワクチンを受けて病気を防ぐメリットのほうが大きいと思う。ただ、体質によっては受けたくても受けられない人もいるし、どうしても受けたくないという人もいるはずだ。個人の判断は当然、尊重されるべきだと思う」