児童養護施設などの職員に相談窓口 コロナで離職や休職相次ぎ

コロナ禍の長期化で、児童養護施設などの職員が疲弊し一部では離職や休職も相次いでいるとして、東京のNPO法人が全国で初めて施設職員向けの無料相談窓口を開設しました。

この相談窓口は、児童養護施設や乳児院などの人材確保に取り組む東京・豊島区のNPO法人「チャイボラ」が、インターネット上に開設した「社会的養護施設職員のための相談窓口」です。

相談は無料で、身元を明かさずに匿名で悩みを寄せられるほか、相談員とチャット形式で気軽にやり取りでき、内容に合わせてこのNPO法人のスタッフや現役の施設職員、それに心理士や弁護士などの専門家も連携して対応に当たります。

NPO法人によりますと、虐待などを理由に親元を離れて施設で暮らす子どもたちの中には、感染拡大で外出が制限されたり、保護者との面会が難しくなったりして、ストレスをため込み精神的に不安定になる子もいるということで、職員が対応に追われるケースが増えているとしています。

一方で、職員が対面で集まる会議などを控えざるをえない中、若手の職員が悩みをひとりで抱え込みがちになり、一部の施設では職員の休職や離職が相次いでいることから、相談窓口の開設に至ったということです。

こうした、児童養護施設などの職員を対象とした相談窓口は全国で初めてだということです。

「チャイボラ」の代表理事、大山遥さんは「子どもたちのために頑張ろうとする職員ほど、コロナ禍で思うようにしてあげられない現実とのギャップに苦しんでいると感じる。職員の精神的な負荷を軽くし働く環境をよりよくすることは施設にいる子どもたちの未来にもつながると思うので、徹底して寄り添いよい方向にむかっていける窓口でありたい」と話していました。

児童養護施設 職員も疲弊

長期化するコロナ禍で都内の児童養護施設では、職員たちの体力的、精神的な負担が増しているといいます。

東京・北区の児童養護施設「星美ホーム」では、虐待などを理由に親と暮らせなくなった2歳から20歳までの88人が暮らしています。

先月、施設の児童が通う小学校で感染者が出て学年閉鎖となった際、濃厚接触者にあたるかわからない児童がいたことから、施設内での感染拡大を防ぐため小学生6人が暮らすホームを隔離することになりました。

ふだんは交代で勤務している職員も、このときはひとりが連続して丸2日泊まり込むことになり、感染のおそれがないとわかるまで、外に出られずに強いストレスを抱える児童たちを1人で支援し続けたということです。

また、コロナ禍の長期化により、子どもたちが楽しみにしているイベントが軒並み中止になったほか、緊急事態宣言を受けて親との面会も制限せざるをえない状況が続き、子どもたちがストレスをため込んでいるといいます。

そうした中で、子どもどうしのけんかや、職員に対する暴力など、心理的な苦しさがトラブルとなって現れるケースが増えているということです。
働き始めて3年目のケアワーカー、伊藤みなみさん(22)は「1歩も外に出ずに過ごすのは、大人でも気持ちがしんどくなるので、子どもたちはもっとつらいだろうと思います。エネルギーを発散できず、けんかがヒートアップするなどのトラブルが増えていて、周りの子も敏感になっています。注意しなければならない機会が増え、疲れたり気がめいったりすることもありますが、同僚と話せる機会は減ったので自分で抱え込んでしまうことも多くなりました」と話していました。