コロナ禍の異変 コンテナはどこへ?

コロナ禍の異変 コンテナはどこへ?
今、1年前の3倍近くまで急激に値上がりしているものがあります。世界の物流を担う、コンテナ船の運賃です。荷物を積むコンテナが世界的に不足しているためで、影響が長引けば、消費者が買うモノの値上がりにつながるおそれもあると指摘されています。異例のコンテナ不足。取材を進めると、ここにも新型コロナウイルスが関係していることがわかってきました。(アジア総局記者 影圭太/ロサンゼルス支局記者 菅谷史緒)

港が大渋滞

「コンテナが確保できないんです」「コンテナがないので飛行機で運ぶしかない」。去年の秋以降、商社や輸出関連の企業の人と話をすると、必ずといっていいほど「コンテナが足りない」という話を聞くようになりました。コンテナは物流に欠かせない「箱」。なぜ今、足りなくなっているのでしょうか。「アメリカの港が原因の1つらしい」という港湾関係者の話しをもとに、取材を進めました。

1月下旬、訪れたのは、中国などのアジアとアメリカを結ぶ海の玄関口、ロサンゼルス港。隣接するロングビーチ港と合わせてコンテナの取り扱い量で全米の約4割を占める一大物流拠点です。
高台に上がった記者の目に飛び込んできたのは、港の沖合にずらりといかりを下ろして停泊する巨大なコンテナ船でした。その数はおよそ30隻。船は出航の時を待っているかのようにも見えますが、実際は逆。アジアなどからの航海を終え、港に入って荷降ろしをする順番待ちをしていたのです。

「いつもは見られない」「普通ではない光景だ」。港の関係者が思わず漏らす異変が起きていました。

コロナ禍でも増加したのは…

この異変が、まさに世界的なコンテナ不足の原因の1つになっています。

専門家によれば、新型コロナウイルスの感染拡大で、去年の春ごろはコンテナを使った輸送量が大幅に減っていました。しかしその後、夏ごろから輸送量は一転して急増。アメリカで、いわゆる“巣ごもり需要”が急拡大したためです。

旅行にもジムにも行けない人たちが、家電や日用品をネットショッピングで買うことにお金を振り向けたとみられていて、アメリカでは年末商戦にあたる去年11月と12月の小売業の売り上げがコロナ禍前のおととしと比べても8.3%増加しました。
巣ごもり需要に対応するため、中国など、アジアから商品を積んだ大量のコンテナが太平洋をわたってアメリカ西海岸に向かったのです。

巣ごもり需要はアメリカだけでなく各地で増え、世界の貿易数量は去年6月以降、6か月連続で前月と比べて増加しているという統計もあります。(CPB、SMBC日興証券)

運賃は3倍に

去年の後半以降、大量の荷物が押し寄せた一方で、港の側では作業員やドライバーが不足して荷物をさばききれなくなっています。荷物の量が港の処理能力を超える状態が続いているのです。
この結果、アメリカの港にコンテナが滞留してしまい、アジアなどに十分な量が戻らなくなっていると言います。コンテナの“偏在”です。

世界で使われるコンテナは9割以上が中国で生産されていますが、急激な需要の増加で、新しいコンテナの供給も間に合っていません。

こうして世界的にコンテナ不足が起き、運送の需給がひっ迫したことでコンテナ船の運賃は去年の夏以降、急激に上昇。
香港の情報会社「フレイトス」によりますと、物流の大動脈となっている中国からアメリカ西海岸に向かう航路では、40フィートのコンテナ1個当たりの運賃はことしに入って4000ドルを超えました。2月上旬には4334ドルと1年前の3倍近くにまで高騰。この会社が情報を集め始めた2017年以降で最も高くなっています。

港の閉鎖まで!?

事態は今後、一段と深刻になる可能性もあります。

1月、ロサンゼルスなどの港湾労働者でつくる労働組合が公表した文書には「労働者の健康と安全を守るためには港の閉鎖を検討する必要があるかもしれない」と記され、2つの港の閉鎖の可能性も言及されていました。

文書によれば、1月中旬の時点で、ロサンゼルス港とロングビーチ港の労働者690人余りが新型コロナウイルスに感染したということで、感染対策が急がれています。

余波は対岸にも

コンテナ不足の影響は、世界各地に波及しています。世界有数のコメの輸出国、タイもその1つです。
年間およそ8万トンのコメをオーストラリアやアメリカなどに輸出しているバンコク近郊の業者では、去年秋ごろから、港を通して行っているコンテナの確保が難しくなりました。このため計画どおりに輸出ができなくなり、これまでにコンテナおよそ200個分、金額にしておよそ4億円分の輸出機会を逃してしまったと言います。

さらに、苦労してコンテナを確保できても運賃の高騰によって利益が押し下げられています。
タンヤワンCEO
「コンテナは必要な量の3分の1しか海外から戻ってこなくなってしまった。こんな事態になるとは全く予測できなかった」
輸出業者の訴えを聞いて、タイでは政府が対応に乗り出し、使われていなかった中古コンテナ、およそ2000個を集め、再利用できないか検討を進めています。日本でもコンテナを確保しにくい状態になり、日用品の輸出に遅れが出始めているという声が聞こえてくるようになっています。

モノも値上がりする?

今後コンテナ不足はどうなるのでしょうか?

世界の海運を調査している日本海事センターの後藤洋政研究員は、「問題が解決するのは早くても3月以降と予想していて、場合によっては長期化する可能性もある」と指摘します。

そして、「物流コストが上がり製品に転嫁されると消費者が購入するさまざまなモノの値段が上がることも考えられる」としています。輸送量の急激な増減と、消費の変化、そして港の人手不足。新型コロナウイルスがきっかけになって起きた海上輸送をめぐる異変は、長引けば、家計への影響も運んできてしまいかねない状態になっているのです。
アジア総局記者
影 圭太
2005年入局
経済部で金融や財政の取材を担当し
去年夏からアジア総局
ロサンゼルス支局記者
菅谷 史緒
2002年入局
岐阜放送局、ニューデリー支局、イスラマバード支局、経済部などを経て現所属