「トイレットペーパーの在庫あります!」投稿の製紙会社が大賞

SNSなどの情報が社会に与える影響が強まる中、優れたデジタルコミュニケーションを行った企業を表彰するコンテストが開かれ、去年トイレットペーパーの買い占め騒動の際にツイッターで在庫があると発信し多くの人に安心感を与えたとして、静岡県の製紙会社が大賞に選ばれました。

「ジャパン・デジタル・コミュニケーション・アワード」と名付けられたこのコンテストは、ネットの炎上対策などを手がけるIT企業「シエンプレ」が初めて開いたものです。去年SNSなどデジタルを活用して優れたコミュニケーションを行った企業を、およそ5000人を対象にしたウェブアンケートで尋ねて、最終的に研究者や著名なブロガーなど12人の審査員によって選びました。

その結果、大賞には去年3月にトイレットペーパーの買い占め騒動が起きた際に、ツイッターで、「トイレットペーパーの在庫あります!」と写真付きの投稿を行って拡散され多くの人に安心感を与えたとして、静岡県の製紙企業「丸富製紙」が選ばれました。

また、外出の自粛が呼びかけられた去年4月、ツイッターで「#おかしつなぎ」キャンペーンを行い企業の枠を超えて数多くの菓子メーカーが参加しにぎわいを作り出したとして、菓子メーカーの「チロルチョコ」が「ボーダーレス賞」に、また日頃からツイッターで消費者と信頼関係を築くことでマスクの生産を始めるという情報を嫌みなく伝えられたなどとして、電機メーカーの「シャープ」が「エンゲージメント賞」にそれぞれ選ばれました。

製紙会社「発信していく際に客観的な事実に基づく情報を」

大賞を受賞した丸富製紙は、トイレットペーパーが不足しているとの情報から買い占め騒動が起きていた去年3月「こんにちは!丸富製紙です。各地でトイレットペーパーが不足するなど、一部報道されておりますが、当社倉庫には在庫が潤沢にございますので、ご安心ください!今後も通常通り、生産・出荷を行っていく予定です」とのコメントを画像とともに投稿しました。

ツイッターに投稿したきっかけは偶然だったといいます。

新聞社からの依頼を受けて倉庫に在庫のトイレットペーパーが積みあがった写真を撮影したところ印象的に撮れたため、若者向けに発信を強化していた「インスタグラム」に投稿し、ついでにツイッターにも投稿したということです。

投稿した丸富製紙の加藤貴美さんは「画像が分かりやすかったため、文章はなるべくシンプルに情報が伝わるようにして、焦りや不安を感じる人に、まずは落ち着いて安心してくださいという、メーカーとしてのストレートな思いを伝えられればと思った」と振り返りました。

投稿はまたたくまに拡散し、翌朝までにリツイートは10万余りに上り、アカウントのフォロワー数もそれまで14人だったのが、一晩で1万を超えたということです。

加藤さんは「大賞の受賞に正直驚いている。デジタルの強さを強く感じたが、発信していく際に客観的な事実に基づく情報を伝えることと、こちらの伝えたい思いを加えることが大切だと思う」と話していました。

審査員を務めた国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授は「トイレットペーパー買い占めについては、メディアが『デマで品薄に』という報道で空の棚を報道したことで、不安に駆られた消費者が逆に買い占めに行ってしまうという現象が起きました。その真逆を行く『安心させる』コミュニケーションを迅速に行った点を評価しました」とコメントしています。

また、WEBライターの中川淳一郎さんは「ネットのバカげたデマをぶっ壊すのは日本全体にとっても良いところ。そこを率先してやったのは張本勲氏ではないが『あっぱれ!』だ」とコメントしています。