帰国できないベトナム人の技能実習生など旧正月「テト」祝う

アジア各地で12日、旧正月を迎えました。埼玉県の寺では、新型コロナウイルスの影響で帰国できないベトナム人の技能実習生などが新年のあいさつを交わしたり、母国の家族に連絡したりしました。

埼玉県本庄市の「大恩寺」は、新型コロナの影響で仕事を失うなどしたベトナム人技能実習生を受け入れていて30人余りが身を寄せています。

旧暦の1月1日の12日は、ベトナムで「テト」と呼ばれる旧正月にあたることから、寺では新年の平穏を願う催しが行われ、実習生たちは参拝に訪れた地元のベトナム系住民を出迎えてお祝いの品を渡したり「ブン」と呼ばれる麺料理をふるまったりしました。

実習生の中には実習期間がすぎても、ベトナム側の入国制限が厳しく帰国できない人もいて、スマートフォンのビデオ通話で母国の家族と新年のあいさつを交わしたりしていました。
4年前に来日して以来、家族と会っていないというフア・トゥアン・ホアさん(37)も60代の両親に「元気にしていますか」などと呼びかけ、体調を気にかけていました。
ホアさんは「『元気だから心配しないで』と伝えました。直接会えないのは寂しいですが、あいさつができてうれしいです」と話していました。

ベトナム人住職のティック・タム・チーさんは「仕事がなく帰国も難しい厳しい状況なので、皆さんの健康と、いち早い帰国の実現を祈りました。大変なときだからこそ日本人も外国人も支え合うことが大事だと思います」と話していました。

大使館のチャーター便で帰国の順番待つも めど立たず

フア・トゥアン・ホアさんは、かつてベトナムで英語の教師をしていましたが、家族の生活を支えるため4年前、技能実習生として来日し建設会社で働いていました。

しかし、職場の日本人に暴力を振るわれるなど、過酷な環境に耐えかねて実習先を離れ、その後は新型コロナウイルスの影響で職を転々とし、去年12月から寺に身を寄せています。

現在は、大使館のチャーター便で帰国する順番を待っていますが、ベトナムの厳しい入国制限もあり、便数は限られ帰国のめどは立っていないということです。

ホアさんたちが身を寄せている大恩寺は、地元や各地のベトナム人からの寄付などを受けて運営されていて、ホアさんは帰国できる日まで境内の掃除や参拝客の案内などをして、できるかぎり手伝いたいとしています。