緊急事態宣言から5週間 一部で感染減少のスピードが鈍る傾向

緊急事態宣言が出されてから12日で5週間、延長の決定から1週間余りになります。感染状況を示す指標の1つで、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」をNHKが簡易な手法で計算したところ、緊急事態宣言が延長された10都府県ではいずれも収束の方向に向かっていますが、一部で感染が減少するスピードが鈍る傾向が見られます。専門家は「今後、気持ちの緩みによって、再び感染が拡大に転じないか十分注意する必要がある」と指摘しています。

NHKは、疫学の専門家で国立感染症研究所の鈴木基 感染症疫学センター長の監修を受け、緊急事態宣言が延長された10都府県について、11日までのデータに基づいて、簡易な手法で実効再生産数を計算しました。

実効再生産数は、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示し、「1」を上回ると感染が拡大に向かう一方、「1」を下回ると収束に向かうとされています。

より正確に出すには発症日を推定して計算するなど、さらに多くの条件を考慮する必要がありますが、時間がかかるため、あくまで目安の数値として確認された日ごとの感染者の数をもとに簡易な手法で計算しています。

このため、今後、公的な機関などが発表する実効再生産数のデータと結果的に異なる場合があります。

東京都

東京都の実効再生産数は、緊急事態宣言が出された
▽先月7日時点で1.27、
▽先月14日時点で1.21と「1」を超えていましたが、
▽先月21日時点では0.96と「1」を下回りました。

その後、
▽先月28日時点で0.74、
▽今月4日時点で0.75、
▽今月11日時点では0.78と、収束の方向には向かっていますが、感染が減少するスピードがやや鈍る傾向が見られます。

神奈川県

神奈川県では
▽先月7日時点で1.11、
▽先月14日時点で1.45と緊急事態宣言が出された後も上がりましたが、
▽先月21日時点では0.97、
▽先月28時点では0.68、
▽今月4日時点で0.71、
▽今月11日時点でも0.71と「1」を下回っています。

埼玉県

埼玉県では
▽先月7日時点で1.10、
▽先月14日時点で1.25、
▽先月21日時点では1.05、
▽先月28時点で0.73、
▽今月4日時点で0.89、
▽今月11日時点で0.80と、「1」を下回っています。

千葉県

千葉県では
▽先月7日時点で1.22、
▽先月14日時点で1.42、
▽先月21日時点で1.04、
▽先月28日時点では0.82、
▽今月4日時点で0.78、
▽11日時点でも0.74と「1」を下回っています。

また、1都3県全体では
▽先月7日時点で1.20、
▽先月14日時点で1.29、
▽先月21日時点で0.98、
▽先月28日時点で0.73、
▽今月4日時点で0.77、
▽今月11日時点でも0.76と「1」を下回っています。

愛知県

愛知県は
▽先月7日時点で1.05、
▽先月14日時点で1.13でしたが、
▽先月21日時点で0.91と「1」を下回りました。

その後、
▽先月28日時点で0.85、
▽今月4日時点で0.66、
▽今月11日時点では0.81で「1」を下回っていますが、減少のスピードが鈍る傾向が見られます。

岐阜県

岐阜県は
▽先月7日時点で1.17、
▽先月14日時点で1.01、
▽先月21日時点で0.91、
▽先月28日時点で0.79、
▽今月4日時点で0.73、
▽今月11日時点で0.90と愛知県と同様に減少のスピードが鈍る傾向が見られます。

大阪府

大阪府は
▽先月7日時点で1.26、
▽先月14日時点で1.31でしたが、
▽先月21日時点で0.96、
▽先月28時点で0.82、
▽今月4日時点で0.72、
▽今月11日時点でも0.70と「1」を下回っています。

京都府

京都府は
▽先月7日時点で1.02、
▽先月14日時点で1.22、
▽先月21日時点で0.99、
▽先月28日時点で0.90、
▽今月4日時点で0.66、
▽今月11日時点でも0.55と「1」を下回っています。

兵庫県

兵庫県は
▽先月7日時点で0.97で、
▽先月14日時点で1.33、
▽先月21日時点で0.98、
▽先月28日時点で0.84、
▽今月4日時点で0.70、
▽今月11日時点でも0.68と「1」を下回っています。

関西の2府1県では
▽先月7日時点で1.12、
▽先月14日時点で1.30、
▽先月21日時点で0.97と「1」を下回り、
▽先月28日時点で0.84、
▽今月4日時点で0.70、
▽今月11日時点でも0.67となっています。

福岡県

福岡県は
▽先月7日時点で1.18、
▽先月14日時点で1.28、
▽先月21時点で1.02、
▽先月28日時点では0.75、
▽今月4日時点で0.70、
▽今月11日時点で0.82と「1」を下回っていますが、減少のスピードが鈍る傾向が見られます。

全国

また、全国では
▽先月7日時点で1.17、
▽先月14日時点で1.27と「1」を上回っていましたが、
▽先月21日時点では0.96、
▽先月28日時点で0.77、
▽今月4日時点で0.75、
▽今月11日時点でも0.75と「1」を下回っています。

専門家「気の緩みで感染拡大に転じないか注意が必要」

日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博 教授は「感染者数は少しずつだが確実に減りつつあり、収束の傾向を維持できているのはよいことだ。一方で、医療現場のひっ迫状況の改善が十分みられないため、今後もしばらくは感染が広がりやすい飲食の場への参加を控えるなど引き続き一人一人が対策に努める必要がある。宣言が延長して対策が求められる期間がさらに延びると、緊張感が保てずに気持ちに緩みが生じやすくなる。これから2週間程度の期間が宣言が解除できるかどうかを判断する上で重要になると考えられ、再び感染が拡大に転じないか、十分注意する必要がある」と話しています。