東京都 コロナ感染「減少傾向維持なら改善期待も入院減らず」

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、専門家は、新規陽性者数の減少傾向を維持できれば医療提供体制などを大きく改善させることが期待できるものの、まだ入院患者が大きく減少しておらず医療提供体制のひっ迫は長期化しているとして、高齢者の感染などを減らすことが重要だと指摘しました。

10日の会議で、専門家は都内の感染状況と医療提供体制をいずれも最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者数の7日間平均は、1週間前・2月3日時点の684人から9日時点は524人と減少し、およそ1か月前のピークから減少し続けているものの依然として高い値だと説明しました。

また、病院や高齢者施設でのクラスターや同居する人からの感染などで高齢者の感染拡大が続いていて、引き続き厳重な警戒が必要だと指摘しました。

新規陽性者数の前の週からの増加比は73%で、これを4週間維持できれば、7日間平均は149人になり、50%まで減少させて4週間維持できれば、7日間平均は33人になると説明し、医療提供体制や保健所の体制を大きく改善させることが期待できるという認識を示しました。

一方、医療提供体制については、1週間前・2月3日時点で2876人だった入院患者が9日時点は2606人で、大きく減少することなく非常に高い水準で推移していると指摘しました。

そのうえで「医療提供体制のひっ迫は長期化している。重症化リスクの高い高齢者の感染を減らし、重症患者を減少させることが最も重要だ」と呼びかけました。

専門家「変異ウイルス拡大可能性も視野に解析」

モニタリング会議の中で、都内では変異したウイルスでの感染がこれまでに12人確認されていることが報告されました。

会議に出席した専門家の1人で、都の感染症対策の拠点「東京iCDC」の「専門家ボード」で座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「都の健康安全健康センターで遺伝子解析のスクリーニングを行っているが面的に広がっているということではないと思う」と述べました。

そのうえで「ただ、関東で変異ウイルスがかなり広がっている状況があるので、今後、都内で広がっていく可能性も視野に入れて、引き続きスクリーニングをしっかりと行っていく」と述べました。

小池知事「解除の話はもう少し先」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は「医療提供体制の状況がギリギリだと話があったが、医療従事者の負担につながることがないようにご協力をお願いしたい。一人ひとりの意識と行動の結果が2週間後に出る。平日も休日も外出を自粛し、特に休日は、春めいてきたので繁華街や観光地に出かけたい気持ちがあるかもしれないが、控えてもらいたい」と呼びかけました。

また、緊急事態宣言を解除する時期について記者団から問われたのに対し「解除の話はもう少し先にしてほしい。感染者数や出勤する人の数を減らすことを目標にしている最中だ」と述べ解除について言及する段階にはないという考えを示しました。

高齢者への感染 厳重警戒を

10日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

新たな感染の確認は、9日時点の7日間の平均が523.6人で、前の週から160人減少しました。

専門家は「新規陽性者数は減少し続けている傾向だ」と分析したうえで「2度目の緊急事態宣言が出されおよそ1か月が経過した。新規陽性者数の減少傾向は不要不急の外出自粛や飲食店の営業時間短縮など都民や事業者の努力の成果と考える」と評価しました。

ただ「依然として高い値で推移している」として「引き続き、都民や事業者の協力が期待される。高齢者層への感染が続いているため厳重な警戒が必要である」と指摘しました。

今週、感染が確認された人を年代別の割合でみると、
▽20代が最も多く19.2%、
▽30代が15.6%、
▽40代が13.5%、
▽50代が12.3%、
▽80代が9.1%、
▽70代が8.8%、
▽60代が8.2%、
▽10代が4.9%、
▽90代以上が4.6%、
▽10歳未満が3.7%でした。

それぞれの年代の割合は大きく変化しておらず、70代以上の割合も依然として20%を超えています。

また、65歳以上の高齢者は1015人と前の週より394人減りましたが、新規の陽性者に占める割合は26.8%と前の週からほぼ横ばいでした。

専門家は「高齢者層の感染拡大を防ぐためには家族や医療関係者、高齢者施設の職員などが感染しないことが最も重要だ。重症者リスクが高い人が集まる施設では従業員に対する積極的な検査の実施が必要だ」と指摘しました。

一方、感染経路がわかっている人のうち、家庭内での感染は44.9%で最も多くなりました。

年代別にみると70代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多い一方で、80代以上では病院や高齢者施設などの施設内での感染が81.7%を占めています。

このほか、感染経路がわかっている人のうち、施設内は40.0%で前の週からおよそ6ポイント上昇しました。

職場内は5.4%、会食は2.1%でした。

「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路が分からない人の7日間平均は9日時点で256.9人で、前の週よりおよそ75人減りましたが、専門家は「高い値で推移している」と指摘しました。

また、専門家は「今週末から旧正月が始まり、在留外国人のコミュニティーでも自国の伝統や風習等に基づいたお祭りなどで 密に集まり飲食などを行うことが予想され言語や生活習慣の違いに配慮した情報提供と支援が必要である」と述べました。

このほか、8日までの1週間で確認された新規陽性者のうち22.2%にあたる843人が無症状でした。

都は、都外に住む人がPCR検査のため検体を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて分析・評価していますが、今週はこうしたケースが93人いました。

重症患者の医療提供体制 危機的状況続く

検査の「陽性率」は、9日時点で5.2%とおよそ1週間前の6.2%から1ポイント低下しました。

専門家は「検査は減少し、それ以上に新規陽性者数が減少したため陽性率は5%台に低下した」と説明したものの「高い値が続いている」と指摘しました。

入院患者は、9日時点で2606人で、2月3日の時点より270人減りました。

60代以上が入院患者全体のおよそ7割を占めています。

専門家は「入院すべき患者が早期に入院できる状況に徐々に改善したため、新規陽性者数の減少にもかかわらず、入院患者数が横ばいの状態が続いていると考えられる」と述べました。

また、都の基準で集計した10日時点の重症患者は104人と、前回より21人減りました。

専門家は「依然として高い値が続いている。重症患者は新規陽性者の減少から遅れて、緩やかにしか減らない。重症患者のための医療提供体制の危機的な状況が続いている。ほかの傷病の重症患者の受け入れが困難になっており、多くの命が失われる状況が続いている」と説明し、強い危機感を示しました。

重症患者を年代別にみると、
▽40代が2人、
▽50代が11人、
▽60代が27人、
▽70代が41人、
▽80代が19人、
▽90代が4人でした。

性別では、男性85人、女性19人でした。

また、人工呼吸器や人工心肺装置=「ECMO」の治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者が、高い水準で推移していて重症患者の増加が危惧されるとしています。

そのうえで「70代以上の重症患者がおよそ6割を占めている。基礎疾患のある人、肥満や喫煙歴のある人は若くても重症化のリスクが高い。あらゆる世代が感染リスクの当事者であるという意識を持つよう普及啓発する必要がある」と呼びかけました。

8日までの1週間で都に報告された亡くなった人は141人と、前の1週間より43人増えました。

専門家は「急激に増加しつつある」と分析しています。

亡くなった人のうちおよそ9割を超える133人は70代以上でした。

猪口 東京都医師会副会長「医療は疲弊」

モニタリング会議に出席した東京都医師会の猪口正孝 副会長は「感染者数は明らかに減ってきているが、新規の入院患者があまり減っていない。だいたい2週間は入院するのでなかなか入院患者が減らない」と述べました。

そのうえで「去年の夏からひっ迫状態が続いていて、医療は疲弊しているので皆さんの協力をお願いしたい」と述べ、引き続き感染防止の対策に取り組むよう呼びかけました。

繁華街分析した専門家「解除報道があると夜間が増加のおそれ」

「モニタリング会議」で、都内の繁華街の人出について分析した専門家は、去年の年末から夜間の人出は大きく増加に転じていないものの他の県の緊急事態宣言の解除にともなって増加に転じ、再び感染が拡大するおそれがあると指摘しました。

東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、都内の繁華街の人出について分析した結果を10日の会議で報告しました。

この中で、去年の年末から夜間の人出は大きく増加に転じることなく一定に抑えられていると見られるものの、昼間の人出は緊急事態宣言が出されて以降、増加していて、特に昼食の時間帯は増加が顕著だと説明しました。

このため「引き続き昼夜を問わず外出を自粛するよう呼びかけ、昼食の時間帯の感染予防を徹底する必要がある」と指摘しました。

また、去年5月に東京都以外のほかの県で先行して緊急事態宣言が解除された時は、都内の夜間の人出が増加に転じたということです。

西田センター長は「今回も他の県の緊急事態宣言の解除の報道があると夜間の人出が増加に転じるおそれがある」と述べ、他の自治体の宣言解除に伴い夜間の人出が増えて再び感染が拡大するおそれがあると指摘し、さらなる人の流れの抑制と都民や事業者の協力が必要だという認識を示しました。